カメラマンをインターネットで探すことも常識となった今、たくさんの出張カメラマン登録サイトやクラウドソーシングサービスが続々と登場しています。
カメラマンにとっては登録しているだけでもある程度の集客が見込めたり、依頼する側のクライアントユーザーにとってはたくさんのカメラマンの中から予算や目的に合ったカメラマンを探せたりと、一見便利に感じます。
しかし本当にお得なのでしょうか?カメラマンに直接依頼した場合との違いは?
今回はそんなカメラマン・クリエイターを外注する上でのマッチングサイトのメリット・デメリットを、カメラマン側と発注するユーザー側両方の目線からお伝えしたいと思います。
撮影で収入を得たい全ての方はもちろん、カメラマンに撮影を依頼したい方も必見です!
■目次
- 出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングとは?
- 大きく分けて2種類ある
- 当然ながらボランティアではなく、営利目的である
- 手数料が掛からない仲介サイトはないのか?
- 手数料がいくらかを見破る方法
- 手数料を避ける方法はあるのか?
- カメラマン(受注側)から見た出張カメラマン登録サイトのメリット
- 駆け出しカメラマンでも案件が得やすい
- 料金の踏み倒し・未回収を防ぎやすい
- 自分の営業力が及ばない範囲にも訴求力がある
- クライアント(発注側)から見た出張カメラマン登録サイトのメリット
- カメラマンの名前を知らなくても、大勢の中から好みに合うカメラマンを見つけやすい
- 予算に合わせたカメラマンを見つけやすい
- 支払いのトラブルを防ぎやすい
- クライアント(発注側)から見た出張カメラマン登録サイトのデメリット
- とにかく手数料が高すぎる
- システムが使いづらく、サイトごとに覚える必要がある
- 急な案件ですぐにカメラマンに連絡したくても、メールアドレスや電話番号の交換ができない(禁止されている)
- カメラマン(受注側)から見た出張カメラマン登録サイトのデメリット
- 単価がかなり安い
- 作例を自由に使用できないケースがある
- 手数料が高いため、クライアントに敬遠される
- 利用方法やルールが難解で、クライアントに敬遠される
- 料金でソートできる場合、不得意なジャンルの撮影も依頼されやすい
- 出張カメラマン登録サイトのお勧めの使い方
- 基本的には出張カメラマン登録サイトからの発注を避ける
- 使用する場合でも、手数料の低いサイトを選ぶ
- カメラマンは、ユーザーが多いサイトを選ぶ
- 登録は最初の数年だけにする
■出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングとは?
大きく分けて2種類ある
登録されているカメラマンに仕事を依頼できるマッチングサイト等と呼ばれるものは、大きく分けて2種類あります。
一つは自前のスタジオではなく発注者の都合に合わせて、例えば七五三やお宮参りなら神社仏閣、自然な家族写真なら公園という「指定した場所に来てもらう」出張カメラマンというコンセプトを大きく打ち出しているサイトです。こちらで扱っているのはカメラマンが中心であり、イラストレーターやデザイナーなど他のクリエイティブ職が登録されているとしても、別々に検索できるなど大きく分かれています。
もう一つはクラウドソーシングと呼ばれているサイトで、カメラマンだけでなく、イラストレーターやデザイナーはもちろん、ライターやプログラマー、そして在宅ワークを目的とする主婦の方の登録も多いサイトです。
このタイプのサイトでは発注側が登録されているカメラマン一覧を見て良さそうな人に相談するということもできますが、見積もり募集と言って例えば「ウェディングの二次会写真を撮影してくれるカメラマン募集」などと自分の求めるカメラマン・条件の見積もりを募集することができます。
