若者の自動車離れも話題になる昨今、撮影地まで電車などで移動するような場合、三脚の持ち運びは「他のお客さんにぶつけてしまわないだろうか?」あるいは、「混雑した車内で邪魔にならないだろうか?」といった理由から気がひける方も多いのではないでしょうか?
また、ミラーレスカメラに代表されるような小型軽量なカメラを使用している場合、折角のカメラの携帯性を犠牲にしてしまうという理由から三脚を持ち歩かないという人も多いと思います。
そうした要因もあり、近年ではいわゆるトラベラー三脚と呼ばれるタイプの脚部を折り返すことで全高(三脚の脚を目一杯伸ばして設置した状態のこと)の割に、劇的な格納時の縮長(持ち運ぶために脚部を縮めて脚を折り返した状態)の短さを実現している携帯性の高い三脚が人気となっています。
加えて軽量化も求める向きから、カーボンパイプを使用することで軽量化を果たした、カーボントラベラー三脚の需要が増えています。
【目次】
- カーボントラベラー三脚の誕生
- カーボントラベラー三脚の生みの親、ジッツオについて
- ジッツオトラベラー三脚の基本スペック
- ジッツオのラインナップから見るトラベラー三脚のスペックの見方
- トラベラー三脚を選ぶ時のスペックの見方と注意点
- スペックの見方
- トラベラー三脚の格納状態と設置状態
- トラベラー三脚格納縮長時
- トラベラー三脚全高時
- 三脚を選ぶ際の耐荷重の注意点
- トラベラー三脚の耐荷重について
- ナットロックの優秀性
- ナットロックの操作性
- ナットロックを素早く操作するコツ
- 脚のロック・アンロックはどの段からでも大丈夫
- ナットロックのメリット、レバーロックのメリット
- カーボン脚の魅力
- カーボン脚のメリットとデメリット
- ウレタングリップは必要か不要か?
- 高品質でしっかりとした作り
- 高級感と品質に拘りぬいた作り
- 三脚によってはウェイトをかけるためのフックが付属
- フックが付いているタイプのトラベラー三脚の使い方
- フックにかけるウェイトは専用品でなくても大丈夫
- 一脚としても使えるトラベラー三脚もある
- 一脚として使えるトラベラー三脚もある
- 一脚の使い所とメリット
- 正直一脚を使うなら専用品を買った方が良い
- ジッツオ自由雲台の魅力
- GH1382QDとGH1382TQD
- ジッツオ自由雲台と世界標準となったアルカスイス互換プレート
- 結局カメラも三脚も可動部分が大切
- 自由雲台(ボール雲台)のメインノブの重要性
- メインロックノブの感触に注目しよう
- 水準器(レベラー)は今でもロマン
- 電子水準器の普及と水準器のロマン
- 三脚を使う意義は沢山ある
- 三脚を使えば最高画質を引き出せる
- 三脚を使うことで楽になるタイムラプス撮影
- 変わりゆく世情と、変わらない三脚の価値
- カーボントラベラー三脚の時代が来た
そこで今回は、そうした現代人の撮影スタイルにピッタリのカーボントラベラー三脚について、カーボントラベラー三脚の元祖にして最高峰であるジッツオのトラベラー三脚を例に、その魅力と選び方について解説させて頂きたいと思います。
■カーボントラベラー三脚の誕生
カーボントラベラー三脚の生みの親、ジッツオについて
トラベラー三脚の本題に入る前に、まずはジッツオというメーカーについて簡単に触れておきたいと思います。
写真愛好家である皆さんであればジッツオは既にご存知のこととは思いますが、ジッツオは三脚、一脚、雲台などを製造・販売しているメーカーで、カーボン三脚を発明したのもジッツオですし、トラベラー三脚もジッツオによって発明されました。
他の三脚メーカーと比較して高価ではあるものの、その比類なき作りは世界中のプロフェッショナルフォトグラファー、及びハイアマチュアからトラベラー三脚の最高峰として長い間評価されています。
現在のブランドとしてもその性能に関しても、ジッツオは写真愛好家、カメラマニア、三脚マニアに完全に定着しており、世界中のあらゆる三脚メーカーの目標であり手本であると言っても過言ではないでしょう。
