今日は今年最後の更新となりますので、前からやりたいと思っていたレタッチの順番についてです。
RAW現像やJPEGのレタッチには手順があります。その順番と理由について解説します。それぞれの効果は知っていても行き当たりばったりでレタッチしていませんか?
RAW現像の正しい手順を覚えることで、効率的にRAW現像を行え、JPEGであれば画像劣化を起こしにくいレタッチを行うことが出来ます。今回はPhotoshop Camera RAWとLightroomの操作を例に、RAW現像の順番を解説していきますが、他のRAW現像ソフトでも基本の流れは同じです。
是非ご参考にして頂ければと思います!
■目次
- RAW現像を行う前に。
- 手順1.「レタッチの方向性を決める」理想の状態を思い描く。
- 手順2.「露光量」を動かして明るさを調整する。
- 手順3.「白レベル」を調整し、ハイエストライト部の露出を決める。
- 手順4.「ハイライト」を調整し、ハイライト部の露出を調整する。
- 手順5.「黒レベル」を調整して黒つぶれを抑える。
- 手順6.「シャドウ」を調整してシャドー部の露出を調整する。
- 手順7.「色温度」を調整して色をある程度合わせる。
- 手順8.「色かぶり補正」を行い色温度で補正できなかった分を調整する。
- 手順9.「自然な彩度」で彩度を適正にする。
- 手順10.「HSL/グレースケール」で各色のバランスをとる。
- 手順11.「レンズ補正」で収差や周辺光量落ちを整える。
- 手順12.「スポット修正」で肌荒れやゴミを取り除く。
- 手順13.「シャープ」で画像に解像感を与える。
- 手順14.「ノイズ軽減」でノイズを取り除く。
- 手順15.「段階フィルター」や「円形フィルター」で部分的に補正する。
- 手順16.「補正ブラシ」で細部をレタッチする。
- 手順17.「画像を保存」しレタッチを終了する。
- まとめ
■RAW現像を行う前に。
この記事ではプロカメラマンの定番、Photoshop(Camera RAW)とLightroomの使用を前提に説明しますが、基本的にはその他のRAW現像ソフトでも流れは同じです。
正しい順でレタッチすることの意味は2つ。
- (JPEG時)レタッチ工程で画像をなるべく劣化させないようにするため
- 一度行った操作を何度もやり直すことなく効率よくレタッチするため
この2点です。この順番を理解していないと、一枚のレタッチにかかる時間が大幅に伸びてしまい大量にあるといつまでも終わりません。またJPEGではレタッチの行程が増えすぎてしまいその間に画像を劣化させてしまいます。
ゆえにレタッチの順を知っておくことは写真のレタッチをする上で非常に重要な要素になります。
■手順1.「レタッチの方向性を決める」理想の状態を思い描く。
練習の段階ではいろいろな項目をいじってみるのも良いですが、本番の画像ではいきなり画像をいじったりはしません。まず撮影画像をよく見て、どこに問題があるのか?あるいはどのように画像を仕上げたいのか?などを明確にします。
これは急がば回れというわけで、いきなりいじりながら試行錯誤してしまうと、結局かえって時間がかかり、特にJPEG画像などの場合はレタッチによる画像劣化を起こしてしまうからです。
まずは仕上がりをしっかりとイメージしましょう。どうなって欲しいのか、そのイメージと現在の画像の状態はどこに差異があるのかを考えます。
次のステップからRAW現像の具体的な手順が始まりますが、撮影画像ごとに必要なレタッチは違うため、この画像には必要がないと思った工程は飛ばして構いません。
■手順2.「露光量」を動かして明るさを調整する。
まずは明るさ、つまり露出の補正を行います。最初に画像の明るさを調整するのは、明るさが変わると色味が濃く見えたり薄く見えたり、つまり彩度が変わって見えるためです。
色調を先に調整するとそのあと露出に手を加えた際に彩度が変わって見えるため、改めて色味を調節しなければならなくなるケースが多いからです。
「露光量」の項目を調整する際には画面右上のヒストグラム表示にある、シャドウとハイライトのクリッピング警告を押しておくと、露光量を調整する前や調整の途中で白飛びや黒つぶれが起きた場合に気付きやすくなるので押しておきましょう。
意図して部分的に白飛びを起こしたり影絵のようにシルエットを表現するような場合は、表現としての意図的に行っているわけですから構いませんが、通常は白飛びや黒つぶれが起きないように気をつけて露光量を調整していきましょう。