そうすると指定した期限内にそれを見たカメラマンの何人かが「こういう条件・見積もりでいかがでしょう?」という提案をしてきますので、その中から自分が一番良いと思った人に頼むことができます。
このシステムでは必然的に写真のクオリティが良くても高すぎるカメラマンは敬遠される傾向にあるので、カメラマンは仕事を得たいがために価格競争になりやすく、発注する側にとってはできるだけ予算を抑えた依頼が可能になるというメリットがあります。
ただその反面、一定のスキルや実績のあるカメラマンは価格競争に巻き込まれることを嫌がる傾向にありますので、「雑誌や広告の実績がある、有名なカメラマンに依頼したい」というケースには不向きになります。
もちろん価格を安くしていても上手なカメラマンはいるかと思いますが、どちらかといえば「単価がある程度安くなってもいいので、とりあえず仕事が欲しい」カメラマンが多い場所という認識をされても良いかと思います。
カメラマンとして撮影だけで収入を得ている人ばかりでなく、副業的に活動されている方(セミプロ)も多くなりますので、発注する際はそのカメラマンが普段どんな写真を撮っているか、ポートフォリオ・作例を確認し、納得できる質であれば依頼するというステップを踏むと安心でしょう。
あまりにも相場を無視した安すぎる価格で募集してしまうとカメラマンもそれなりの提案しか来なくなりますので、いくら安く頼める傾向にあると言ってもある程度は相場を考慮して募集することも大切です。
当然ながらボランティアではなく、営利目的である
それでは、そんなに便利な出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングですが、何故・どうやって運営されているのでしょうか。
これらはボランティアによって無償で運営されているのではなく、営利目的のビジネスとして運営されています。
多少の広告収入などはあるかもしれませんが、基本的に主な収入源は、カメラマン(受注側)とクライアント(発注側)の案件が成立したときに発生する「手数料」です。単に見積もりを依頼したり、相談するだけでは費用は発生しない場合が多いです。案件が成立したときに、カメラマンの撮影料から20~40%程度の手数料が発生するケースが殆どです。(例えば某仲介サイトでは、カメラマンの撮影料が10,000円のとき、手数料を含めると合計14,285円になります)
大手のクラウドソーシングではきちんとその旨が明記されていたり、見積もりに撮影料とシステム手数料が別に表示されるなどのわかりやすい工夫がされているのですが、一部の出張カメラマン登録サイトでは依頼する側のページには「手数料が発生する」とは明記せず、カメラマンの撮影料に含めてしまい手数料が実際にどの程度掛かっているのかわかりづらくするということが行われています。
また、公正に取引したいと思ってカメラマンが独自に見積もりに「撮影料いくら、システム手数料いくら」ということを明記すると、逆に「お客様の混乱の元になるから止めるように」という謎の忠告を受けたり、アカウント停止の警告を受けることもままあります。これらは一部のサイトのみの悪習とはいえ、このように消費者の知る権利を隠したりわかりづらくするのは、業界の由々しき問題ではないでしょうか。
手数料が掛からない仲介サイトはないのか?
全くの無償で、中間マージンを一切取らず、カメラマンを仲介するサイトというのは私の知る限りありません。例えば「撮影料は一律25,704円」と書いてある場合、そのサイトの手数料が実は35%だとすると、そのうち「8,997円」は手数料であり、残りの「16,707円」がカメラマンに渡っている金額だということです。
手数料がいくらかを見破る方法
発注側のクライアントユーザーのページに明記されていない手数料を見破る方法は、「受注側のカメラマン側のページの、カメラマン募集ページやヘルプ、Q&Aをよく読む」ことです。さすがに報酬を受け取るカメラマンにまで手数料を伏せるのは難しいため、きっとどこかに書いてあると思います。
手数料を避ける方法はあるのか?
