今回のCP+も色々なメーカーのブースを回りましたが、中でも良くできていると感激したのがタムロンの新レンズ、SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)とSP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)でした。
というわけで、今回改めてこのうちの1本、SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)を実際に触ってみたレビューをしたいと思います。
■迷いなく合焦するオートフォーカス
まずはSP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)を触ってみた感想ですが、まずオートフォーカスが速い!
従来のタムロンレンズはオートフォーカスの速さはお世辞にも他メーカーと比べて自慢出来るものではありませんでしたが、今回このSP 85mm F/1.8 Di VC USDはサクサク合焦します。
ピント位置が大きく変わった場合も迷いなく一発で合焦するため、これならスナップやポートレートでもストレスなく使用出来ると思います。
超音波モーターアクチュエーターは、減速ギアが必要ないため、駆動ギア特有の現象であるバックラッシュ(本来の停止位置に対して逆転する現象)がなくなり、高速動作を合焦直前まで続けられるようになります。
ただ超音波モーターを使えばなんでもオートフォーカスが速くなるというわけではなく、オートフォーカスのスピードにはAF動作アルゴリズムも大きな影響を及ぼします。
同時発表されたSP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)も前モデルから劇的にピント合わせが速くなり、またピント位置が大きく変わっても迷わなくなっていました。
このへんタムロンはどうすれば迷いにくく素早く合焦させられるかというコツを掴んだということなのでしょう。
また、超音波モーター駆動ですから、当然フルタイムマニュアルフォーカスを実現しており、AF撮影時でもフォーカスリングを回すだけでMFによるピントの微調整を行えます。
■改善されたスイッチと上質感のあるデザイン
加えてAF/MFの切り替えスイッチも程よいクリック感になっており、硬すぎず軽すぎず、カメラバッグの中で勝手に動いてしまうということも減りそうです。
スイッチそのもののデザインも良くなっています。またフォーカスリングの作動感も向上しおり、AFレンズとしてはマニュアルフォーカス時の感触も悪くありません。
鏡筒の質感も上々で、ルミナスゴールドのブランドリングは色温度の高い人工光源下のせいか会場ではシルバーに見えました。スベスベの鏡筒は現代的で私は好きです。
■シャープさとボケ味を両立した画質
肝心の画質ですが、SP 85mm F/1.8 Di VC USDは等倍に拡大して見ても、開放からピント面はかなりシャープで、F1.8から十分に使用出来る写りでした。
今回SP 85mm F/1.8 Di VC USDはLD(Low Dispersion)ガラスと、XLD(eXtra Low Dispersion)ガラスを採用した9群13枚というレンズ構成になっており、これは85mmレンズとしてはかなり贅沢なレンズ構成です。
ちなみにニコン・キヤノン用フルサイズ対応の85mmレンズとしては以下のようなものがあります。
- Nikon:AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G(9群9枚)
- Nikon:AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G(9群10枚)
- Canon:EF85mm F1.8 USM(7群9枚)
- Canon:EF85mm F1.2L II USM(7群8枚)
- SIGMA:85mm F1.4 EX DG HSM(8群11枚)
- ZEISS:Otus 1.4/85(9群11枚)
- ZEISS:Milvus 1.4/85(9群11枚)
- ZEISS:Planar T* 1.4/85(5群6枚)
必ずしもレンズ構成枚数=画質ではありませんが、SP 85mm F/1.8 Di VC USD(9群13枚)が如何に贅沢なレンズ構成かはお分り頂けると思います。
ポートレートレンズとしては気になるボケ味ですが、タムロンの定評あるボケ味は相変わらずで、開放からシャープなピント面とスッキリとしたボケ味を見事に両立させており、試写した限り、まさに理想的なポートレートレンズと呼べる写りでした。
ボケ方も被写界深度を外れた瞬間急激にボケるのではなく自然に溶け込むようになだらかにボケていくため、人物のクローズアップ撮影などでも不自然さを感じさせることは少ないでしょう。
MTF曲線を見てみましょう、全体的に非常にコントラストが高く解像力に優れたレンズであることが伺えます。像高方向を見てみても、周辺部でも画質の落ち込みが少ないことが分かります。またサジタル方向とメリジオナル方向の曲線の乖離が殆ど見られず、ボケ味の良さの裏付けと言えるでしょう。
最短撮影距離は80cmということで、先に発売されたSP 35mm F/1.8 Di VC USDとSP 45mm F/1.8 Di VC USDがかなり寄れて撮影倍率が大きいレンズだっただけに期待としてはもう少しちょっと寄れると尚良かったと思います。
ただこのあたりは他社製品も最短撮影距離80〜85cmの範囲となっており、SP 85mm F/1.8 Di VC USDが他製品よりも寄れないという訳ではありません。
■SP 85mm F/1.8 Di VC USDの実写作例
CP+会場内には花などが設置してありましたが、当日はAPS-C機しか持ち込まなかったので、TAMRON公式サイトから作例を引用掲載しておきます。
自然で滑らかなボケ味。
点光源も綺麗ですね。
キラキラしたアクセサリーですが色収差もほとんど見られません。
輪郭に向かうにしたがってなだらかにアウトフォーカスになっていく自然なボケ味。
■逆光耐性はいかほどか?