また印刷時とディスプレイで見る場合では写真の明るさは大きく異なって見える場合があり、同じ印刷する場合にもプリントサイズでも明るさは違って見えます大きいプリントほど明るく見え、小さいプリントほど暗く見えます。印刷時はその点を考えて露光量の調整が必要になりますが、まずは使用しているモニター上で作品の意図を含めて適正と思われる明るさにしましょう。
■手順3.「白レベル」を調整し、ハイエストライト部の露出を決める。
全体の露出を調整したら、次に白レベルのスライダーを動かして最も明るい部分の露出を決めます。その際もクリッピング警告はONにしておきましょう。この「白レベル」ですが、「ハイライト」や「露光量」の調整と違うのは、「白レベル」は画像の最も明るい部分に効果があるということです。
つまり画像で最も明るい部分を白飛びさせないギリギリに調整したいといった場合、露光量を調整しても良いのですが、それではやや明るい部分やシャドウ部まで全てが明るくなってしまいます。
ハイライトのスライダーを調整した場合には、画像上で明るい部分全体を調整するのですが、やや明るい部分は既に丁度良い、あるいはまた別に調整したいが、最も明るい部分に関しては白飛びしてしまっているので少し露出を下げたいとか、あるいは最も明るい部分をより明るく白飛びするギリギリまで明るく補正したいといった場合にこの「白レベル」を動かします。
つまり、画面上のハイエストライト部(最も明るい部分)を調整するのが「白レベル」の効果になります。ここの調整し、写真の中のハイエストライト部をまずは決め打ちします。この時ハイライトクリッピング警告をONにしておけば、白飛びが起きた際にその部分に赤色の警告が付きますので、それを見ながら白飛びを起こさないように調整していくわけです。
■手順4.「ハイライト」を調整し、ハイライト部の露出を調整する。
次に「ハイライト」のスライダーを動かしてハイライト部(画面上で明るい部分)を調整します。白レベルの調整によってハイエストライト部(最も明るい部分)は調整済みですから、その他のハイライト部を調整します。
これでハイエストライト部とハイライト部の調整が完了します。つまり画面上で明るい部分全体の調整が完了した状態となるわけです。
■手順5.「黒レベル」を調整して黒つぶれを抑える。
次にシャドー部の調整を行うのですが、こちらもハイライト調整と同じ手順で行います。まずはシャドウクリッピング警告の表示をONにしましょう。
それから「黒レベル」のスライダーを操作して最も暗い部分の暗さを調整します。黒つぶれを起こした場合には、青色のクリッピング警告がその部分に点灯しますので、それを見ながら黒つぶれが起こらないように調整します。
もちろん意図して影絵のような表現など完全に黒く潰したい場合は構いませんが、一般的には黒つぶれや白飛びを避けるように調整するのがセオリーです。
■手順6.「シャドウ」を調整してシャドー部の露出を調整する。
「黒レベル」で最も暗い部分を決めたら、次に「シャドウ」スライダーを動かしてシャドー部全体の明るさを調整します。逆光などで人物が暗くなってしまった場合などもこの操作で行います。
幾ら白飛びや黒つぶれを抑えたいからといって、「白レベル」や「ハイライト」を大幅に下げ、「黒レベル」や「シャドウ」を大幅に引き上げてしまうと、写真全体が眠くなってしまったり、本来コントラストが強くなるはずのシチュエーションではHDR調の不自然な画像になってしまうので気を付けましょう。
■手順7.「色温度」を調整して色をある程度合わせる。
次にホワイトバランス(色温度と色かぶり)の補正を行います。まずはCamera RAWの「色温度」と「色かぶり補正」のスライダーを操作し、目的の色に近づけていきます。Raw現像の場合は色温度を下げる(スライダーを左にしていく)とブルー(寒色)に、色温度を上げる(スライダーを右にしていく)とイエロー(暖色)に画像全体が変化していきます。
ここで色調をまず補正するのですが、色調補正は肉眼で見たままにするのが正しいとは限りません。写真表現の中で敢えて寒色にすることでクールなイメージにすることもありますし、その逆に暖色にすることで暖かみのある色調にすることもあります。
しかし今回はホワイトバランスの言葉通り、白を白く見せるよう色かぶりをなくす方向色調補正を行ってみたいと思います。