仲介サイトのシステムを利用することでメリットもありますが、「料金のうち20~40%が実は手数料だなんて高すぎる!」とお思いの方もいらっしゃるかと思います。
そんなときでも、一般的に仲介サイトで直接取引を持ち掛けるのは利用規約で禁止されているため、下手をするとカメラマン・クライアントユーザー共にアカウント停止の危険があるのでお勧めできません。
そうではない方法で手数料を避ける方法としては、カメラマンの名前をGoogleなどで検索してみて、カメラマン個人のサイトや、TwitterやインスタグラムなどのSNSを探し、直接の連絡ができる手段を見つけてください。
その後、メールアドレスやダイレクトメッセージで「仲介サイトの〇〇を見ましたが、手数料が高いため直接相談させてください」との旨を送れば、大抵のカメラマンはリスクが少ないため応じてくれると思います。(もちろんカメラマン個人の考え方もあるので100%ではありません)
こんなことを書いてしまうと「カメラマンの名前を検索して外部サイトから依頼するのは禁ずる!」等と新たな注意事項が書かれそうですが、さすがにそこまで個人の自由を制限するのは法的にも難しいかと思いますので、クラウドソーシングなどで目当てのカメラマンが見つかって、かつそのサービスのシステムを利用するメリットが薄い場合などは、「カメラマンを検索して直接相談する」ことを試してみてください。
高すぎる手数料にうんざりしているのはカメラマンも同じなので、きっと一番安い(ホテル業界でいうベストレート)で応じてくれる人が多いかと思います。
※ただ、当然ながら仲介サイト・クラウドソーシング外での取引はそのサービスのサポートの対象外となりますので、特に金銭などのトラブルには十分にご注意ください。当サイトでは一切の責任を負いません。
■カメラマン(受注側)から見た出張カメラマン登録サイトのメリット
駆け出しカメラマンでも案件が得やすい
フリーランスになったばかりの駆け出しカメラマンの場合、スタジオ出身であればスタジオ時代の人脈や先輩の紹介、師匠について修業した後であれば師匠の厚意で仕事に与れる場合もありますが、それだけでは生きていくのに厳しかったり、また会社員などから脱サラしていきなりフリーカメラマンの道を歩む人もいます。
そんな駆け出しのカメラマンに優しいのが、こうした出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングを通したネット上の案件です。後で詳しく説明する通り単価はかなり低めなものの、あまり実績がなかったりポートフォリオが充実していなくて持ち込みに回れないような状況でも、なんとか仕事にありつける可能性があります。
料金の踏み倒し・未回収を防ぎやすい
まだ仕事に慣れていないカメラマンにとって、いやそれなりに経験を重ねたカメラマンにとっても最も恐ろしいのが料金の未払いです。弱小の法人との取引で多いのが、何度も催促しなければ払ってもらえなかったり、最悪の場合音信不通になり完全に踏み倒されるケースです。
仲介サイト・クラウドソーシングでは、相手が見積もりを承認し料金を振り込んだ後に仕事が始まるため、このような最悪の事態を防ぎやすくなっています。もしクライアントとトラブルがあっても、仲介サイト・クラウドソーシングのサポートセンターが仲介に入ってくれることもあります。
それでも100%トラブルが防げるわけではないものの、直接取引で足元を見られてしまい、なんだかんだと支払いがされないままデータを納品したとたんに逃げられてしまった…と目も当てられない状況を回避したいカメラマンにとって、特に初めてのクライアントとの取引にはお勧めです。
2回目以降の取引では自然と直接取引の流れになることも多いと思いますが、基本的には撮影料の未払いを防ぐため、全てのクライアントに「納品前のお支払い」をお願いするのがお勧めです。転ばぬ先の杖としてぜひ心に留めておいてください。(例に漏れず、私も痛い目にあっています…)
自分の営業力が及ばない範囲にも訴求力がある
「駆け出しカメラマンでも案件が得やすい」に重なる部分もありますが、自分の個人サイト・ポートフォリオサイトやSNSを使用していてもアクセス数が低かったり、いまいち仕事に繋がらない場合でも、出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングは基本的に「仕事を発注したい」クライアントが積極的に見ているので、登録しているだけでも思わぬ案件に繋がることがあります。