ポートレートでは逆光・半逆光といったレンズにとっては厳しい条件で撮影する場合もままありますが、SP 85mm F/1.8 Di VC USDはには、ナノ粒子膜によるeBAND(Extended Bandwidth & Angular-Dependency)コーティングと従来のマルチコーティングを用いたBBAR(Broad-Band Anti-Reflection)コーティングを組み合わせることでゴースト、フレアーの発生を大幅に抑制しているとのこと。
室内でのテストではありましたが、強いナトリウム灯の光源下でもクリアな良い写りを確認することが出来、フレアによるコントラストの低下も見られませんでした。
■タフな撮影環境でも安心の簡易防滴と便利な防汚コート
SP 85mm F/1.8 Di VC USDにはARコーティングだけでなく、撥水・撥油の防汚コートもされているとのこと。
汚れが付きにくく、また付着しても簡単に落とせるのは屋外で知らず知らずのうちに雨粒などがレンズに当たった際にも後が残りにくく安心です。
雨粒は撮影中は気付きにくく、撮影後に等倍画像を見た時に気づくといったことになりがちですから防汚コートがされているのは嬉しい部分です。
またカメラバッグから取り出す際にうっかり指で触った場合にも指紋が付きにくいメリットがあります。
またSP 85mm F/1.8 Di VC USDは簡易防塵防滴構造となっている点も見逃せません。85mmレンズを酷使するポートレートカメラマンに撮っても安心して使用出来るでしょう。
■ピント微調整やファームアップデート用のTAMRON TAP-in Consoleも登場
別売でTAMRON TAP-in Console(タップ イン・コンソール)が発売されます。
シグマからもSIGMA USB DOCKが既に発売されていますが、このTAMRON TAP-in Consoleも基本的には同じような使用が想定されており、TAMRON TAP-in Consoleをレンズのマウントに 取り付けてPCにUSB接続することで、レンズファームウェアアップデートや、オートフォー カスの合焦位置の微調整、手振れ補正の挙動方式の選択などのカスタマイズが可能になるとのです。
特にレンズ側のピント調整は従来はサービスセンターに持ち込むなどの手間がかかり、またそれでも納得のいく結果が得られない場合もありました。
正確なピント調整は正しい知識が必要であるため、ユーザー側で行うのは却ってピント不良を増大してしまうリスクもあり自己責任の部分もありますが、やはりサービスセンターまで持ち込む必要がないというのは大きなメリットと言えるでしょう。
■ニコン用は電磁絞り採用
ちなみにNikon用には電磁絞りを採用しており、従来の羽絞りと比較してより高精度な露出制御を行えるということです。
■SP 85mm F/1.8 Di VC USDは買いか?
瞬く間に新SPシリーズを充実させていくタムロンですが、今回発表された2本を加えてルミナスゴールドのブランドリングを採用したレンズは4本となりました。
- SP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)
- SP 45mm F/1.8 Di VC USD(Model F013)
- SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)
- SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD(Model F017)
実際触ってみて、今回発表された2本の中望遠レンズとマクロレンズも非常にクオリティが高く、良くない部分も挙げたかったのですが、性能だけでなく従来のタムロンレンズに対する不満点をことごとく払拭しており、ユーザーの声を良く非常に良く反映させていると感じました。
SP 85mm F/1.8 Di VC USDとSP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USDに関しても、高い評価を受けるであろうことは想像に難くありません。
今回にとって新しい試みとも言えるSP 85mm F/1.8 Di VC USDを取り上げましたが、タムロン伝統のレンズとも言えるSP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USDに関してもSP 85mm F/1.8 Di VC USDに勝るとも劣らぬ出来となっていましたから、マクロ撮影主体の方やマクロ+ポートレートという方にもオススメのレンズとなっています。
画像:TAMRON
Reported by 正隆