まずは先ほど申し上げたように色温度のスライダーを動かしてみましょう。この段階では本来の色味に「ある程度」近づけばOKです。色調補正はRAW現像でも難しい部分で、最初にブルー←→イエローを動かす「色温度」スライダーで調整します。
色温度スライダーのみの操作で色調を補正を完全な状態にする必要はありません。「色温度」の調整に加えて、色相・彩度・明度とさまざまなアプローチで色補正を行えますし、逆にそうした操作を行わないと補正しきれないという場合も多いのです。
まずは「色温度」のスライダーで可能な限り画像を見ながら仕上がりのイメージに近い状態にしてみましょう。画像を見ながら最大限イメージに近づけばそれで色温度補正を終了させて次のステップに移行してかまいません。
ちなみにCamera RAW左上スポイトの形をした「ホワイトバランスツール」で無彩色の場所をクリックすると一発でホワイトバランスが補正されるので非常に手早く色調補正が行えますが、これはあくまでも「現像ソフトが考える適正な色味」ですから、正しく補正されるとは限りませんし、撮影者である皆さんの意図も当然反映されません。
「ホワイトバランスツール」は、急いでいる場合やグレーカードを写し込んだ状態で大量の画像を一括して補正したい場合などには非常に有効なツールですから、ケースバイケースで使用していただくのが良いでしょう。また手動微調整する場合でも、まずはホワイトバランスツールを使用してある程度ざっくり合わせてから細かい色調補正を行うというのもスピードアップにつながるテクニックの一つです。
■手順8.「色かぶり補正」を行い色温度で補正しきれなかった分を調整する。
「色温度」のスライダーである程度色味を補正できたら、次に「色かぶり補正」を行います。色かぶり補正はスライダーを左にするとグリーンに、右にスライドさせるとマゼンタに色味が変化します。
前の行程で色温度をある程度合わせてみたけれどグリーンかぶりしている、あるいはマゼンタかぶりしているといった場合にはここで補正することが可能です。
ここでも完璧に補正できるわけではありません。と言うのも、例えば環境光が極端に偏ってしまっていて、補正したくてもその環境光の中にそもそも色情報が無いという場合などは、いかに優秀な現像ソフトでもデイライトような色を再現することは出来ません。
しかし考え方を変えてみれば、その環境で敢えてシャッターを切ったのは撮影者自身であり、「その色の環境が美しい」と判断して撮影しているわけですから、そもそも全く色の偏りが無い状態に無理にレタッチで戻す必要は無いとも言えます。
例えばこのような場所では青色LEDの光源しか無く、その場に日中のような色情報がありません。この画像を幾ら色調補正しても完全に昼間の色味を再現することは出来ませんが、そもそもその必要がないというわけです。あくまでも青色LEDのイルミネーションの範囲での調整を行います。
話を戻しますが、色かぶり補正ではグリーンもしくはマゼンタ方向に色を補正するこ事で、先に行った色温度と合わせて色かぶりを取り除いたり意図する色調に作り上げていきます。
この時点である程度色はイメージに近くのですが、例えば特定の色だけ補正したいといったことはここでは出来ませんので、あとで解説する「HSL/グレースケール」を使用して行います。
■手順9.「自然な彩度」で彩度を適正にする。
露出とホワイトバランスを補正したら次は彩度を調整します。彩度もまたクリッピング警告を参考にすれば色飽和が起きた際にも判別することが可能です。
ちなみにPhotoshop(Camera RAW)やLightroomには、「自然な彩度」と「彩度」という2つの彩度調整スライダーがありますが、この違いをご説明しましょう。
彩度:全てのカラーの彩度を一律に上げたり下げたりします。
自然な彩度:彩度の高いカラーはできる限り動かさず、彩度の低いカラーのみ彩度を調整することが出来ます。
ということです。「自然な彩度」は彩度の低い部分のみ彩度を上げるといった事が可能なため、より自然に彩度を上げる事が可能です。「自然な彩度」のスライダーを動かして彩度調節を行うのですが、人は色味に関しては麻痺するのが早く、見ているうちに慣れてしまって際限なく彩度を上げてしまいがちです。その結果あとから見ると非常にどぎつい色味にしてしまう事が多く注意する必要があります。
他の要素でも同じ事が言えますが、迷ったら控えめな方を選択するのがレタッチの極意です。特に色味に関してはやり過ぎないように慎重に補正しましょう。