■ジッツオトラベラー三脚の基本スペック
ジッツオのラインナップから見るトラベラー三脚のスペックの見方
例えば、ジッツオには現在雲台付きのトラベラー三脚が4機種ラインナップされています。
大きい順に、
- トラベラー三脚GT2545T+雲台GH1382QDキット
- トラベラー三脚GT1545T+雲台GH1382TQDキット
- トラベラー三脚GT1555T+雲台GH1382TQDキット
- トラベラー三脚GT0545T+雲台GH1382TQDキット
といったラインナップとなっています。
ジッツオトラベラー三脚スペック比較表 | ||||
機種 | GK2545T-82QD | GK1555T-82TQD | GK1545T-82TQD | GK0545T-82TQD |
重量 | 1840g | 1420g | 1450g | 1290g |
素材 | カーボン | |||
耐荷重 | 12kg | 10kg | 10kg | 10kg |
最低高 | 33.2cm | 30.4cm | 32.4cm | 30.5cm |
全高 | 142.0cm | 131.5cm | 140.5cm | 116.5cm |
全伸高 | 165.5cm | 148.5cm | 163.5cm | 133.0cm |
格納高 | 44.5cm | 35.5cm | 42.5cm | 36.5cm |
脚径 | 18.2-32.9mm | 11.2-25.3mm | 14.7-25.3mm | 11.2-21.7mm |
脚段数 | 4 | 5 | 4 | 4 |
ベース直径 | 42mm | 35mm | 35mm | 35mm |
水準器 | 1個 | 1個 | 1個 | 1個 |
フリクションコントロール | あり | なし | なし | なし |
■トラベラー三脚を選ぶ時のスペックの見方と注意点
スペックの見方
重量:三脚の重さを表しており、軽いほど持ち運び時の疲労感が軽減されます。ただし、重量がない分風などによる揺れには弱くなります。
素材:主にアルミとカーボンがありますが、カーボンの方が軽量かつ寒冷地で触れた際にも冷たさを感じにくく、また振動の収まりが早いと言われています
耐荷重:機材を積載出来る最大重量を表記したものが耐荷重ですが、実際には耐荷重いっぱいまで機材を積載すると操作性が極端に悪くなり、レンズなどの重さによって雲台がお辞儀してしまうため参考程度にとどめましょう
最低高:三脚を最も低く設置した際の高さで、背の低い草花を撮影するような際には重要になります。
最低高は雲台部分の高さであり、これにカメラの高さが加わるため、実際にはもう少しカメラポジションは高くなります。
全高:全高はエレベーターやセンターポールを伸ばさない状態での三脚の最大の高さとなります。
つまり雲台付きの三脚であれば、普通に脚を目一杯伸ばして設置した時の雲台上部の高さが全高というわけです。
全伸高:エレベーターやーセンターポールを伸ばした時の三脚の最大時の高さを表しています。
トラベラーに関しては脚を反転している関係上、設置時はセンターポールが伸びており、全高の高さではなくこの全伸高の高さになっているものが多くなります。
格納高:格納高はトラベラー三脚の場合は脚を折り返した状態のことで、同クラスの一般的な三脚と比較すると、大幅に縮長を抑えコンパクトになるように設計されており、これこそがトラベラー三脚最大の魅力と言えるでしょう。
脚径:脚径は三脚の脚のパイプの太さを表しており、これが太いものほど安定性が高く、また思いカメラやレンズを積載することが可能です。
ただし、その分重くなるので、際限なく太ければ良いというものではありませんが、安易に軽量なものを選ぶのではなく、積載する機材に見合った三脚を選ぶようにしましょう。
