ローリングシャッター歪みを抑える撮り方は?

画像:wiki(https://ja.wikipedia.org/wiki/山手線)

フォトマスター検定の予想問題です。フォトマスター検定勉強法も掲載していますので、参考にして頂ければと思います。

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合格目指してさっそく問題です!

難易度:準1級レベル

問:走っている電車を真横から電子シャッターで撮影したところ、車体の縦方向の直線部分が斜めに写ってしまい車体や窓が平行四辺形のような形に写る「ローリングシャッター歪み」が発生してしまった。

このローリングシャッター歪みをなるべく目立たないように写すにはどうすれば良いか?最も効果的と思われる方法を次の中から選べ。

① シャッタースピードを上げて撮影する
② カメラを縦位置にして撮影する
③ 焦点距離の長いレンズを使い撮影距離をとって撮影する

正解はこのあとすぐ!

■正解は②( カメラを縦位置にして撮影する)


シャッタースピードを上げても効果はない

このローリングシャッター歪みはイメージセンサーからの電荷の読み出し速度の問題で発生するため、カメラのシャッタースピードを上げても、ローリングシャッター歪みは解消されません。

CCDイメージセンサーのような一括で読み出しを行うタイプのセンサーであれば、ローリングシャッター歪みが発生しませんでした。

また最近ではCMOSイメージセンサーでも信号の読み出し速度を高速化することでローリングシャッター歪みを低減したCMOSイメージセンサーを搭載した機種が増えてきました。

またシネマカメラやマルチパーパスカメラのような業務用のムービーカメラなどでは、CMOSイメージセンサーでありがながら一括で信号を読み出すことで歪みが発生しないグローバルシャッターのイメージセンサーを搭載した機種も発売されはじめました。

そのためいずれはスチールカメラでもグローバルシャッターのカメラが主流になってくるのではないかと考えられています。

話は戻って、選択肢①のシャッタースピードを上げても信号の読み出し速度が変わるわけではないため、ローリングシャッター歪みは解消されませんから①は不正解となります。

ローリングシャッター歪みと撮影距離は関係がない

③の「焦点距離の長いレンズを使って撮影距離をとって撮影する」というのも、ローリングシャッター歪みの低減には効果がありません。

撮影距離とローリングシャッター歪みは関係していないためです。

なぜローリングシャッター歪みが発生するのか?

正解は②の「カメラを縦位置にして撮影する」になるのですが、なぜ縦位置撮影にすると、ローリングシャッター歪みを低減し、電車の鉛直の部分が斜めに写ってしまうことを低減できるのか考えてみましょう。

まず前提として知っておいて欲しい点があるのですが、メカシャッター(※物理シャッターという意味での)で幕速を超えるシャッタースピードに設定された場合、シャッターの動く速度、いわゆる「幕速」が高速化されるわけではなく、シャッター幕をスリット状に隙間を開けて露光することで露光量を調整することで高速にシャッターを動かしたことと同様の効果を得ています。

要するに、シャッター幕の移動速度そのものは例えばシャッタースピードが1/8秒でも1/8000秒でも同じなのですが、先幕が下りてその後後幕が下りるまでのシャッターが全開になっている時間を長くすることで1/8秒のスローシャッターを実現し、逆に先幕が下り始めた後、それを追いかけるように後幕が走行し、シャッター幕の先幕と後幕をスリット状に細く開いた状態で露光することで高速シャッターを実現しています。

そのためスリット状で露光していると、スリットが画面上部にある露光の始まりとスリットが画面下部に来る露光終わりでは時間差が生まれるため、高速で移動している被写体だと、露光始まりと露光終わりで被写体が移動しているために、被写体が歪んで写るという現象が起こります。

これが「フォーカルプレーンシャッター歪み」と呼ばれるもので、速い速度で走っている電車を画面いっぱいになるような形で真横から撮影したりすると、車体が斜めに写ってしまうということがありました。

電子シャッターにおけるローリングシャッター歪みも理屈は同じで、イメージセンサーの信号読み出しは横方向にライン状に行っています。これはメカシャッターにおけるスリットと同じような状態になるわけです。

そのために電子シャッターでも露光の始まりと終わりで時間差が発生するためにメカシャッターにおけるフォーカルプレーンシャッター歪みのようなものが生じます。それが「ローリングシャッター歪み」というわけです。

