フィルム現像ファンの皆さんこんにちは。
デジタルカメラのRAW現像には皆さんももう既に慣れたことと思います。
しかし今回は、「敢えてこれからフィルムカメラを始めたい」という方のために、フィルム現像とはとどのようなもので、どのような種類があるのか?について、簡単にではありますが、一通りご紹介させて頂ければと思います。
■現像とは何か?
そもそも現像とは何か?
フィルムはネガフィルムでもリバーサルフィルム(ポジフィルム)でも、撮影しただけでは画像は現れません。
撮影は既に行なっているが、像を現出させていない状態のことを「潜像」と呼んでいます。
この潜像の状態のフィルムを薬品で処理することによって、撮影した像を現出させて「銀像」の状態にする一連の工程を、「現像」と呼んでいます。
現像工程は大きく分けて3つ
ちなみに現像といっても、この工程には大きく分けて、
- 現像:潜像の状態から撮影した像を現出させる
- 停止:現像工程を放置すると未露光の部分までは変質してしまうので、現像を停止する
- 定着:感光していない部分に残っている感光剤を取り除き像を固定化する
以上の3つの工程があるのですが、多くの場合これらの工程をまとめて「現像」と呼んでいます。
現像せずにフィルムを放置すると?「潜像退行」の問題
もし現像せずに撮影済みのフィルムを「潜像」の状態で放置しておくと、やがては潜像が薄くなってしまいます。
この潜像が薄くなってしまう現象を、「潜像退行」と呼んでいます。
そのため撮影後のフィルムはなるべく早く現像するように心がけましょう。
と言ってもこれは一刻を争うようなものではないので、「常識的な範囲で早め」という話であり、今日撮影して明日現像したのではもう手遅れといったようなものではありません。
しかし、撮影後にカメラの中で数ヶ月以上も放置することは、フィルムにとって好ましくありません。
またこの潜像退行は、高温多湿な環境ほど早く進んでしまうため、カメラにフィルムを入れたまま高温多湿な場所に放置するようなことは避けましょう。
■モノクロネガフィルムの現像
モノクロネガフィルムの現像の基本
モノクロネガフィルムの現像は、比較的簡単に出来るため、モノクロで撮影する方の中には自家現像を行っている方がプロアマ問わず多くいます。
モノクロネガフィルムの現像はダークバッグやダークボックスと呼ばれる暗所の中で、フィルムをリールに巻きつけ、現像タンクを使用して現像→停止→定着→水洗したち、乾燥させて切り分けるといった作業を行います。
自家現像のやり方の基本
つまり、モノクロネガフィルムの典型的な自家現像のパターンとしては、
- フィルムをダークバッグ内でパトローネなどから取り出す
- フィルムをダークバッグ内でリールに巻きつけて現像タンクに入れる
- 現像タンクをダークバッグから出し、現像液を入れて潜像を銀像の状態にする
- 現像が進行し過ぎないように現像液を停止液によって中和(あるいは洗浄)して、現像液の活動を止める
- 定着液を使用して残留した感光剤を取り除き、画像を安定させる
- 水洗して定着液を洗い流す
- フィルムを現像タンクから取り出してフィルムクリップで吊るし、濡れたフィルム用スポンジを使用して水滴を落とす
- 埃が付かないように乾燥させる
というような工程が、モノクロネガフィルムの自家現像の典型的なパターンです。
自家製像に必要な道具
モノクロネガフィルムの自家現像には、
などが必要になりますが、カメラやレンズと比較して各道具の価格はそれほどではないので、揃えるのはさほど難しくありません。
自家現像でもDPEに出して構わない
ただ、自家現像はそれなりに面倒な作業でもあるため、「道具を買ったはいいが、結局数回しか使わなかった」というような方も沢山おられますから、どこかの写真教室などで、モノクロネガ現像を体験させてもらってから道具を揃えるべきか考えるのも良いでしょうし、自家現像が面倒そうであれば、DPE店に出して現像して貰ってももちろん構いません。
■カラーネガフィルムの現像
カラーネガフィルムの現像の基本
カラーネガフィルムの現像の過程は、簡単に言うと、
- 発色現像
- 漂白
- 定着
- 水洗
といったものです。
DPE店では現像機によって現像を行っていますが、現像のプロセスそのものは、(プリント時間を除外すると)10分程度で可能です。
しかし、勿論現像機に通すまでの工程や、プリントの工程が必要であるため、早くても30分程度は作業時間をもらっているところがほとんどであり、さらに順番待ちがあるわけですから、あまりDPE店に無理な早さを要求することは避けましょう。
現在のDPE店の現場はわかりませんが、私が昔DPE店で働いていた時には、透明の下敷きのようなシートにビニールテープでフィルムの端を止めて、現像機に流すことで、現像から乾燥までの工程を自動で現像機が行ってくれていました。