ただそのためには効果的な自己紹介文や顔写真、いくつかの作例があったほうが良いのは言うまでもありません。また、せっかく仕事の依頼が来た!と思っても、自分の料金のボーダーラインよりかなり低めだったりすることはザラですので、赤字にならないためには思い切ってお断りする勇気も必要です。
レタッチなど過度な要求がないか、その他の条件が厳しすぎないかもきちんとチェックして、信頼できそうなクライアントの仕事のみ受けるようにしましょう。アルバイトに仕事を振るような妙に上から目線のクライアントだけは避けたほうが無難です。
■クライアント(発注側)から見た出張カメラマン登録サイトのメリット
カメラマンの名前を知らなくても、大勢の中から好みに合うカメラマンを見つけやすい
普通なら「カメラマンに仕事を依頼したい」と思ったとき、知り合いのカメラマンがいれば知り合いに頼んだり、いなければ知っている人から紹介してもらう等という形が考えられます。そのような身近なところから探すほうが安心で、料金なども気軽に尋ねやすいという点も挙げられるでしょう。
ただ、そういったツテが全くないという状態も考えられます。そんなとき、ネットや本でカメラマンの名前を検索し情報を得て、その中から選ぶという方法もありますが、ある程度の下調べなどの作業が必要で、面倒なのも事実です。
その点、出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングから「カメラマン一覧」を表示させれば、多くのカメラマンの名前と基本的なプロフィール、ポートフォリオ(作例)まで手軽に見ることができ、その中から簡単にカメラマンを選択することができます。
これはカメラマンを探す上で、特に常日頃からあまりカメラマンとの付き合いがない業種の方や、七五三やお宮参りなど家族写真を依頼したい個人の方にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
予算に合わせたカメラマンを見つけやすい
広告代理店を挟むような案件ではない比較的小規模な案件では、予算が少ない場合が多いものです。また個人の方の家族写真など、初めて依頼するのでどの程度が相場かわからないといった場合もままあるでしょう。
出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングでは、ベテランのカメラマンが大勢登録しているというよりは、まだ仕事が少ない駆け出しのカメラマンや、普段は会社勤めなどをしていて週末だけ撮影を請け負っているというセミプロカメラマンの登録も多いため、比較的安価に撮影を依頼できる傾向にあります。
しかも仲介サイトによっては完全な一律料金で安心・お手頃感があったり、カメラマンによって料金が違っても時間当たりの料金の目安が掲載されている場合が多いので、予算を大きく外れることなくカメラマンに相談することができます。
(注釈:一律料金は多くの場合、カメラマンに交通費の支給をしないことで成り立っているので、受注側のカメラマンにとっては辛いものがあり、カメラマンの居住地から遠方の撮影の場合はお断りされる場合があります。)
まず料金の面で「プロカメラマンに撮影を依頼すると高額なのではないか」と不安が大きい方にとっては、名前だけしか知らないカメラマンに思い切ってメールや電話で問い合わせをするより、仲介サイトを利用するほうがずっと敷居が低いと言えるでしょう。
支払いのトラブルを防ぎやすい
初めてでいきなりフリーランスのカメラマンに直接依頼するのは、「この人は本当に大丈夫なんだろうか?」と勇気のいるものかもしれません。
しかし仲介サイト・クラウドソーシングを利用すれば、一応のサポートがあるため、「料金を支払ったのに納品されない」というような事態は少なくなります。(完全に防げるわけではありませんが、万が一そのような状態になったとしても、カメラマンの責任なのですから返金が保証されるはずです)
そうした支払いトラブルが抑制されるという点では、仲介サイト・クラウドソーシングを利用する大きなメリットと言えると思います。仲介サイトは良いことばかりでなく、この先で説明する「手数料が高い」というデメリットもありますが、安心料だと思えば構わないというケースもあるでしょう。