脚段数:脚段数は三脚の段数を表しているもので、例えば4段三脚であれば、1本の脚は4本のパイプで構成され、1本の脚につき3箇所のロックを操作する必要があります。
これを3本の脚で行うのですから、合計で3×3で9箇所のロック機構を操作することになるため、段数が多いものほど設置や撤収時に時間を取られることになります。
また、段数が多いものは各脚のパイプのジョイント部分が増える上に、下に行くほどパイプが細くなるため、剛性が落ちるというデメリットもあります。
そうした意味では段数が少ない三脚の方が良いのですが、逆に段数が多いものほど脚を短く収納できるため、格納時の縮長を短くできるというメリットがあります。
つまり、段数が多いものほどコンパクトに運べますが、段数が少ないものほど設置や撤収が容易で安定性に優るというわけです。
ベース直径:ベース直径は雲台が付く部分の三脚の上面の直径で、それほど気にする必要はありませんが、三脚のベース径と雲台のベース径が大幅に異なるような場合、クラス違いの三脚と雲台を組み合わせている可能性が高いと考えられます。
三脚の性能というのは脚だけ良くても雲台だけ良くてもダメで、性能の低い方に引きずられるため、三脚に見合った雲台を、また雲台に見合った三脚を選ぶようにしましょう。
水準器:水準器は水平出しや垂直だしに使用するものですが、近年では電子水準器を搭載したカメラも増えているため、そうしたカメラを使用する場合には必ずしも必要ではありません。
しかし、パノラマ撮影を行なったり、またロマンという意味でも水準器(レベラー)は魅力的な部品と言えるでしょう。
フリクションコントロール:近年の自由雲台にはフリクションコントロールと呼ばれる雲台ボール部分の抵抗感を設定できるものが増えています。
フリクションコントロール機能を適切に使うことで、雲台のロックを緩めた際にも突然機材が倒れこむというリスクを減らし、また重いカメラやレンズを積載している際には機材を支える力を減らせるためフレーミング時の操作性も向上します。
■トラベラー三脚の格納状態と設置状態
トラベラー三脚格納縮長時
三種類の雲台付きトラベラー三脚のうち、最大のモデルはGK2545T-82QDで、このGK2545T-82QDの脚径は一番太い段でなんと32.9mmもあります。
GK2545T-82QDはとてもトラベラー三脚とは思えない堅牢性を誇りますが、1840gとトラベラー三脚としては重量級ですから、とにかく軽い物が良いという方はGK0545T-82TQD(1290g)を、携帯性と堅牢さのバランスを求める方はGK1545T-82TQD(1450g)を、さらに格納時のコンパクトさを求める方はGK1555T-82TQD(1420g)を選ばれると良いでしょう。
格納時の縮長さは全モデルで約35-45cm程度と、流石トラベラー三脚と言うだけのコンパクトさを実現しています。
トラベラー三脚全高時
GK2545T-82QDはセンターポールを伸ばさない状態の全高は142.0cm、センターポールを伸ばした時の全伸高は165.5cmとなっており、これにカメラの高さが加わるのですから、相当身長の高い方でも問題ないでしょう。
GK1555T-82TQDの全伸高は148.5cm、GK1545T-82TQDは163.5cm、GK0545T-82TQDの全伸高は133.0cmですが、人間の目は頭頂部に付いているわけではないので実際は三脚の全高は身長と同じ高さになる必要はないですし、昨今流行りのチルト液晶やバリアングル液晶で角度を変えられることも考えると、ある程度身長の高い方でもそれほど不自由なく使用することが出来るというわけです。
ただしエレベーターを伸ばせば伸ばすほど安定性は落ち、ブレにも弱くなるので、出来る限りエレベーターは控えめに引き出すことをおすすめします。
■三脚を選ぶ際の耐荷重の注意点
トラベラー三脚の耐荷重について
ジッツオトラベラー三脚の耐荷重は約10-12kgとなっていますが、これは機材を搭載する事が出来る最大の数値を表記しているもので、実際の動作を考えた適正重量を表すものではないという点に注意しましょう。