■手順10.「HSL/グレースケール」で各色のバランスをとる。
右側のタブを切り替えると、「HSL/グレースケール」という項目があります。
HSLとは、色相(Hue)と彩度(Saturation)と輝度(Luminance)の略で、色ごとに色相・彩度・輝度を調整することができます。
「色温度」や「色かぶり補正」では画面全体にその効果が適用されてしまうため、一部の色に対してのみ調整を行いたい場合はHSLを使用するというわけです。
色温度や色かぶり補正を行って満足のいく結果が得られていればHSLの項目を操作する必要はありませので次のステップに移行して頂いて構いません。全体の色調をレタッチした場合に一部の色味が上手く補正できないという場合はHSLの項目でレタッチを行う訳ですが、HSLには、
- 色相(色味)
- 彩度(鮮やかさ)
- 輝度(明るさ)
の3項目があります。
8色の色味のそれぞれの色相、彩度、輝度を調整できますから、「色温度」と「色かぶり補正」「自然な彩度」で全体的にはレタッチによって色調が整っているが、例えば顔の肌色、唇のピンク、木の緑を補正したいというような一色に対する補正を行いたい場合は、HSLによって色調補正を行う事が可能です。
ただし、同じ色が他の部分にも使われている場合は同じように色調補正の影響を受けてしまうので、そうした場合はPhotoshopで範囲指定などをする必要があります。
■手順11.「レンズ補正」で収差や周辺光量落ちを整える。
次に「レンズ補正」の項目を選びます。レンズの収差には色収差やザイデルの5収差(像面湾曲・歪曲収差・球面収差・非点収差・コマ収差)などがありますが、ここで行うのはそれらと共通するものもありますし、違うものもあります。
カラーフリンジの補正、水平出し、樽型収差・糸巻収差の補正、パースペクティブ(遠近感)の補正、周辺光量の補正などが出来るようになっています。まずはそれぞれのタブを見ていきましょう。
「プロファイル」タブの解説
レンズ情報をもとに自動で補正を行ってくれる便利なモードですが、登録されているレンズ情報に限りがあるのが欠点です。
「カラー」タブの解説
フリンジの補正を行います。色収差が発生しているような場合、こちらのスライダーを動かして色収差を除去します。日差しが強い場合や金属に光が当たっているような場合、パープルやグリーン、シアンのフリンジが出る事が多くそれらを除去する事が可能です。
「手動」タブの解説
Upright(自動、水平出し、水平・垂直方向の遠近法、水平出し及び水平・垂直方向の遠近法)、ゆがみ、垂直方向、水平方向、回転、拡大・縮小、縦横比、周辺光量補正(補正量と効果の範囲を設定できます)などの補正を行う事が出来ます。
次に種類の多い「手動」タブのそれぞれの項目を解説していきます。
Upright
自動→パーズベクティブ(遠近感)をバランスをとって補正します。
水平→レベル(水平出し)を行います。
垂直→垂直方向のパースを補正します。建物物の撮影時などに使います。
フル→垂直及び水平方向のパースを補正します。
変形
ゆがみ→樽型収差や糸巻収差などを補正します。陣笠収差は補正できません。
垂直→垂直方向のパースペクティブ(遠近感)を補正します。
水平方向→水平方向のパースペクティブ(遠近感)を補正します。
回転→画像を回転させて傾きを補正します。
拡大・縮小→中心位置を変えずに画像を拡大・縮小しトリミングします。
縦横比→画像の縦横比を変形させます。
周辺光量補正
適用量→周辺光量落ちを補正します。ビネットコントロールとも呼ばれます。
中心点→周辺光量補正の適用範囲を変化させます。0に近づけるほど中心から広範囲に、100に近づけるほど周辺のみに効果が反映されます。
■手順12.「スポット修正」で肌荒れやゴミを取り除く。
例えばポートレート写真において、シミやソバカス、肌荒れを取り除いて美肌に仕上げたい、あるいは風景写真に写り込んだ小さな不要物やセンサーゴミの写り込みなどを除去する際に使用するのが「スポット修正」です。
補正ブラシのように円形の選択範囲で除去したい部分を指定すると、近くの綺麗な部分から補完してくれるというものです。
特にポートレート撮影などには無くてはならない機能で、これを使用することで肌を劇的に綺麗にすることが可能ですが、やり過ぎは不自然さを生むことにもつながるため気をつけましょう。
■手順13.「シャープ」で画像に解像感を与える。