■クライアント(発注側)から見た出張カメラマン登録サイトのデメリット
とにかく手数料が高すぎる
最初に触れましたが、仲介サイトは慈善事業ではなく基本的にはビジネスなので、手数料が発生しますが、それがとても高いのです。撮影料の20~40%程度とサービスによって異なりますが、それが明白ではなくわかりづらくされているのも困りもの。
「他のサイトからカメラマンを探して依頼するするよりも安い」とか「安心・安全」との煽り文句がありますが、同じカメラマンに依頼するなら料金の安さは手数料の掛からない直接取引のほうが優位、安心・安全もさほど変わらないのではないでしょうか。
むしろ「撮影前にクレジットカードでの前払い」しか支払い方法がなかったりするよりは、カメラマンによっては支払いが撮影時や納品前で良かったり、写真プリントでのお渡しサービスがある場合はそのお届けの際の代引きでも良いというカメラマンもいますので、そちらのほうが「安心・安全」な気がします。
システムが使いづらく、サイトごとに覚える必要がある
出張カメラマン登録サイトはデザインを重視しているせいか、写真はぱっと見綺麗に見えるものの、操作の方法がわかりにくかったり、次はどの操作をすればいいのか、何が禁止事項なのか、ヘルプを読んでルールを確認しながらでないと使えないというケースもあり、こちらも困った点です。
カメラマンの私もヘアメイクさんや撮影アシスタント等を依頼する際にクラウドソーシングサイトで「発注する側」になるのでわかるのですが、慣れるまでは必要な操作が多くて少し疲れます。
せっかく操作を覚えても、残念ながら(当たり前ですが)A社とB社、C社とD社の操作とルールは違うわけで…どうしても自分が使いやすくて比較的手数料の低いサイトを選ぶことになります。
それでも「フリーのヘアメイクさん」や「予算が少なくても受けてくれるアシスタントさん」がGoogleなどの検索ではなかなか見つけられないので使用することがあるのですが、フリーのカメラマン・フォトグラファーはGoogleでもSNSでもたくさん見つけられますので、自分がカメラマンを依頼する立場でしたら仲介サイトやクラウドソーシングはあまり使わない気がします。手数料を払う分の予算があったら、仕事をしてもらう相手に上乗せして渡したほうが気持ちいいですからね。
急な案件ですぐにカメラマンに連絡したくても、メールアドレスや電話番号の交換ができない(禁止されている)
仲介サイト・クラウドソーシングは手数料で成り立っているため、直接取引を禁止するための措置なのですが、そのことを知らないユーザーにとっては、早く連絡が取りたいだけなのに「なぜメールアドレスや電話番号が伏字で表示されてしまうのか?」等、システム的な禁止事項に苛立つこともあるでしょう。
一般的なクラウドソーシングでは、見積もりを承認後、その料金を振り込んだ後で(直接取引の心配がなくなってから)連絡先の交換が可能なケースが殆どですが、中には出張カメラマン登録サイトのC社のように「システムのメッセージ機能以外の一切のやり取りを禁止する」というところもあります。
しかし普通に考えて「神社でお宮参りの依頼をしていたけど、当日の朝に急に雨が!」というときなど、いざというときはカメラマン本人に電話ですぐに連絡したいと思うのが普通です。また当日のその時刻になって、うまく待ち合わせできずとりあえず電話で連絡したいというのもままあることです。そのようなケースのやり取りまで「禁止」されていては、不便と感じても致し方がありません。
手数料が含まれた料金を払って依頼をしているのですから、利用規約を読んで「禁止事項が多くてちょっと…」と感じるような仲介サイトは、避けたほうが賢明かもしれません。
■カメラマン(受注側)から見た出張カメラマン登録サイトのデメリット
単価がかなり安い
一つの案件に対してネット上で広く見積もりの提案を募集するタイプのクラウドソーシングの場合、どうしても価格競争になりがちであり、撮影案件一つ当たりの単価はかなり安めです。
正直に申し上げて、一般的な雑誌・広告撮影の仕事とは比べ物にならないくらいの差があるケースが殆どです。
発注する側のクライアントも法人より個人の場合が多く、予算も少ない方が多く利用するのが出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングだと覚悟しておいたほうが良いでしょう。