GK2545T-82QDの場合で載せる機材の総重量は3kg程度まで、GK1545T-82TQDとGK1555T-82TQDが2kg程度まで、GK0545T-82TQDが1kg程度までというのが個人的な印象です。
フルサイズ一眼レフ+望遠レンズも使うという方はGK2545T-82QD、一眼レフ中級機や重めのミラーレスカメラとう方はGK1555T-82TQD、軽量ミラーレスカメラや高級コンパクトデジタルカメラを使用したいと言う方はGK0545T-82TQDあたりが良いのではないでしょうか。
Carbon eXact(カーボンエグザクト)チューブは、ファイバー組成を最適化したジッツオ独自のはいモジュラスカーボンパイプで、従来のカーボンパイプよりも剛性と安定性をさらに高めています。
■ナットロックの優秀性
ナットロックの操作性
三脚で非常に重要な肝心の脚部の操作性ですが、ジッツオの三脚はナットロックタイプのロックを採用しています。
ナットロックを素早く操作するコツ
ご存知の方も多いと思いますが、敢えて解説させていただくと、ナットロックは不慣れな方だとグルグルと回してしまうためにレバーロックタイプと比較して設置に時間がかかってしまいます。
まして5段三脚であるGK1555T-82TQDやGK0545T-82TQDであれば、1本の脚に4箇所ロックがあるため、全体では4箇所×3本で12箇所のナットをグルグル回して緩め、再び12箇所をグルグル回してロックを締め付けることになります。
それだけでも面倒なのに、脚を折り返していたのでは設置に多くの時間がかかり、シャッターチャンスを逃してしまったり、三脚を使用することそのものが億劫になってしまうことでしょう。
そこではどうすれば良いのか?ということなのだが、実はナットロックの多くはグルグル回して緩めたり締め付ける必要はなく、ナットを握って手首をクイッと一捻りすることでロック・アンロックすることが出来ます。
特にジッツオのGロックはこの辺りが良くできているので、手の大きさにも寄りますが、慣れれば一本の脚の4箇所のナットを一度に握り、4つのナットを同時に捻ってアンロックすることが出来るようになります。
そうしてロックを解除したら、脚を伸ばし各段をやはり一捻りすることで締め付けるという動作をマスターすれば、ナットロックは劇的に素早く設置することが可能になります。
つまり、ある程度の練習は必要ですが、慣れればナットロックもレバーロックと比較して時間のかかるようなものでないというわけです。
脚のロック・アンロックはどの段からでも大丈夫
また、ジッツオの三脚の脚はいわゆる空転防止パイプの構造になっているため、ナットを締める際に上から順に緩めないといけないといった作法的なものはなく、脚を伸ばした後の締め付けも上からでも下からでもやりやすい方向からナットを回して構いません。
ナットロックのメリット、レバーロックのメリット
レバーロックタイプの三脚は、「ロックがされているかどうかが見た目で分かる」というメリットがあるため、ロックしたつもりが出来ておらず機材の重量で脚がズルズルと脚が縮まってしまうといったトラブルの心配が少ないものの、その代わり、長期間使用した場合、レバーロックはロック部分が緩くなって増し締めする必要が発生する場合があります。
ナットロックにはそうしたロック部分の緩みが発生しにくいため、個人的にはジッツオのようなナットロックの方が好みです。
■カーボン脚の魅力
カーボン脚のメリットとデメリット
カーボン三脚をアルミ三脚と比較した場合の最大のメリットはもちろんその軽さにあります。
しかし、滑りのよいアルミ三脚がアンロックするだけで自重で脚が伸びのに対して、アルミよりも滑りの悪いカーボン素材では、多くのカーボン三脚で通常ロックを緩めたのち脚を自発的に引っ張り出して伸ばす必要があります。
ウレタングリップは必要か不要か?