そろそろレタッチも完成に近づいてきました。全体のシャープネスを調整します。硬すぎる場合は敢えて下げることもありますが、多くの場合は軽くシャープネスをかけます。
シャープネスをかける際は、100%表示にして効果を加えていきます。「シャープ」の項目には幾つかのスライダーがあります。
適用量
スライダーを右にドラッグするとシャープネスの効果量が増加します。やり過ぎに注意しましょう。
半径
このスライダーは、写真の中でシャープ処理の対象となるエッジからどこまでの範囲かをコントロールします。
ディテール
これはどれだけのエッジ領域にシャープを適用するのかをコントロールします。輪郭以外のディテールが強調されるように働きますから、金属の質感などを強調したいような場合に有効です。
マスク
シャープを適用するとそれが画像全体に均等に適用されます。しかしながら一枚の写真の中にはシャープにしたい部分と、そうでない部分が混在していることが普通です。
例えば女性モデルの人物写真の場合、目には解像感が欲しいが肌はなめらかに表現したいといった場合がままあります。その際、画面全体にシャープネスをかけてしまったのでは目元もシャープになりますが、肌もザラついてしまいます。
そこで、Camera RAWでは[マスク]スライダーを使うことで、シャープネスを適用する範囲を調整することができます。[マスク]スライダーを右にドラッグするとエッジでない領域のシャープ量が減少します。
マスクスライダーが0の状態では、画像全体にシャープネスが適用されます。このスライダーを右にドラッグすることでエッジでない領域がマスクされ、シャープ処理から除外されます。これによって、シャープネスをかけたい部分とそうでない部分を切り分けて適切なシャープネス処理を行うことが出来ます。
MacであればOptionキー、WindowsであればAltキーを押しながらドラッグすると画面がグレースケールになり、ドラッグしているスライダーの影響を受けるエリアが白線としてプレビューエリアに表示されます。
Optionキー(Altキー)を押しながら「マスク」のスライダーを左にドラッグし、マスクが0に設定されていると画面は真っ白になります。これは画面全域にシャープ処理が行なわれているということです。
これを右にドラッグすると、シャープが適用されない領域がプレビュー内で黒く表示されます。白線として見える部分はこの画像の中でシャープが適用される部分です。これによって、輪郭部分にはシャープネスをかけ、肌や背景ボケなどにはシャープネスを適用させなない(マスクをかける)ということを行った時などに非常に分かりやすくなります。
■手順14.「ノイズ軽減」でノイズを取り除く。
次にノイズを軽減させます。露出やシャープネスの調整を先に行わないと、先にノイズを消しても露出を変えたり、シャープネスをかけた時点でノイズの目立ち方が変わってしまうためノイズ低減処理をシャープネスの後にもってくるというわけです。
ノイズには白黒のザラつきのように見える輝度ノイズと、赤や緑の斑点のように見えるカラーノイズがあります。片方だけでも構いませんし、両方でも構いません。ノイズは軽減させるほど解像感が落ちてしまう原因にもなるため、徹底的にノイズを軽減させるというよりも、解像感と低ノイズのバランスをとりつつ調整することが大切です。
「輝度のディティール」はしきい値を設定します。この数値を上げるとディテールは保持されますがノイズ軽減の適用範囲は弱まり、値を下げるとノイズ軽減の適用範囲広がりますが、ディティールが失われやすくなります。
「輝度のコントラスト」は値を上げるとコントラストは保持され、画像のコントラストは残りますがスムーズさが失われやすくなります。逆に値を下げると輝点のコントラストを下げるためスムーズになりますが、コントラストが失われる場合があります。
■手順15.「段階フィルター」や「円形フィルター」で部分的に補正する。
今までのステップで全体の補正かなりの部分が完了したと思います。しかし部分的にここだけもう少し明るくしたい・暗くしたい、あるいは色味を部分的に変えたいといったことがある場合の補正方法が幾つかあります。
その一つが段階フィルターです。段階フィルターはカーテンのような補正フィルターで、ある点から引っ張ると、その引っ張った始点から終点までの間を、段階的に指定した補正を加えてくれます。