ネガフィルムの現像
ネガカラーフィルムは現像の後にフィルムを見ると、潜像の状態から像が見えているわけですが、像の明暗が反転しており、茶色の状態で色も付いていないため、そのままで鑑賞できるようなものではありません、また、ある程度の経験がないと適切に撮影されているかどうかは、フィルムを見ただけでは良くわかりません。
そのため、ネガカラーフィルムはプリントして初めて鑑賞できると言っても良いでしょう。
そこで、どのように写っているか?を確認するための「インデックスプリント」と呼ばれる、DPE店では、サムネイル状のプリントを頼むことも可能です。
カラーネガフィルムの現像処理
カラーネガフィルムの代表的な現像処理には、
- C-41プロセス:コダック
- CN-16プロセス:富士フイルム
- CNK-4プロセス:コニカミノルタ
- AP-70プロセス:アグファ
などがあります。
それぞれは厳密には異なる現像方式なのですが、実際には、例えばコダックのフィルムを富士フィルムのCN-16プロセスで現像しても、コダックのC-41プロセスで現像を行ったと場合とほとんど同じような仕上がりとなり、大した問題は起きません。
■カラーリバーサルフィルムの現像
カラーリバーサルフィルム(ポジフィルム)の現像方法
カラーリバーサルフィルム(ポジフィルム)は、ネガカラーフィルムとは異なり、現像することで、プリントと同じような画像を見ることが出来ます。
カラーリバーサルフィルムの現像は「反転現像」とも呼ばれ、フィルムを普通に現像するとネガ像になるのですが、それをさらに反転することでポジ像を得ることができます。
反転現像の工程が加わる分、カネーネガフィルムの現像よりもカラーリバーサルフィルムの現像工程はより複雑で、自家現像される方は非常に少数となり、DPE店でも店舗で現像処理は行っていない場合がほとんどで、富士フィルムなどに送って現像するため、通常のカラーネガフィルムの現像よりも日数がかかるのが一般的です。
カラーリバーサルフィルムの代表的な現像には、
- E-6プロセス:コダック
- CR-56プロセス:富士フイルム
- AP-44プロセス:アグファ
などがあります。
カラーリバーサルフィルムの現像には外式と内式がある
カラーリバーサルフィルムには、感光乳剤中に色素を形成するカプラーを予め混入した「内式カラーリバーサルフィルム」と、発色現像液中にカプラーを混入して処理する「外式リバーサルフィルム」があります。
外式リバサーフィルムの代表的なものはコダックが製造していましたが、現在のカラーリバーサルフィルムはほぼ全てが内式リバーサルフィルムとなっています。
内式カラーリバーサルフィルムの現像プロセス
内式カラーリバーサルフィルムの現像プロセスとしては、コダックのE-6や富士フイルムのCR-56などがあり、現像プロセスとしてはかなり似ています。
外式カラーリバーサルフィルムの現像プロセス
外式リバーサルフィルムは現在では見かけることがないため、気にする必要がないと言えばないのですが、専用の現像システムを必要とし、その工程も内式リバーサルフィルムよりも複雑であったため、現像にはより専門的な知識を必要としました。
■現像の仕上げに関する種類
増感現像/減感現像
「増感現像」は、例えば「露出アンダーで撮影されたフィルムを、現像時に増感現像を行うことで、適正な露出を得る」というものです。
つまり増感現像とは、実際に撮影された時の露出よりも仕上がりを明るく現像して仕上げるというものです。
プリント時に明るめにプリントすることも可能ですが、露出アンダーで撮影されていた場合、プリント時に露出を上げるよりも、現像時に増感現像を行った方が仕上がりが良くなる傾向にあります。
「減感現像」はその名の通り「増感現像」の逆で、実際に撮影された時の露出設定よりも、露出アンダーとなるように現像する方法です。
フィルムによって増感現像・減感現像に対する耐性は異なるものの、基本的に「減感が-1段程度まで、増感が+2段程度まで」を許容範囲としているフィルムが多いと考えて良いでしょう。
切り現(キリゲン)
切り現とは「切り現像」のことで、フィルムの一部をカットして現像する現像方法のことです。
一部のコマだけを必要に応じて増感現像したり減感現像したり、増感現像や減感現像した時の露出イメージの確認などのために行います。
ただし、一般的なDPE店などで受け付けていない場合が多く、プロラボなどで依頼することになります。
と言うことで、今回はさまざまな種類のフィルム現像について、簡単にではありますが一通り紹介させて頂きました。ではまた!
画像:Amazon
Reported by 正隆