三脚の脚には持った時の寒さ・暑さを軽減するためにウレタングリップが巻かれている場合があります。
ウレタングリップが巻かれているタイプの三脚では、寒冷地や冬場の撮影でも冷たい思いをせずに快適に使えるというわけです。
ただし、ウレタングリップを巻くと各脚が太くなるため、特に脚を折り返す必要があるトラベラー三脚の格納状態では脚と脚の間に指が入り難くなり、折り返す際にややストレスを感じる場合があります。
また、そもそもカーボン素材はアルミほど熱伝導が高いわけではないため、アルミパイプほど暑さや寒さを感じません。
脚にウレタングリップを巻くのは、そうした指が脚の間に入りやすいかどうかだけでなく、重量増にも影響するため、「ウレタングリップを巻かない」、「一本だけに巻く」、「二本に巻く」、「三本全てに巻く」のどれにするべきかは、それぞれにメリットデメリットがありメーカーとしては悩ましい部分です。
個人的には、カーボン三脚の場合は特にウレタングリップの必要性は感じませんが、好みで選ばれても問題ありません。
もしもデフォルトでウレタングリップがあるトラベラー三脚で、ウレタングリップが不要、あるいは一本だけにあれば良いというような場合には、あくまで自己責任で、ウレタングリップを切って剥がしてしまうというのも一つの手でしょう。
■高品質でしっかりとした作り
高級感と品質に拘りぬいた作り
ジッツオのトラベラー三脚は、-30℃から+60℃の幅広い使用環境に対応しているとのことで、燃えるように熱い砂漠や、オーロラ撮影のような凍てつくような極地まで、あらゆる撮影地に対応できることでしょう。
またカーボン脚の柄の網目模様も細かく美しいものですが、実はカーボンの素材そのものにはああいうカーボン三脚にありがちな柄が入っているわけではなく、あの網目模様はカーボンパイプを使っていることを一目で分かるようにしている演出であるわけです。
もちろんトラベラー三脚にはアルミ脚のタイプもありますが、三脚はカメラやレンズよりも長く使える機材ですから、折角ならやはりカーボントラベラーをオススメしたいところです。
■三脚によってはウェイトをかけるためのフックが付属
フックが付いているタイプのトラベラー三脚の使い方
ジッツオのトラベラー三脚にはウェイトを吊るすためのフックは「付属していません」が、トラベラータイプの三脚でもウェイトを吊り下げるためのフックが付いているものもあるため、簡単にご紹介します。
このウェイトを吊るすためのフックは、センターポールの下部にあるもので、ここに重りとなるものを吊り下げることで三脚の安定性が増し、風で揺らされてしまうようなことをある程度軽減することが出来ます。
フックにかけるウェイトは専用品でなくても大丈夫
フック用の重りはなんでも良いので、必ずしも専用のウェイトのようなものでなくても構いません。
つまり、撮影地に行く途中でコンビニで買ったペットボトル飲料をレジ袋に入れてぶら下げておいても良いわけです。
一応写真業界にはライトスタンドなどの転倒防止用に使われる専用のウェイトもあるが、折角の軽量三脚であるから、わざわざウェイトを持ち歩かなくても、手持ちの物を利用して代用すると良いでしょう。
■一脚としても使えるトラベラー三脚もある
一脚として使えるトラベラー三脚もある
ジッツオの三脚にはそうした機能はありませんが、三脚の中には脚の一本を取り外すことで一脚としても使用することが出来るものもあります。
そして最近ではトラベラータイプの三脚でもそうしたものがあります。
一脚の使い所とメリット
一脚はカメラを固定しするという目的では三脚にかなり劣るものの、待機時間が長い撮影時などで機材を支えるというような目的であれば、一脚は三脚と比較して格段に軽く、また三脚よりも嵩張らないため躊躇なく持っていくことができる魅力があります。
もちろん一脚も適切に使用することで、機材の重量を支えるというだけでなく、三脚ほどではないにせよある程度の手ぶれ補正効果も期待できます。
正直一脚を使うなら専用品を買った方が良い
ただ、個人的にはこの三脚の脚の一本を外して一脚にできるというギミックは三脚の構造や剛性を犠牲にする部分もあるためあまり好きではなく、ジッツオのトラベラー三脚のような質実剛健さを重視した構造の方が好みです。