中には「物撮り1カット50円、レタッチ込み」など平気で提示してくるクライアントさんもあります…これはもはやプロに向けた仕事依頼というよりは、アマチュア向けの内職的な在宅ワークと言えますので、プロを目指している方はそういった案件には関わらないほうが良いでしょう。そもそも時給に換算すれば最低賃金を下回ってしまうような仕事は、いかがなものかと思うのでお勧めできません。
しかもその分クオリティが求められないのかというと、そのようなことも少なく…(例外的に素人さんがスマホで簡単に撮影した画像があえて欲しいという案件もあります)
自分の最低料金を決めるのは自分ですから、プロとして食べていくためにもどこかで一線を引き、あまりにも安い単価の案件は避け、納得できる単価の仕事を精一杯こなすのがお勧めです。
カメラマンは機材にはもちろん、自分のスキルアップのためにも時間やお金を投資していますので、その分と一日に無理なくできる仕事量を計算して、きちんと黒字になる営業を目指しましょう。
作例を自由に使用できないケースがある
出張カメラマン登録サイトを利用して得た案件だとしても、基本的には(著作権を譲渡していない限り)撮影した写真はカメラマン本人にあると言えます。しかし、出張カメラマン登録サイトの中にはB社のように、「当サイトの案件で撮影した写真は、例え被写体本人の許可があろうとも、他サイト等での公開を禁ずる」ような契約を結ばされるサイトもあります。
カメラマンが仕事で撮影した写真は、その後の仕事に繋げるためのカメラマンにとっての財産、いわゆるポートフォリオです。にも関わらず、自社が手数料を得るために他での案件を獲得させたくないという本音もあってか、カメラマンの自由を制限する出張カメラマン登録サイトがあるのは残念なことです。
カメラマンは良い写真が撮れた場合、クライアント・被写体本人に「この作品を作例として公開しても良いでしょうか?」と確認したうえで許可を貰えれば、どんどん公開していくことがその後の案件獲得に繋がります。
なのにもしこのようなカメラマンの自由を制限する仲介サイトを主な案件獲得先、収入源としてしまえば、自分の個人サイト・SNSはもちろん他に登録している仲介サイトやクラウドソーシングでも撮影した実績を公開することができず、カメラマンとしての仕事受注先を増やしてステップアップしていくことが困難になります。
極端な言い方をすれば、そのサイトで仕事を続けていく限り、カメラマンとしてさらなる飛躍にブレーキが掛かってしまうと言えるでしょう。
このような条件はサイトに明記されておらず登録したいと思って申し込んだ後に「後出し」されることも多いですが、もしそのような契約を迫られてしまった場合やマニュアルの隅にそのような表記がある場合、カメラマンとして多岐に渡る活動をしたいと願うなら、残念ながらその仲介サイトへの登録は控えたほうが良いかと思います。
自分の将来性のためにも契約事項はよく確認し、信頼・納得できない仲介サイトの登録は控えたほうが無難です。
手数料が高いため、クライアントに敬遠される
この点については、仲介サイトでは発注側のユーザーに対して手数料がどれだけ掛かっているのかわかりにくい手数料を含めた「一律料金」しか公開していなかったり、A社ではクライアントに送る見積もりにさえ手数料を明記するのが禁止されているというような仕組みがあるため、家族写真の撮影をしてもらいたいというような一般のユーザーの多くは手数料の存在に気付かず、「手数料で敬遠される」ということは少ないかもしれません。
しかし多少発注に慣れている法人であったり、たびたびクラウドソーシング等を利用して発注している自営業の方などは当然知っているので、「やはり少し高いな」と思ったり、「カメラマンの連絡先さえわかれば、できれば直接取引で…」と願っています。
この問題の解消法としては、仲介サイトの登録名と普段活動するカメラマンネームを統一し、個人サイトやSNSには必ず連絡先(メールアドレス)を明記することで、「クラウドソーシングの〇〇を拝見させて頂き、ご連絡しました」というように直接連絡が来る確率が高くなります。
多くの仲介サイト・クラウドソーシングでは連絡先の交換が禁止されていたり、サイト上での案件が確定するまで交換できないなどの制限を設けており、仲介サイトを通して連絡が来たものを他へ誘導することが禁止されています。