しかしこの高速シャッター時の露光量の調整は、スリット幅を調整することで実現しているため、シャッターの走行速度やセンサーからの信号の読み出しそのものが高速化されるわけではないために、シャッタスピードを上げてもフォーカルプレーン歪みやローリングシャッター歪みは解消されないわけです。

縦位置撮影にすると鉛直が歪まない理由

ではなぜ②の縦位置で撮影すると、問題文にあるような横方向に走る電車のローリングシャッター歪みが軽減されるのかということになるのですが、縦位置撮影にすると、センサーも90°傾くため、通常横方向に行なっていた信号の読み出しが、撮影画面の見かけ上では縦方向の読み出しになるためです。

電車が平行四辺形に歪むのは、画面上の上下で露光タイミングがずれてしまうことが原因であったわけですから、横方向ではなく縦方向に信号を読み出せば、画面の上部と下部での露光のタイミングはほとんど変わらなくなり、鉛直が鉛直のまま、つまり電車の車体の縦の直線がズレることなく写せるというわけです。

では逆に車体の横方向、例えば車体の上や下がローリングシャッターで歪むのではないか?ということになるのですが、横方向に走っている電車は水平に走っているわけで、大きな上下動をしているわけではありません。

そのため信号読み出しが画面の右と左で時間差があったとしても、車体が斜めに傾いて写るということはありません。

そのため、正解は②「カメラを縦位置にして撮影する」となります。

実はこのテクニックはフィルムカメラ時代からあったもので、先ほど説明したメカシャッターにおけるフォーカルプレーンシャッター歪みを軽減するためにも、同様のテクニックが使われていました。

しかし横長である電車の場合、縦位置撮影なら歪まないといっても、「横位置で撮影したい」という場合の方が多いわけです。

そこで一つの方法として考えられたのが、現在主流の縦走りシャッターのカメラではなく、敢えて横走りシャッターのカメラ(ニコンF3やM型ライカなど)を使用して撮影するという方法でした。

横走りシャッターというのは、高速シャッター時のスリットが縦型のスリットになるので、縦走りシャッターを搭載したカメラで縦位置撮影した場合と同じスリットの形状が得られるため、

  • 縦走りシャッターの縦位置撮影→スリットが縦長になり横方向に走行する
  • 横走りシャッターの横位置撮影→スリットが縦長になり横方向に走行する

このように同様のシャッター走行が得られるために、横走りシャッターのカメラであれば、横長の画面のままでフォーカルプレーンシャッター歪みを抑えることが出来たわけです。

では縦走りシャッターのカメラで縦位置撮影をしたり、横走りシャッターのカメラで横位置撮影をすれば完全にフォーカルプレーンシャッター歪みが無くなるかというと、残念ながらそうではありません。

横方向の線は上下動していないために歪まないと言っても、横方向に走行するシャッター幕のスリット露光が画面の左と右で異なることには変わりありませんから、今度は画面の左右で露光タイミングがずれるために「電車が伸びたように写る」ということが起こるようになりました。

そのため窓などが本来よりも横長(幅広の窓)として写るとこうことがありました。

これは車体が平行四辺形になるような歪みと異なり、そもそもあまり目立たというか、気になりにくいのですが、この車体そのものが幅広に写ることもフォーカルプレーンシャッター歪みの一種で、電子シャッターでも同様のローリングシャッター歪みが発生します。

ローリングシャッター歪みをより低減する撮影方法

ではこの電車が伸びてしまうような、画面の左右で起こる露光タイミングのズレをどうやって低減するかということになるのですが、

  • 理論上の対応策
  • 実際の撮影方法

この2つに分けてご説明します。

理論上の対応策

例えばあなたが時速60kmで自動車を走らせているとします。そして他の全ての自動車も時速60kmで走っていたとしましょう。

自分と同じ方向に進む自動車は自分と同じ速度であるため止まって見えますが、対向車線の車はすれ違う形になるので、同じ時速60kmで走っているにも関わらず、相対的には時速120kmですれ違うわけですからとても速く見えますよね?

