夏は涼を求めて沢遊びや滝を見に行った方も多いのではないでしょうか。
「水」は写真の中でも頻繁に出てくるモチーフで、人工的なものでも例えば公園の噴水や魚の泳ぐ水槽など、カメラを向ける機会が多い被写体ですよね。
そんな訳で、今回はあらゆる「水」をテーマにした写真の撮り方を一挙にご紹介します!
■雨と雫
こちらは雨の日に雫の着いた逆光の葉を撮影したものです。透過光といって光に透ける被写体を逆光で写すと、独自の透明感を演出することができます。葉同士が重なっていれば透明感がより強調されますね。
また、今回は1/100というシャッタースピードのため、雨が針のように細く短く表現されています。早過ぎると全く写りませんし、遅いと糸のように長く表現されるので、シャッタースピード優先で色々試してみると面白いですよ。
早すぎても遅すぎても雨らしさは出ないので気をつけましょう。
雨を写したいときは自分が動いて暗めの背景を選ぶと、よりいっそう引き立きます。
蒸し暑くてイヤな梅雨ですが、このように雨の日にしか撮れない写真もあるので、いつも鞄の中にはカメラを入れて持ち歩いてくださいね!
この季節は雨上がりの空の洗いたての美しさに感動することも多いはず。とっておきのシャッターチャンスに恵まれるかもしれません。
■滝
こちらは、静岡の有名な「白糸の滝」で撮影したものです。名前の通り、滝の流れが白糸のように優美に見えますか?
滝の撮影でもし早いシャッタースピードを切れば、滝のしぶきが一粒一粒止まって見えます。それも表現として有効ですが、今回は「白糸」らしさを出すため、スローシャッターを切ってみました。
具体的な数値では、絞りF22、シャッタースピード1.6、ISO100で撮影しています。
長いシャッタースピードで撮影した場合、露光時間が長くなるということは必然的に明るい写真になります。そのため、露出オーバーで白飛びしないためには、普段より大幅に絞らなければなりません。
白飛びしない程よい明るさにするため、今回は絞りがF22という数値になったのですが、絞りすぎると「回折現象」といって画質低下を招くことがあります。
せっかく綺麗な滝の写真を撮りにきたら、できれば高画質で撮影したいですよね。そこで、こういった撮影にはよく「NDフィルター」というものが使われます。NDフィルターはレンズに装着するもので、光量を何分の一かにカットできるよう、それぞれ減光量の違う物がラインナップされています。
ND2は光量が1/2という意味で、1段分の減光をします。ND4は光量が1/4で、2段分の減光をします。ということは、ND8だと?光量が1/8になり、3段分の減光になるわけですね。
つまり今回はF22に絞らないと撮れなかった写真が、ND8があれば、それと同じような明るさに撮るために絞りはF8ですむということなんです!(F8→F11→F16→F22 で、これは3段分の変化であるため)
これなら画質は低下せず、レンズの性能を発揮した絞りで撮影できますね。
段は少しややこしいかもしれませんが、よくわからなくても大丈夫。スローシャッターで露出オーバーになっちゃった!という経験があるなら、とりあえずNDフィルターがあれば減光できると覚えておきましょう。
もしNDフィルターを購入する場合は、最近のカメラは高感度に強いので、場合によっては露出を感度で上げてしまうつもりで減光量の大きめのNDフィルター、例えばND16などを一つ買う(大は小を兼ねる)という手もあります。
大きく減光させておいて、ISOを200(1段明るく)や400(2段明るく)にすることで、適正露出にするという考え方です。ちょうどいいNDフィルターの数値に悩んでしまったら思い出してくださいね。
さて、ややこしい話は置いておいて、壮大な滝を前に涼やかな写真が撮れるといいですね♪
■海
夏の日差しにキラキラと輝く海は、つい撮りたくなる被写体の一つですよね。この「キラキラ感」は、逆光の時生まれるもので、順光では輝きません。
つまり海の向こうに太陽が見える向きが一番キラキラします。ただ、海の青さは順光の時が最も青く見えるのです。ちょっとややこしいですね。
昔からカメラマン泣かせといわれているのが、海辺のポートレートです。逆光のキラキラ輝く海と人物を一緒に写そうとすると、人物の顔は暗くなってしまいますよね。
そこで、「日中シンクロ」と言って、明るい昼間でもストロボを弱めに発光させ、逆光の人物を明るく写すということが行われます。上手くいけば背景の空や海は青く、人物もくっきりと映るというわけです。
その場合、ストロボの直射では光質が強すぎると感じると思いますので、ディフューザーや小型のソフトボックスなどを使用し、光を和らげるといいですね。
海ではカメラを落とさないよう、くれぐれも気をつけて撮影してください。また、レンズ交換時に砂やほこりは大敵ですので、する場合はできる限り砂浜ではなく、落ち着いて交換できる場所を選びましょう。
いつも青い空、青い海だけではなく、ぜひ輝く笑顔も一緒に収めてみてくださいね♪
■水鏡
涼しげな景色、こちらは「水鏡」に注目してみました。
池や湖が定番ですが、この写真は横浜みなとみらいの万国橋からの景色です。水面の写り込みに涼を感じませんか?
