皆さんこんにちは。
今年もカメラグランプリ2021が発表されました。
毎年カメラ記者クラブが発表している「カメラグランプリ」は、前年4月1日から今年3月31日(今回であれば2020年4月1日〜2021年3月31日の期間)の期間に発売されたカメラとレンズの中から、優れた機種を選出するというもので、
- 大賞(審査員投票)
- レンズ賞(審査員投票)
- あなたが選ぶベストカメラ賞(web一般投票)
- カメラ記者クラブ賞(カメラ記者クラブ会員投票)
の4つの部門があります。
今時このカメラグランプリを参考にしてカメラを買っているというような人はほとんどいないと思いますが、一応日本のカメラ賞としては1984年から続くもっとも歴史ある賞にも関わらず、特に近年はまともに審査されているようには見えません(※選出された機種自体がどうこうという意味ではありません)。
そこで今回は、カメラグランプリの審査が極めて劣化しているというお話です。
■カメラグランプリをダメにした2つの要素
1.審査員がカメラに詳しくない
まず一つめのの問題点として、審査員の知識不足という問題があります。
カメラグランプリ2021の選考委員は、
- カメラ記者クラブ会員
- 名川正彦(Webカメラマン)
- 福田祐一郎(CAPA)
- 山岡佳久(デジタルカメラマガジン)
- 鈴木誠(デジカメWatch)
- 大谷圭吾(日本カメラ)
- 永原耕治(風景写真)
- 大江航(フォトコン)
- TIPA(The Technical Image Press Association)
- 雑誌代表者(カメラ記者クラブ加盟媒体)
- 森田浩一郎(Webカメラマン記者)
- 菅原隆治(CAPA編集長)
- 福島晃(デジタルカメラマガジン編集長)
- 宮澤孝周(デジカメWatch記者)
- 佐々木秀人(日本カメラ編集長)
- 石川 薫(風景写真出版代表)
- 藤森邦晃(フォトコン編集長)
- 特別選考委員(50音順)
- 赤木真二(日本スポーツプレス協会代表理事)
- 磯修(株式会社マイナビマイナビニュース編集部)
- 上田耕一郎(東京工芸大学芸術学部写真学科教授)
- 小林稔(日本レース写真家協会会長)
- 塩川安彦(工学博士・元千葉大講師)
- 鹿野宏(電塾塾長)
- 志村努(東京大学生産技術研究所教授)
- 野町和嘉(日本写真家協会会長)
- 松任谷正隆(音楽プロデューサー・アレンジャー)
- 宮野友彦(株式会社KADOKAWA 週刊アスキー編集長)
- 百瀬俊哉(九州産業大学芸術学部写真映像学科教授)
- 森山眞弓(日本カメラ博物館館長)
- 山田久美夫(DigitalCamera.jp 代表)
- 外部選考委員(50音順)
- 赤城耕一
- 阿部淳一
- 阿部秀之
- 伊藤亮介
- 今浦友喜
- 宇佐見健
- 大村祐里子
- 岡嶋和幸
- 落合憲弘
- 加賀和哉
- 河田一規
- 熊切大輔
- 鹿野貴司
- 杉本利彦
- 諏訪光二
- 曽根原昇
- 伊達淳一
- 豊田慶記
- 中原一雄
- 萩原史郎
- 吉森信哉
以上の49名で構成されています。
具体名は控えますが、この選考委員の中には「大してカメラに詳しくない人」が多数含まれています。
もちろん詳しい人も一部にはいるのですが、そうではない人たちの方が圧倒的多数で、選考理由を読んでもカタログの売り文句を読まされているような薄い理由しか書かれていないことからもなんとなく察しがつくのではないでしょうか。
カメラグランプの審査にあたっているのは、
- カメラ系の雑誌やウェブメディアの編集者
- カメラ系のライターや講師業の人
- 権威付けのために呼ばれている人
- カメラが趣味の有名人
などで構成されています。
審査員の中には皆さんがご存知の方も多いと思いますし、私も直接会って話したことがある人もいます。
もちろん全ての審査員を詳しく知っているわけではありませんが、各人がどの程度カメラに詳しいのかはおおよそ把握しており、私からみて「この人は審査員に相応しい知識を有している」と思える人は、審査員49名中、多く見積もっても10名以下です。
その他は、
- 若いために単純に知識の蓄積が足りていない人
- 元々不勉強でただ長くカメラ業界にいるだけの人
- 特定の範囲にしか興味がなく知識が極端に偏っている人
といった人たちで、そもそもこのメンバーで多様なカメラやレンズを評価するのは無理だと思います。
2.採点が公平さを欠いているように見える
もう一つの問題は審査員の採点が公平さを欠いているように見えるという点です。
誰のことと言うつもりはありませんが、どの審査員がどの機種に何点表を入れたか(各人10点を配点)は公開されていますから、そちらの表(カメラ部門,レンズ部門)を見ていただければと思います。
まずカメラ部門のほうですが、10点の持ち点全てを特定の1機種に投票している、つまり極めて極端な配点をしている審査員が49名中7名います。
- 名川正彦(webカメラマン)
- 森⽥浩⼀郎(webカメラマン)
- 宮野友彦(週刊アスキー編集長)
- 豊⽥慶記(外部審査員)
- 杉本利彦(外部審査員)
- 阿部秀之(外部審査員)
- ⾚城耕⼀(外部審査員)
こちらの方々です。カメラレビューやセミナーなどでお馴染みの人もいます。
次にレンズ部門ですが、同様に1機種に全ての持ち点を配点している方は5名おられます。