仲介サイトも商売ですからそれは致し方ないものの、手数料の高さによって案件を逃すのは勿体ありませんので、ぜひとも自分のカメラマンネームを検索すれば直接の連絡先(メールアドレス)がわかるように明記しておきましょう。
利用方法やルールが難解で、クライアントに敬遠される
多くの仲介サイト・クラウドソーシングではトラブルを未然に防ぐために長い利用規約があったり、撮影して納品した写真の使用にもあれこれと制限があったり、サイトのインターフェイスが洗練されておらずどこをどう操作すればカメラマンにメッセージが送れるか、次の操作に進めるか等が難しく、初めて使用するユーザーにとっては戸惑うことが多いようです。
A社の案件完了後のアンケートを見ても全般的に「カメラマンは良かったが、サイトが使いづらかった」という意見が多いように思います。
せっかく撮影料に30%も掛かる手数料を払って頂いているにも関わらず、「システムが使いづらい」とクライアントユーザーに不便な思いをさせてしまうのは心苦しいものです。
直接取引なら案件によって必要事項のみをやり取りでき、迅速な対応が可能な分、サービスの幅が広がる部分も多くなります。
例えばC社では平日と休日に分かれた完全な一律料金であり、例え撮影小物のレンタルサービスをしたいと思ったり、有料の撮影地を選びたいと思っても、クライアントユーザーから追加料金を頂くことは一切禁止されているため、思うようなサービスを行うことが難しくなっています。
その点はやはり直接取引なら「こんなオプションもあります」と柔軟な提案ができ、よりクライアントの満足度に貢献できるのではないでしょうか。
料金でソートできる場合、不得意なジャンルの撮影も依頼されやすい
A社ではカメラマンの時間当たりの料金がわかりやすく表示され、料金の目安でもソートが可能なため、クライアントが予算に合わせてカメラマンを選びやすくなっています。が、その分品質や作品性重視ではなく、予算重視のクライアントが多くなる傾向にあります。
出張カメラマン登録サイトへの登録を始めたばかりのときはとにかく仕事が欲しくて料金の目安を低く設定しがちですが、そうすると例えば一切料理写真の作例を載せてないのに料理撮影の依頼が来たり、コスプレの撮影経験がないのにコスプレの撮影依頼が来たり、あげくカメラマンがその漫画作品のキャラクターについての話題をしないからといって、日程まで決まった撮影を一方的に中止されるケースもあります(恥ずかしながら私個人の実話です)。
意外な依頼は自分の可能性を高めるチャンスと捉えることもできますが、カメラマンは専門があるのが普通ですし、得意なジャンルもあれば当然苦手なジャンルもあります。
プロのカメラマンとしていい加減な仕事をしたくないという真面目な人ほど自分の手掛ける仕事の方向性を明確に打ち出して、そうでない仕事は申し訳なくともお断りするくらいのほうが、結果的にお互いのためになるかもしれません。
■出張カメラマン登録サイトのお勧めの使い方
基本的には仲介サイトからの発注を避ける
仲介サイト・クラウドソーシングはカメラマンを探すのには便利ですが、それ以外のメリットが薄かったり、手数料がネックになることもあるでしょう。ですので特別仲介サイトやクラウドソーシングのシステムに魅力を感じなかったり、特に集金面での不安がなければ、良さそうなカメラマンを見つけたとしてもそのシステムを利用してすぐに相談するのではなく、「そのカメラマンの名前でネット検索」した上で、直接連絡できるメールアドレスやSNSで相談するのが手数料も掛からずお得と言えると思います。
場合によっては、例えばお宮参りだとお祝い着のレンタル、七五三や成人式の前撮りでは和傘のレンタルといったオプションのサービスなど、仲介サイトでは別料金の徴収を禁止しているため提供できなかったものが、カメラマンの個人サイトや直接取引では受けられることもあります。
早急に発注を出すのではなく一歩立ち止まって何でも検索してみるのは、インターネット上のサービスを利用する上ではどんな場合もお勧めです。
使用する場合でも、手数料の低いサイトを選ぶ
手数料の掛からない直接取引には魅力を感じても、見つけたカメラマンの名前をネット検索しても個人サイトやSNSが出てこなかったり、直接取引は支払いの面で不安だからやはりマッチングサイトやクラウドソーシングを利用したいという場合もあるでしょう。
