報道写真ファンの皆さんこんにちは。
「世界報道写真展(WORLD PRESS PHOTO)」は、世界で最も有名な報道写真のコンテストであり、1955年にオランダのアムステルダムで世界報道写真財団が発足したことを機に、翌年から始まったドキュメンタリー、報道写真の世界的展覧会です。
世界報道写真コンテストは、毎年、1-2月にかけて前年に撮影された写真を対象に、十数人からなる国際審査員団によって入賞作品を選出し、「世界報道写真展」として、世界中の約100会場で展示されます。
第61回を迎える2018年の世界報道写真展には、125カ国の地域から、4,548人のフォトグラファーが参加、73,044点の作品の応募がありました。
そして、全8部門において、22カ国、42人のフォトグラファーの作品が受賞しましたが、スペインの有名カメラサイトPHOTOLARIがそれら受賞作品129作品のうち、カメラ情報が記されていた97作品のデータを対象に使用機材の調査を行いました。
その結果、受賞作品の半数以上がニコン製のデジタル一眼レフで撮影されているということが判明しました。
ちなみに、この記事のアイキャッチ画像となっている大賞作品「ベネズエラの危機」も、ニコンのフラッグシップ機D4Sによって撮影されたものです。
そこで今回は、この調査の詳細と共に、果たして世界の傑作報道写真はどんなカメラを使って撮影されているのか?をご紹介したいと思います。
■ニコンとキヤノンがトップ10を独占
最も使われているカメラはD5、D810、EOS 5D Mark III
使用されている具体的な機種を見ると、上位10機種は、
- D5(11作品)
- D810(11作品)
- EOS 5D Mark III(11作品)
- D800E(7作品)
- EOS 5D Mark IV(7作品)
- D4S(6作品)
- D700(6作品)
- EOS 5D Mark II(5作品)
- D4(4作品)
- EOS 6D(4作品)
となっています。
D5が1位である点は流石に「報道のために作られたカメラ」の面目躍如と言えるでしょう。
2位と4位に高画素機のD810とD800Eがランクインしているのはやや意外な気もしますが、それだけ報道カメラマンにニコンユーザーが多いと言う事なのかもしれません。
3位と5位には、あらゆる撮影ジャンルの「プロ機の定番カメラ」として活躍している、EOS 5D Mark IIIとEOS 5D Mark IVがランクインしています。
上位10機種のうち、ニコンが6機種、キヤノンが4機種ということで、やはりこの2社の報道カメラとしての地位が圧倒的であることが伺い知れます。
ミラーレスやレンジファインダー、さらにドローンも使われている
しかし、11位にはα7R II、12位にはX100S、13位にはX-T1とミラーレスも立て続けにランクインしていますし、16位にはレンジファインダー機のLEICA M10も入っています。
α7S IIではなくα7R IIというのは意外な気もしますが、それだけα7R IIの性能は報道カメラマンにとっても魅力的であるということなのでしょう。
また、LEICA M10は驚きというか、LEICA SLまで1作品とはいえ受賞しておりこれも驚きです。
確かにM型ライカが報道カメラマンに人気があった時代もありましたが、冷静に考えれて現代においてライカのカメラが報道向きかどうかは微妙なところでしょう。
しかしそれが信頼性に対するものなのか、ブランドなのか、いずれにせよ、ライカの理屈を超えた神通力のようなものには只々驚かされるばかりです。
また、2017年に撮影された写真であることを考えると、最新機種から旧機種まで、また一眼レフ、ミラーレス、レンジファインダー、コンパクト、ドローンまで、報道カメラマンが新旧様々な機種、そして様々なシステムのカメラを愛用していることが分かります。
■「報道のニコン」は健在。受賞作品の半数以上を占める
5割以上がニコン、3割がキヤノン、その他メーカーが2割
メーカー別のシェアを比較すると、ニコンが51.5%と受賞作品の半数以上を占める驚異的な強さを見せており、「報道のニコン」が今も健在であることが伺い知れます。
またキヤノンも約3割となっており、昨年のWORLD PRESS PHOTO 2017ではキヤノン機が最多であったため、やはり「報道写真の分野においても、キヤノンを使用しているフォトグラファーは多い」ということもわかります。
続いて驚くべきことに?と言っては失礼かも知れませんが、受賞作品のシェア3位は富士フイルムとなっています。具体的な理由は分かりませんが、報道カメラマンの感性に合っているのかも知れません。
報道カメラマンは高感度画質からトリミング耐性重視に?
4位には現在その技術力でカメラ業界をリードするソニー、5位にはペンタックスとDJIがランクインしていますが、ペンタックスの使用カメラはK-1ではなく、645Zというのは正直理解に苦しみます。
しかし、機種別の2位と4位がD810やD800Eであること、またミラーレスでの最高位の11位にランクインしているのがα7R IIであることを考えると、現代のカメラでは、「報道カメラ=高感度重視」とは必ずしも言えず、高感度性能はどれも十分と判断して、それよりもトリミング耐性を重視する傾向にあるのかもしれませんが、本当のところは不明です。
■相変わらず一眼レフが圧倒、しかしミラーレスも確実に増えている
8割以上が一眼レフ、約1割がミラーレス
カメラシステムとしてのシェアを見ると、一眼レフが83.5%と圧倒しており、現在もプロカメラマンのシステムの主流が一眼レフであるということ、特に報道やドキュメンタリーに関しては圧倒的に強い、ということが伺い知れます。
また、5.2%は一眼レフとミラーレス以外となっており、これはレンジファインダーカメラ、コンパクトデジタルカメラ、ドローンなどです。
レンジファインダーカメラが今も報道の第一線で使われているということにも驚かされますが、一方でドローンも増加しているというのは実に現代的です。
昨年と比較すると倍増しているミラーレス
2018年の受賞作品のうち、ミラーレスカメラが占めるシェアは11.3%と一眼レフにはまだまだ及んでいません。
しかし、実は2017年の同じ調査では、ミラーレスのシェアは僅か5.55%でした。
そう考えると、2018年の今回の調査では11.3%とミラーレスはそのシェアを約2倍に伸ばしています。
またその結果、一眼レフのシェアは2017年が88.8%から83.5%とシェアを5.3%下げており、「報道カメラマンの世界でもミラーレスの比率が徐々に増えている」ということが分かります。
また同時に、こうした世界トップレベルの報道写真の世界においても、いずれiPhoneなどのスマートフォンで撮影された作品が増えてくるのかも知れません。
参考:PHOTOLARI
画像:PHOTOLARI,WORLD PRESS PHOTO
Reported by 正隆