古いカメラも修理可能に?リコーが3Dプリンターで生産完了品の部品に対応!

GR Digital IV

日経新聞によると、リコーは製品の試作だけでなく実際の製品の製造にも3Dプリンターの活用を始めたとのこと。これによって多品種少量生産が可能で、保守部品などに適切に対応できるようになりました。

既にGR Digitalなどの生産が完了しているカメラの一部部品で利用されているそうです。そこで今回はこのリコーが製品の保守部品などに3Dプリンターを利用しているというニュースをご紹介します。

■GR Digitalなど生産完了品の部品に3Dプリンターを活用


少量生産が可能な3Dプリンターを保守部品の生産に利用

この3Dプリンターの活用ですが、カメラでは2009年7月に発売され既に生産が完了しているGR Digital IIIや、2011年10月に発売され同じく既に生産は完了しているGR Digital IVのリングキャップ(レンズ周辺部のオプションを取り付ける部分のカバー)などに既に利用されているそうです。

現在GR IIが発売されており、このGR Digital IIIGR Digital IVのリングキャップの金型は廃棄されているのですが、ユーザーからのリングキャップ注文が続いていたそうです。

しかし再び多額の投資を行って金型を起こしていたのでは採算に合わず、そこで3Dプリンターでリングキャップを制作することを思いついたとのこと。

リングキャップはどうやって作られたのか?

リングキャップは2つのパーツから構成されており、内側がポリカーボネート、外側がアルミ合金なのですが、内側のポリカーボネートの部分を3Dプリンターで制作しているそうです。

リングキャップは比較的単純な造形であるため、3Dプリンターでの造形で生じる「積層段差(3Dプリンターで曲面を制作した際に生じる地層のような段差)」の影響が少なく、後処理で黒の染色を行うことで、従来の射出成形品と同等の外観を実現することが出来たとのこと。

1000個以下の少量生産であれば3Dプリンターが低コスト

金型による射出成形と3Dプリンターを比較した場合、3Dプリンターによる成形は個数と比例して成形費が上昇するのに対し、金型を使った成形では初期費用は高額になるものの、その後の成形費はほとんどかかりません。

今回のリングキャップの場合では、3Dプリンターは1個あたりの成形費が1,870円であるため、仮に1,000個制作すると1,870,000円。

これを金型で成形した場合、金型の更新費用は1,700,000〜1,800,000円で、これは個数が増えてもあまり増加しないため、1,000個程度はほとんど価格が変わりません。

つまり1,000個以下であれば、3Dプリンターで成形した方が低コスト、1,000個以上であれば金型を新たに起こした方が低コストとのこと。

広がっていく3Dプリンターの活用

在庫を持たずその都度少量生産できる3Dプリンターは、多様な部品を少量生産する際のコストで有利なため、リコーでは複合機の保守部品など、「必要だが大量に生産する必要がない部品の生産」に利用しているとのこと。

古いカメラを修理に出そうとしても、「生産完了から年数が経過していたため、修理部品がなく修理不能」として返却された経験がある方もおられるのではないでしょうか?

金型を抱えなくても少量生産が可能で、部品の在庫を管理するコストも抑えらられる3Dプリンターは、こうした古いカメラの修理になどでも今後活用されていくのかもしれません。

参考:日経新聞
画像:日経新聞,Amazon

Reported by 正隆