そんなときは、やはり手数料の低いサイトを選ぶのがお勧めです。手数料は「存在しないもの」のように見せかけたいのであまり公に明記されていないのですが、先述したように手数料がいくらか探す方法として、カメラマン(受注者)側に向けた説明ページやヘルプ、Q&Aを調べる方法が有効です。この方法だとカメラマンがどういった制約の下で仲介サイトを利用しているかもわかり、そのサービスを本当に利用すべきかどうかの判断もできます。
またさらに簡単な方法として、Googleで「〇〇(調べたい仲介サイトの名前) 手数料」と検索すれば、手数料の掲載されているページが上位に表示されます。これで本来は支払い料金のうち何パーセントが手数料であるのか把握でき、その手数料が本当にサービスに見合ったものなのか判断する材料になります。
ちなみに、開始したばかりのサービスでは一時的に手数料を低く抑え、翌年以降に徐々に高くなっていくタイプの仲介サイトもありますが、そんなサービスの裏側も伺い知ることができます。
カメラマンは、ユーザーが多いサイトを選ぶ
カメラマンが仲介サイト・クラウドソーシングを上手に利用する方法として挙げられるのは、まずユーザーが多くて手数料が低いサイトを選ぶことです。
カメラマンの登録人数は調べがつくことが多くても、不特定多数の潜在的なクライアントの人数はなかなかわからないものですが、アクセス数が一つの目安となるでしょう。そんなとき便利なのがSimilarWebというWeb解析のツールで、Chromeなどのブラウザの拡張機能としても無料で使用することができます。こちらのプラグインを使用すると閲覧しているWebサイトの月間アクセス数や平均ページビューを表示できますので、ぜひダウンロードされることをお勧めします。
一部のサイトでSimilarWebでアクセス数が見られないよう制限しているケースもあるようですが、個人サイトを含め多くのサイトのアクセス数を知ることができるのは、ネットの情報を上手に活用する上での有効な手掛かりとなるはずです。
アクセス数が多いサイトはそれだけ収益化も洗練されており、むやみに手数料が高いといったことも少なく、比較的安心して利用できると思います。
登録は最初の数年だけにする
それらの条件をクリアしても、仲介サイトやクラウドソーシングの登録カメラマンでいるのは最初の数年間だけにすると割り切るのが理想です。
なぜならやはり一般的なカメラマンの基準からして仲介サイト・クラウドソーシングの単価はとても安いので、カメラマンとしての将来性を考えたときにネックになります。ネット上の案件はあくまでより良い案件、より良い地位に繋げるステップと考えるのが望ましいのではないでしょうか。
出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングはそれほど歴史の長いものではなく、ここ10年ほどに現れた文化です。しかもそうしたネット上の案件は価格競争でどんどん単価が下がる傾向にあり、いつまでこの環境が保たれるのかわからない不安もあります。
駆け出しのカメラマンでも登録カメラマンになりネット上の案件に精を出していれば、1~2年でそれなりの作例が溜まってくるとはずです。また、継続して仕事を依頼してくれる法人のクライアントや、個人の方でも長くお付き合いして頂ける、仲介サイトの必要ないカメラマンとクライアントの信頼関係もちらほら築けてくる頃だと思います。
その間に、今まで撮り溜めてきた作例を糧にしてきちんとしたポートフォリオを作り、出版社や編集プロダクション、広告代理店に持ち込みを続ければ、カメラマンとして次なるステージが開けるのではないでしょうか。
機材の維持やスキルアップにどうしてもお金の掛かるカメラマンですから、単価を上げていきたいのは誰しもが願うところだと思います。ネット上の案件をこなしていくうちに、撮影の仕事の幅を増やすように目指していってはいかがでしょうか?
今回は出張カメラマン登録サイト・クラウドソーシングのメリットとデメリットをご紹介させて頂きました。
上記のことはカメラマンに限らず、マッチングサイトやクラウドソーシングでイラストレーターやデザイナー、ライターやプログラマー等クリエイターに発注する際全般にも殆ど同じことが言えますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。賢く利用して発注する側・受注する側共に、良い出会いになるといいですね!
Reported by ひらはら あい