一脚は高品質のものでも三脚ほど高価ではありませんから、一脚を頻繁に使用されるような方は専用の一脚を購入することをお勧めします。
ちなみに私は一脚はジッツオのGM2542を2本所有していますが、これはお使いになる機材や使い方に合わせてお選びいください。
■ジッツオ自由雲台の魅力
GH1382QDとGH1382TQD
ジッツオのトラベラー三脚は、GK2545T-82QDにはGH1382QDが、GK1555T-82TQDとGK1545T-82TQDとGK0545T-82TQDにはGH1382TQDという自由雲台が付属しています。
GH1382QDには独立したパンロックノブはもちろん、ボールロックノブの内側にフリクションコントロールノブを備え、機材重量に合わせ最適な抵抗感の設定が行えるため、機材がその重量でお辞儀してしまうということを軽減することが可能です。
また、硬い金属部品で作られているため、ボールの動き非常に滑らかです。
かつてはジッツオは「脚は良いが雲台は良くない」と言われていましたが、現在のジッツオの雲台はその脚に相応しい一級品のものとなっています。
ジッツオ自由雲台と世界標準となったアルカスイス互換プレート
また、その動作感だけでなく、クイックリリースプレートのロックはスクリューノブタイプで、アルカスイス互換プレートが付属し、その他のジッツオDプロファイルプレートや、多くのアルカスイス互換カメラプレートを使用することが出来るようになっており、まさに世界標準にしっかりと対応していると言えるでしょう。
ただし、アルカスイス互換プレートと言っても、アリガタとアリミゾの角度や滑落防止ピンの干渉の関係で完全な互換性を実現しているわけではないので、ジッツオ以外の他社製カメラプレートを使用したいとう場合は事前に店頭などで確認しておくと良いでしょう。
GH1382TQDに関してはフリクションコントロール機能こそ付かないものの、より小型軽量なタイプとなっており、そのほかの部分に関してはGH1382QDと同等のものとなっています。
結局カメラも三脚も可動部分が大切
結局のところ、カメラでも三脚でも雲台でも同じなのですが、「最終的に機材の品質感は、可動部分で決まる」というのが私の考え方です。
ブランド名やデザインがどうでも良いとは言いませんが、幾らブランドが有名であったりデザインが素晴らしくても、実際動かしてみた時に、「何となくガタがある」とか、「妙に動きが渋い」とか、「変にスカスカと軽い」とか、そうした動きの不自然さがないことが重要で、スムーズにかつ人間の感覚と違和感なく動作するというのが工業製品の品質感を決める肝であると思います。
そうした観点からも、ジッツオの三脚や雲台は作りの良さを存分に感じさせるものだと思います。
■自由雲台(ボール雲台)のメインノブの重要性
メインロックノブの感触に注目しよう
ちなみに、自由雲台のメインノブには、
- かなり回さないと固定されないもの
- 少し回せば固定されるがノブ自体はかなり回り続けるもの
- 少し回せば固定されそこでガツンとノブの回転が止まるもの
などがあります。
この中で個人的に最もダメだと思うのは「かなり回さないと固定されないもの」なのですが、その理由はやはりロック・アンロックの度にかなり回すことになるので、操作が煩わしくなるという理由からです。
「少し回せば固定されるがノブ自体はかなり回り続けるもの」のメリットは慣れれば固定に時間がかからない事と、いきなり止まらないので感触がスムーズである事です。
逆にデメリットしては、慣れてないうちは「実際には固定されているのに本当に固定されているかどうか不安になるためについつい必要もないのにかなり回し続けることになる」という点であると思います。
最後に「少し回せば固定されそこでガツンとノブの回転が止まるもの」ですが、こちらのメリットはやはり素早い固定が可能である点と、加えてロックされたことが分かりやすいことでしょう。
それだけ聞くと「少し回せば固定されそこでガツンとノブの回転が止まるもの」が最も優れているように思いますが、車でいうと停止のたびに毎回急ブレーキを踏まれるようなものなので、なんども操作していると手が痛くなるとか、なんとなくガサツな感触がして不快感があるというデメリットもあります。
メインロックノブの滑り止めは金属とラバーのどちらが良いのか?