段階フィルターは、始点側は強く、終点側に向かうにしたがって効果を薄くするフィルターですから、フィルター効果の効いている部分とそうでない部分のつなぎ目が自然につながるのが特徴です。
例えば従来であればハーフNDフィルターを使っていたような空と海の露出差を補正するような場合などにも、段階フィルターは非常に有効なフィルターです。
段階フィルターを使用する際には、段階フィルターの調整スライダーの下に表示される「オーバーレイ」や「マスク」にチェックを入れておくと補正効果の適用範囲が分かりやすく判別する事が出来るので利用してみましょう。
「段階フィルター」と共に指定した範囲を補正するフィルターとして「円形フィルター」があります。
円形フィルターは円形に指定した範囲に調整を加えるもので、例えば逆光で暗くなった人物だけをざっくりと指定して明るく持ち上げるといった事が簡単に出来ます。
円形フィルターは周辺部にいくに従って効果が薄まるため、段階フィルターと同じく指定範囲外とのつながりが不自然になるのを防いでくれます。ざっくりした範囲を補正するには非常に有効なフィルターです。こちらもオーバーレイやマスクといった適用範囲を判別しやすくする機能がありますから使ってみると良いでしょう。
■手順16.「補正ブラシ」で細部をレタッチする。
いよいよRAW現像最後の行程です。
「段階フィルター」や「円形フィルター」といった範囲指定補正フィルターに加えて、Camera RAWやLightroomには「補正ブラシ」というものがあります。
「補正ブラシ」はブラシで指定した部分を補正することが出来るため、よりきめ細かい部分補正を行う事が可能です。
例えば人物の目やまつ毛だけにシャープネスをかける、指輪のハイライト部分だけを明るくするといった非常に細かい補正をかける事が出来ますから、部分的に露出や色味、シャープネスなどさまざまな補正を行う事が可能です。
■手順17.「画像を保存」しレタッチを終了する。
以上の手順でRAW現像は完了です。Camera RAWやLightroomなどのRAW現像ソフトで現像処理を行い、より高度なレタッチを必要とする場合はPhotoshopでレタッチを行うわけですが、とりあえずRAW現像の工程はこれにて終了です。
一旦JPEGなどで書き出しを行い画像を保存しましょう。
- 画像を書き出すフォルダを選択
- ファイル名を確認
- ファイル形式を選択
- 画質を設定する
- 画像サイズを変更する場合は変更する
- 「保存」を押して保存する
- 右下の「完了」を押してCamera RAWを終了する
以上でRAW現像は終了です。
■レタッチの道は果てし無く
RAW現像やレタッチというとデジタルカメラならではの工程のようなイメージを持ってしまいがちですが、フィルム時代でも現像工程は一通りでは無く様々な現像テクニックがありました。
また印刷時にも多様な印刷手法があり、プリントされた写真そのものに手を加える場合さえありました。
そう考えればデジタルであろうがフィルムであろうが、撮影後の工程は最終的な写真の仕上がりを大きく左右します。
フィルム時代から写真撮影を行っている方の中には、デジタルカメラのレタッチに対して「写真は真実を写すから写真、加工されたデジタル写真は写真ではない」という論調で否定的な方もおられますが、現実にはフィルム時代でも写真家やプロカメラマンは現像処理や印刷工程でさまざまな手を加えて作品を仕上げてきました。
また余談ですが、ご承知のように写真は海外から日本に伝わったもので、「写真」のことを英語では「Photograph」と呼びます。このPhotographの語源は、Photoが「光の」、Graphは「描く」という意味です。
つまりPhotographというのは「真実を写す」という意味ではなく、「光で描く」という言葉から来ています。
光で描くアートと考えればどのようなレタッチも写真表現の一つと言えると思います。
報道写真のような特殊な写真は別としても、芸術写真に「やっていはいけないレタッチ」というものはないのではないかと私は思います。
とは言え幾らレタッチ技術が進歩したとしても撮影時に手を抜けるわけでは無く、撮影時にしっかりと仕上がりのイメージに近い形に撮影しておけばその後のレタッチも楽になりますし、また写真としての完成度も高めることが出来ます。
撮影にもレタッチにも頑張って、より良い作品を目指して頂ければと思います。
では皆さん、良いお年をお迎えくださいませ!
Reported by 正隆