人はなぜ上級機を使うのか?画質以外の入門機との違いを解説

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人はなぜ上級機を使うのか?画質以外の入門機との違いを解説

皆さん上級機使ってますか?私は神棚に置いて拝んでいます。

一眼レフ選びの際、上級機と入門機で同じイメージセンサーや画像処理エンジンが使われている場合がままあります。画質が同じならなぜわざわざ高くて重い上級機を選ぶのか?と疑問に思われる方もおられるでしょう。

そこで今回は一眼レフの上級機と入門機で何が違うのか?を、「レリーズボタン」「ファインダー」「ボディ構造」の3つのポイントに関して解説させていただきたいと思います(※但し全ての機種に共通しているということではありません)。



■レリーズボタン(シャッターボタン)の違い


入門機のレリーズボタン

エントリークラス〜ミドルクラスまでの一眼レフでは、多くの場合シャッターボタンの内部はメタルドームと呼ばれる部品を2枚使った構造となっており、半押しと全押しの違いが明確になっています。

押し込んだ際には半押しで一度止まり、全押しで完全にボタンが行き止まります。つまり半押しと全押しの分かりやすさを重視した構造になっています。

上級機のレリーズボタン

上級機のレリーズボタンは3枚の板バネを使った2段スイッチ構造になっています。

まずレリーズボタンを押し込んでいくと、レリーズボタンが1枚目の板バネに接触しボタンにバネによる抵抗感が生まれます。そのままボタンを押し込んでいくと、押し込まれた1枚目の板バネが2枚目に接触し通電します。ここで半押し状態になりオートフォーカス等が動作します。さらに押し込んでいくと、2枚目の板バネが3枚目の板バネに接触し、全押しと判断されシャッターが切れます。

なぜこのような設計になっているかというと、入門機が2枚のメタルドームで構成されているように、板バネを2枚にして最後を行き止まりにしてそこに全押しのスイッチを配置しても構わないのですが、3枚の板バネを使うことで、全押しでボタンが行き止まらずに、全押し後にさらに押し込めるスペースを空けておくことができる為です。

なぜ全押し後にさらに押し込めるストロークを用意してあるかというと、上級機の場合連写状態を続けるようなプロスポーツ撮影などで使われるケースが多くなるため、全押しで行き止まるメタルドームスイッチ構造では、行き止まりでレリーズしているわけですから、少しでも指が浮くと連写が途切れてしまいます。また、レリーズや連写状態を保持する為に、行き止まった状態にシャッターをぶつけている為、レリーズの感触が悪くなってしまうのです。

3枚の板バネを使い、3枚目の板バネの後にもストロークの為のスペースを用意しておくことで、ギュッと押し付けることなく全押しから少し押し込んだ状態で連写状態を続けることが容易で、しかも行き止まりにぶつかっていないのでレリーズの感触も良いというわけです。

  • 1枚目の板バネでレリーズの重みを作り
  • 2枚目の板バネで半押し開始
  • 3枚目の板バネで全押し
  • さらに押し込む余地を残している

という凝った構造になっているというわけです。

 

■ファインダーの違い


入門機のファインダー

エントリー一眼レフでは多くの場合、ファインダーにはペンタダハミラーが多く使われています。これはミラー(鏡)を組み合わせて像を反射させ、プリズムと同様の構造を作るもので、安価かつ軽量に作ることができるというメリットがあります。

上級機のファインダー

上級機や一部のエントリー機ではファインダーにペンタプリズムが採用されています。

ペンタプリズムはペンタダハミラーと比較して、重く高価になるというデメリットもあるものの、

  • 鏡よりも反射率が高く明るいファインダーを実現できる
  • 屈折率が高くより大きなファインダー像を実現できる
  • ミラーを組み合わせたダハミラーよりも構造的に衝撃に強くなる

などのメリットがあります。

ミラーとプリズムを比較した場合、アルミ蒸着のミラーの反射率は1面あたり約85%、銀蒸着のプリズムの反射率は1面あたり約95%で、反射させるたびに光は減衰していきます。ペンタ部分では3回反射(横からの光路図では2回のように見えますが実際は3回)を繰り返す為に、

  • ダハミラー:85% × 85% × 85%=61.4%
  • ダハプリズム:95% × 95% × 95%=85.7%

とダハミラーでは約38.6%もファインダー内部で光が減衰してしまうわけです。

そのため上級機ではこれらの理由から、ファインダーにはプリズムを使用するわけですが、現在では技術の進歩でペンタダハミラーとペンタダハプリズムの差は縮まっています。

ちなみに一般的な一眼レフの場合、上下左右逆像の状態でレンズから射出された映像は、クイックリターンミラーで上下を反転、その後屋根(ダハ)のようになったプリズムの頂上部分で左右を入れ替えるために2反射させ、最後にプリズムの奥で正立正像に結像させ、その映像を我々は接眼部から見ています。つまり上下左右逆像の状態からクイックリターンミラーで1回、ペンダハタプリズム(もしくはペンタダハミラー)で3回の合計4反射させることで上下左右正像に直しているというわけです。