メインロックノブは金属製の凹凸やローレット加工によって滑り止め効果を付けているタイプと、ラバーを巻くことで滑り止め効果を実現しているタイプのものがあるが、金属タイプのデメリットは冬場や寒冷地で冷たいことで、ラバータイプのデメリットは使い込んでいくうちに伸びてしまう場合があることです。
個人的には指が痛くないので感触の柔らかいラバータイプの方が私は好みですが、この辺は好き好きでしょう。
■水準器(レベラー)は今でもロマン
電子水準器の普及と水準器のロマン
ジッツオのトラベラー三脚付属雲台にも水準器(レベラー)が付属しており、横位置撮影時やL型カメラプレートを使用しての縦位置撮影時でも水平を確認することが出来るようになっている。
昨今では電子水準器を内蔵したカメラも増えてきたため、雲台の水準器需要は減っているのでしょうが、、個人的にはやはり物理的な水準器の方がロマンがあると思います。
■三脚を使う意義は沢山ある
三脚を使えば最高画質を引き出せる
カメラの高感度性能が向上した現在でも、三脚を使用しての低感度撮影はカメラの最高画質を引き出すという意味で価値があります。
また暗所での手持ち撮影では水平の確認が難しいため、三脚を使用することで、安定して水平出しを行うことができるというのも三脚の魅力の一つでしょう。
三脚を使うことで楽になるタイムラプス撮影
タイムラプスは静止画のインターバル撮影を繋げて動画にしたもので、通常の静止画撮影や動画撮影と比較して撮影時間が極端に長くなる傾向にあります。
例えば秒間30コマの約1分30秒間のタイムラプスを撮影しようとすると、30コマ×90秒=2700であるから、2700コマの撮影が必要になります。
ということは、タイムラプスとしてはかなり短めの1秒間隔のインターバルに設定したとしても、2700コマを撮影するには約45分間の撮影が必要にになるわけです。
タイムラプスは1コマ1コマは厳密には同じフレーミングで無くても良いので、手持ちでも撮影は不可能ではありませんが、45分間カメラを把持し続けるのはかなりの苦行で、結局三脚を使用した方が遥かに楽というわけです。
刻一刻と景色の状態が変わる日の出・日の入りのシチュエーションなどは、特にタイムラプスは生えるもの。
夕焼けや朝焼けなど、画面に動きがあるシチュエーションでトラベラー三脚を使用してぜひタイムラプス撮影に挑戦して頂ければと思います。
■変わりゆく世情と、変わらない三脚の価値
カーボントラベラー三脚の時代が来た
近年はカメラの手ぶれ補正機能や高感度画質の進化によって、手ぶれに対する耐性は大幅に向上しました。
そうしたカメラ側の性能進化や、三脚を携帯する煩わしさ、また設置することに関するマナーの問題などから、三脚を携帯するのは敬遠される傾向にあるように思います。
しかしそうした点を考慮しても、暗所での低感度撮影の実現や、長秒露光による表現の幅、動画・タイムラプスの撮影、また待機時間の長い撮影時などの機材の保持など、三脚の価値が目減りしたわけではありません。
持ち運ぶ億劫さに負けて三脚を使用していない写真愛好家の方も、「本当は三脚を使った方がいいのは分かってるんだけどねぇ…」という方は多いのではないでしょうか?
そんな方にこそ使って欲しい、携帯性と高い安定性を誇るカーボントラベラー三脚、それがジッツオのGK1545T-82TQDやGK1555T-82TQDに代表されるカーボントラベラー三脚なのです。
画像:GITZO
Reported by 正隆