水鏡は、メインの被写体と水面等にそれが映り込んで逆像になった状態を一緒に撮影するだけです。湖に映る「逆さ富士」はとっても有名ですよね。
ただちょっとでも風があると、さざ波が立ってしまい美しい水鏡になりません。こうしたチャンスを見逃さないよう、いつもカメラを持ち歩いてくださいね。
情緒を感じる水鏡は、春なら桜、夏は新緑、秋は紅葉…と、季節感を表現するにもピッタリのモチーフで、よく使われます。構図を決める際は空と水面の割合に注意してみると、伝えたい印象をコントロールできますよ。
この場合は立ち並ぶ横浜のビル群、突き抜けるような青い空を強調したかったので、空の分量をやや多めにしてみました。
桜や紅葉の写り込みが綺麗なときは、思い切って空と水面を1:3くらいの割合で切り取っても面白い作品になると思います。また、大胆に上下を反転させてしまい、どっちが上か下か?考えさせる、トリックアートのような見せ方もあります。
撮影後は、コントラストを少し強めにしたり、彩度を高めるとより印象を強めることができます。
ただ、レタッチの効果は面白くて極端にやりすぎてしまい、後で見直すと不自然だった…という経験はありませんか?迷ったら控えめな修正を心掛け、時間を置いてあとで見直すと、ちょうどいい具合が見つかると思います。
ちなみに、あえて水面の写り込みを消したい!という場合は、PLフィルターを使います。川遊びができるような浅い川瀬で、澄んだ川の底にある石を写したいけど反射してしまってなかなかキレイにいかない…という時は、PLフィルターで反射を消してみましょう。
水面でなくても、自分が映り込んでしまうショーウインドウ等にも有効なので、一つ持っていると大変便利です。
■池とボート
こちらは公園をお散歩しているときのフォトジェニックな出会い…「池とボート」です。場所は池の有名な人気のデートスポット、井の頭公園です。
ボートハウスに整然と並んだボートは壮観ですが、誰かが漕いでいるスワンボートは特に、岸から眺めていても楽しいですよね。
今回の写真は、手前に椿が咲いていたので前ボケにしてみました。絞り(F値)をできるだけ開放(数字を小さく)すると、玉ボケがより大きくなります。
以前海の回でお話ししたように、池の水面も逆光だとこのようにキラキラ輝いてキレイです。
広い池を撮影するとき、画面に何もアクセントがなく水面の占める分量が多いと、単調な印象になってしまいがちです。
近くに花や木の枝があれば手前に入れてみる、横位置だけでなく縦位置でできれば空や雲も入れる、あのボートがこの位置に来たら撮影するというように配置にこだわってみるなど…ちょっとした工夫でインパクトのある1枚になる可能性があります。
噴水を主役にしたり、カモなど水鳥に注目してみるのもいいですね。
また、撮影してみて思ったより池の水色がキレイに出ない時は、青くしたい場合ホワイトバランスの「電球」を選んだり、夕方で西陽の暖かさを強調したい場合は「曇天」を選ぶなど、意図的に変化させてみても面白いでしょう。
ちょっとした公園のお散歩でも、傑作写真の生まれるチャンスがあるかも!?ぜひカメラを連れて行ってあげてくださいね♪
■ウォータースライダー
今回はちょっと変わった写真です。遊園地のウォータースライダーを流し撮りしてみました。
やり方はとっても簡単。シャッタースピードを1/10~1/20くらいに設定し、落ちてくるところを狙ってカメラを構え、被写体に合わせてカメラを振る「流し撮り」というテクニックを使いました。狙った被写体だけが停止し、背景が流れていれば成功です。
よく車の広告写真や、レーシングカーの写真でご覧になったことがある方も多いと思います。なかなか普段は思い浮かばないワザですが、通りで走る車やバイクはもちろん、うまくすれば動物園で疾走するサルやカンガルーでも可能です。
慣れないうちはなかなか難しく成功率は低いのですが、何枚も試してみてくださいね。こうした遊園地のアトラクションなら、その場で待っていれば何回もチャンスが訪れるので、実は流し撮りを練習するのにぴったりですよ♪
今度遊園地に行った際にはぜひ思い出してくださいね。
■水たまり
こちらは観覧車の下の水たまりに写った、写り込みを撮影しました。ちょうど男の子が歩いてきて波紋が広がった瞬間です。
こうしたスナップは偶然は難しいので、水たまりを見つける→観覧車がよく写る位置を探す→少し待つ→誰かが歩いてきたところを撮る というように、ある程度狙いを付けています。
派手なアトラクションにばかり目が行ってしまいますが、周囲の光景もよく観察すると、思わぬシャッターチャンスに恵まれるかもしれません。
今回は水をテーマにした写真をご紹介しましたが、いかがでしたか?水は意外なところでそれぞれ違った形で発見できるモチーフなので、注目してみると面白いですね。自分らしい視点を追求して、水のある風景が輝くインパクトのある表現を探してみてください!
■ぜひチェックしてね!
今回の記事は、どんどんプリントで連載しているブログ記事を加筆・修正したものです。最新の連載はぜひどんどんプリントの公式ブログでチェックしてくださいね。
Reported by ひらはらあい