これらの見かけ上の速度は「相対速度」と呼ばれています。同じ速度で走っている車でも、自分と同じ方向に走っているのか、自分に向かってきているのかで、相対的な速度が変わるというわけです。

カメラのメカシャッターや電子シャッターによる露光も、被写体の移動方向とシャッター幕の移動方向が同じであるか、あるいは対向するか動きであるかによって相対速度が変わってくるわけです。

電車がが走っている方向と同じ方向にシャッター幕を走行させてしまうと、電車を追いかける形で露光していくため写し取るのに時間がかかってしまうわけです。

露光の時間は同じなのですが、「露光中に電車の像が撮像面上で動いている幅が長くなり」それが電車の車体が伸びて写る原因となるわけです。

ではどうすれば車体が伸びて写ってしまうのを抑えられるかというと、電車が走る方向と「対向する形」で、シャッター幕のスリットやイメージセンサーの信号読み出し方向(ラインではなくイメージセンサー全体の読み出し方向)が移動すれば、すれ違う自動車と同様に、撮像面上での被写体の像とシャッターの相対速度が上がるため、擬似的に幕速を上げたのと同じような効果が得られるわけです。

なので、どうにかして「電車の走行方向と対抗する形でシャッター幕を走らせれば良い」というわけです。

実際の撮影方法

シャッター幕や電子シャッターの読み出し方向が電車の走行方向と対向するように走らせれば良いわけですが、注意点が2つあります。

  1. 撮像面上では像は上下左右逆像になっている
  2. 電子シャッターの読み出し方向は上から下とは限らない

まずは1ですが、レンズから投影される像は上下左右が逆像になっています。一眼レフではそれをミラーとプリズムで像を正立正像に戻してファインダーで見ているため忘れてしまいがちですが、撮像面上では上下左右が逆像になっていて、撮影後に画像処理によって上下左右を反転させて正立正像の画像を記録しているわけです。

ミラーレスカメラでは、一眼レフのようにミラーとプリズムではなく、イメージセンサーで受けた上下左右逆像をEVF内の小型液晶パネル(あるいは有機ELパネル)で正立正像に表示してファインダーで見せているわけですが、やはりレンズからの像は撮像面上には上下左右逆像で投影されています。

つまり、「電車が左から右に向かって走っている状態」とは、「イメージセンサー上では電車は右から左に走って投影されている」ために、(シャッター幕や電子シャッターの読み出しが上から下に動くカメラでは)撮像素子に投影されている像とシャッター幕のスリットや電子シャッターの読み出し方向を対向する形で走らせるためには、縦位置にした状態でシャッターボタンが上に状態で構える必要があります。

つまり一見すると左から右に走っている電車をシャッター幕が追いかけているような形ですが、像面上では被写体像と対向する形でシャッター幕が走行するわけです。

逆に電車が右から左に走ってくる場合は、シャッターボタンが下になるようにするというわけです。

  • 被写体が左から右に移動している→シャッターボタンが上
  • 被写体が右から左に移動している→シャッターボタンが下

というわけです(シャッター幕の移動や読み出しが上から下の場合です)。

ちなみに横走りシャッターのカメラであれば、カメラを逆さにして撮影することでシャッター幕の走行方向を左右逆転させることが出来ます。

2つめの注意点として電子シャッターの読み出し方向についてですが、レンズ交換式カメラのようにメカシャッターと電子シャッターの両方が搭載されているカメラの場合、「電子先幕シャッター」のような電子シャッターとメカシャッターを併用する機能の関係から、センサーの読み出し方向はシャッター幕の走行方向と同じになっていますが、コンパクトデジタルカメラやスマートフォンのカメラのように、電子シャッターしか搭載されていないカメラの場合、信号の読み出し方向は上から下である必要はないため、機種によっては信号の読み出し方向が異なります。

しかし説明書にカメラ機能の信号の読み出し方向などは記載されていませんから、実際に撮影してみて、走行方向を確認する必要があります。そのため先ほどの例のように、走っている電車などを真横から撮影して、電子シャッターがどの方向に読み出しているのかを調べなければわかりません。

その上で、

  1. 被写体の移動方向と電子シャッターの読み出し方向が直交するようにカメラを構えて撮影することで、被写体が変形して写るのを抑制する
  2. 上下左右逆像で投影される撮像面上での被写体の動きと、シャッター幕や信号の読み出し方向が対向する動きになるように撮影することで被写体が伸びたように写るのを抑制する

この2点に気をつけて撮影していただければ、ローリングシャッター歪みを大幅に軽減することができるというわけです。1だけでもかなりの効果が得られます。

ローリングシャッター歪みは過剰に騒ぐようなものではない

ここまでフォーカルプレーンシャッター歪みやローリングシャッター歪みを軽減する撮影方法をご紹介してきたわけですが、動画はともかく、スチール撮影はローリングシャッター歪みの影響がほとんどない撮影ジャンルの方がずっと多いものです。