- 名川正彦(webカメラマン)
- 森⽥浩⼀郎(webカメラマン)
- 上⽥耕⼀郎(東京⼯芸⼤学芸術学部写真学科教授)
- 杉本利彦(外部審査員)
- 阿部秀之(外部審査員)
レンズ部門で極端な配点をされた方はカメラ部門とほとんど共通していることがお分かりになると思います。
もちろん熟慮の結果、本当にその機種が突出して良いと思ったから持ち点全てを1つの機種に配点しただけかも知れません。
ただ、この方々の中には昨年のカメラグランプリ2020でも審査員を務めている方も多いのですが、昨年も同様にかなり偏った配点をされているようです。「2021年と2020年の両方の審査に参加し、かつ10点全てを一つの機種に配点している人」は以下の方々です(2020審査結果)。
- 上⽥耕⼀郎(東京⼯芸⼤学芸術学部写真学科教授)
- 豊⽥慶記(外部審査員)
- 杉本利彦(外部審査員)
- 阿部秀之(外部審査員)
- ⾚城耕⼀(外部審査員)
カメラグランプリ2021とほとんど丸かぶりです。
ちなみにどういう考えで審査されているのか、その一端を知るために、カメラグランプリ2021の審査員のうちのお一人で「webカメラマン(かつての月刊カメラマンがweb版になったもの)」の編集者である名川正彦氏がカメラグランプリ2021の審査について書いた記事がありますので、そちらの記事から一部引用させて頂こうと思います。
””内が引用部分です。
大賞の「α1」について書かれた部分
”誰もが「あ、スッゲーの出ちゃったジャン。(グランプリは)またソニーかよ」と思ったハズ。とはいえ、その後も地味な流れが続いたので、なかなか手に触れたり、テストする機会もなかったような…。”
要するにテストどころか実機に触れもせず審査しているようです。
”ちなみにα1に満点となる10ポイントを入れたのは、阿部秀之氏、豊田慶記くん、ウチの森田浩一郎と、ずべて月カメ関係者! ソニーはこの事実をどう受け止めてくれるのでしょうか? あ、ワタシですか? 億サマ=GFX100Sに10点入れましたー。”
一体何が言いたのでしょう?ソニーになにかしらの見返りを求めているように見えるのですが。
恩着せがましく月カメ関係者の多くがα1に10点全て配点したと言っていますが、α1がカメラ業界で話題となり、多くの人々の関心を集めたのは月カメ関係者のおかげではなくソニー自身の努力の結果だと思いますが、この方はなにか勘違いされているようです。
次にレンズ賞の審査について書かれた部分です。
レンズ賞の「LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6」について書かれた部分
”これはちょっと語っちゃいますよ! なんたってこのレンズに10ポイントをブチ込んだのはワタシただひとりなんです! でもって2位のキヤノンRF800mm F11 IS STMとはたったの3ポイント差! つまり、このワタシがもっとオトナの対応で、他の人たちがそうであったように「分別のある点数刻み」に徹していれば…ということなんです。パナソニックはこの事実をどう受け止めてくれるのでしょうか? あは。”
本当に呆れます。
さて、これら名川正彦氏の発言を読んで見て皆さんはどのような印象を受けましたか?
勿論すべての審査員がこういう人だとは思ってはいませんが、カメラのレビュー記事を執筆したり、セミナーに登壇している審査員が配点している機種を見ると、その多くが、
- その人が普段使っている(贔屓にしている)メーカー
- 雑誌やウェブメディアで自分がレビューしたメーカー
- セミナーなどを依頼されているメーカー
以上のいずれかに絞って配点している傾向が見られます。
誰のこととは言いませんが、審査員の方のウェブサイトやレビュー記事を検索していただければすぐ分かると思います。
1機種に極端に配点するのが駄目なら2機種ならいいのか?というとそういうことではなく、複数機種に配点していても、忖度や贔屓があるという内実が変わらなければ同じことで、「お世話になっているメーカーが1つなのか2つなのかという程度の違い」でしかありません。
もちろん公平に審査されている方の方が多いとは思いますが、公平に審査しているとは到底思えない人も目立つということです。
普段であれば、審査員であっても思想・信条の自由はありますから、メーカーの好き嫌いがあっても全く構わないと思います。
またカメラマンといっても実際はライター業や講師業が主業の方も多いことを考えれば、生活のために特定メーカーに配慮しなければというプレッシャーを感じている部分もあるでしょう。
しかし賞の審査の時はそうした利害関係や、個人の好みを捨てて厳正に審査するべきで、
- 審査員として相応しい知識がない
- 特定メーカーに忖度してしまう(せざるを得ない)
というような人は、そもそも審査員を辞退すべきでしょう。
今回の審査員49名の中で「十分な知識」と「公平な審査」という両方の条件を満たしているのは、片手で数えられるくらいの人数しかいないと思っています。
1984年から37年間も続いている歴史ある賞がこのような状況であることは大変残念です。
しかしカメラグランプリに限らずカメラ賞のほとんどが全く信憑性のないものになっていますし、カメラマニアの皆さんならそのことに十分気付いていると思います。
Reported by 正隆