 

■ボディ構造


入門機のボディ構造

基本的な一眼レフのボディ構造は入門機でも上級機でも、その多くがシャーシと呼ばれる骨格部分に上面、前面、背面、底面といった外装パネルを組み合わせることで形成されています。

しかし現在一部のモデルでは、ボディの小型化や軽量化のためにこのシャーシを非常にコンパクトに抑え、ボディ外装によってボディに加わる力を受け止める構造を実現しているモデルも存在します。

入門機の場合、ボディが軽量であることもセールス面で重要な要素となるため、シャーシ部分にも金属ではなく樹脂製素材が使用されている場合もありますが、樹脂素材だからといって一般的な使用において問題が起こるとった心配はありません。

また外装パネルにおいても、樹脂製外装は、この後ご説明するマグネシウム合金製外装と比較して弾性が高いため、塑性変形(変形したまま元に戻らなくなる状態)を起こしにくいといったメリットがあります。

上級機のボディ構造

対して一眼レフ上級機では、シャーシやボディ外装パネルに金属を使用するケースが多くなり、また外装に関しては、現代の上級機の多くがマグネシウム合金を採用する傾向にあります。

マグネシムは工業製品に使用される一般的な金属の中では最も軽く、高剛性と軽量化を両立しやすいというメリットがあります。

しかしながら樹脂製素材と異なり、マグネシウム合金は素材そのものの価格は実は樹脂製素材とそれほど変わらないのですが、成型が容易な樹脂製素材と異なりマグネシウム合金は二次加工が必要で、かつ金型の劣化が激しいため製造コストが嵩んでしまうという問題があります。

そのため高価な上級機種にマグネシウム合金が採用されるというわけです。

また上級機には過酷な環境下でも撮影が続けられるように防塵防滴構造が採用されています。この防塵防滴にもボディの材質は関わりが深く、外装パネルの隙間を埋めるようにシーリングを施した場合、樹脂製素材よりも剛性の高いマグネシウム合金は変形しづらいため、シーリングによって隙間が空きにくく、比較的容易にシーリングを施すことが可能になります。

そのため外装パネルにマグネシウム合金を使用した場合、樹脂製素材よりもより多くの部分にシーリングを施しやすいというメリットあります。

現在では一部の入門機でも防塵防滴構造を採用しているモデルも存在しますが、こうした場合コストの問題から外装パネルに樹脂製素材を採用しているため、そのままではシーリングを施した際に外装パネルが変形し隙間が空きやすくなってしまいます。そのため樹脂素材そのものの厚みを増すことで変形を防ぎ、樹脂素材によるコスト減と防塵防滴構造の両立を図るといった工夫がなされています。

これまでご説明したように、マグネシム合金は製造コストが増してしまうものの、高剛性と軽量化の両立を図ることができるため上級機にはマグネシウム合金が採用されるわけですが、マグネシウム合金は樹脂製素材と異なり平滑性が低く、そのまま塗装を行うと表面がザラついた状態になります。

こうしたザラつきは滑り止めの効果も期待できるため、マグネシウム合金を採用した多くの上級機では、このザラつきをそのまま残す、あるいは梨地仕上げを行うといった塗装を行います。

このように多くの機種ではマグネシム合金の素材のザラつきを生かす方向性となっていますが、一部の機種ではデザイン上などの理由からマグネシウム合金を使用しつつも表面にツルツルの塗装が施されている場合もあります。こうした場合、マグネシウム合金に平滑処理を行うことで表面のザラつきを無くした状態で塗装を行うため、よりコスト高となる傾向にあります。

 

■入門機と上級機の色々な違いを感じてみよう!


冒頭にも申し上げたように、今回ご紹介した内容は、「全ての入門機と上級機がこうなっているという事ではない」という点にご注意ください。

入門機のボディには軽量などの魅力が、上級機には品質感などの魅力があります。

上級機の魅力は今回ご紹介した部分以外にも沢山ありますので、各メーカーのショールームや販売店で実際に触ってみて確認してみていただけると良いでしょう。

また、上級機を実際に使っておられる方も、エントリーモデルのシンプルな使い勝手や、軽量さといった入門機ならではの魅力を再確認してみるのもオススメです。

 

参考:図解 デジタルカメラの仕組み
画像:Nikon

Reported by 山崎將方



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