例えば人物撮影などでは、わざとローリングシャッター歪みを出そうという意図を持って撮影しない限り、日常的な人物の動きくらいではローリングシャッター歪みが目立つような形では発生することはありませんし、勿論風景写真などでは気にする必要はまずありません。

近年では「ローリングシャッター歪み」という言葉だけが先行してしまったために、過剰にローリングシャッター歪みの程度を気にしてしまったり、「ローリングシャッター歪みを出すことを目的とした作為的な作例」が世の中に氾濫してしまいました。

例えば、

  1. 真横に走る新幹線の車体を画面いっぱいに撮影する
  2. 回転している扇風機の羽を画面いっぱいに撮影する
  3. ゴルフのスイングの瞬間をアップで撮影する

こうした作例がそれにあたります。

しかし実際にそのような撮影をするでしょうか?

1.真横に走る新幹線の車体を画面いっぱいに撮影する

そもそも新幹線や電車を画面いっぱいに真横から撮影して、それが「優れた鉄道写真」になるでしょうか?ならないですよね。

また一般的に「良く撮れている」とか「美しいと感じる」ような鉄道写真でローリングシャッター歪みが顕著に表れているような作品はほとんど見かけることはないと思います。

真横から走っている車両の一部を画面いっぱいに撮影しても良い写真にはならないからそのような撮り方は普通しないからです。

2.回転している扇風機の羽を画面いっぱいに撮影する

商品撮影として扇風機を撮影するのであれば、羽が見える必要があるので、扇風機は動かさない状態で撮影します。

また扇風機を撮るのが趣味だったとしても、それは止まっている状態の雰囲気のある扇風機であったり、回っている状態を撮影するなら、シャッタースピードをある程度落として羽の形が見えないように写して「回転しているのが分かるように」撮るはずです。

わざわざ羽を回転させながら高速シャッターで、しかも電子シャッターを使ってローリングシャッター歪みを強調するように撮影する必要がありません。

  1. 羽が止まっている状態を撮影したい→扇風機を回さない
  2. 羽が回っている状態を撮影したい→羽がブレていないと動いていることが分からないので高速シャッターにはしない

というわけです。1の場合はそもそも羽は止まっていますし、2の場合は羽は形が分からないように写しますから、いずれの場合もローリングシャッター歪みは発生しません。

3.ゴルフのインパクトの瞬間のクラブをアップで撮影する

ゴルフのスイングのインパクトの瞬間を真横から狙うような場合は、先ほどご紹介したような方法で縦位置撮影にすれば電子シャッターでもクラブが不自然に反ることはようなことはありません。

カメラメーカーが「ローリングシャッター歪みの発生を低減」というような謳い文句でカメラを紹介している際にゴルフのショットのシーンを使っていることも多いのですが、そうした作例ではローリングシャッター歪みを出すために、横位置でアップ気味で撮影していますが、果たしてゴルフの撮影をするときにそのような写真を撮りたいと思うでしょうか?

ゴルフの写真の多くは、

  1. スイングの前にヘッドをゴルフボール近くの下の位置で狙いを定めている緊張感のあるシーン
  2. クラブを振り上げてヘッドが高い位置に来て、今まさに振り下ろす直前の静止した瞬間
  3. クラブを振り抜いて止まった状態で弾道を見ている体をひねった姿勢

などが画になるわけで、いずれもクラブは止まった状態であるためローリングシャッター歪みは発生しません。

クラブとボールが接触するようなインパクトの瞬間は写真としては意外と見栄えがしないため、あまり撮影されませんし、先ほどの1.2.3の撮影シーンですら真横から撮影するとは限りません。

カメラの性能としてローリングシャッター歪みは少ないに越したことはないのですが、

  1. 真横に走る新幹線の車体を画面いっぱいに撮影する
  2. 回転している扇風機の羽を画面いっぱいに撮影する
  3. ゴルフのインパクトの瞬間のクラブの動きを撮影する

こうした、「ローリングシャッター歪みを起こすことが目的化した作為的な作例」を気にしても意味がありません。

またイメージセンサーの読み出し速度の高速化やグローバルシャッターによって、ローリングシャッター歪みもいずれは「CCDスミア」のように昔のイメージセンサーに見られた現象として過去の話となっていくのでしょう。

Reported by 山﨑将方