富士フイルム、パナソニック、オリンパス、2番手グループの戦略は?

LUMIX S1R

富士フイルム、オリンパス、パナソニックファンの皆さんこんにちは。

現在レンズ交換式カメラ世界シェアのトップ3はキヤノン・ニコン・ソニーの順ですが、この3社の合計シェアは全体の89.5%にも及びます。

残りの約10%のシェアをその他のメーカーが奪い合っているわけですが、言わば2番手グループとも言える富士フイルム、オリンパス、パナソニックの最近の動向について考えてみたいと思います。

■富士フイルム


中判ミラーレスに手を出したの結果的には好判断だった

富士フイルムは現在APS-CフォーマットのXシリーズと、中判ミラーレスのGFXシリーズの二本立てとなっています。

現在各メーカーが挙ってフルサイズミラーレスに参入していますが、富士フイルムが中判ミラーレスとAPS-Cミラーレスの2マウントというのは、現在の状況を予測していたというよりは、流れの中でそうなったものだと思いますが、結果的には悪くない選択だったと思います。

確かに中判市場はフルサイズ市場と比較してそれほど大きなものでありませんが、もしも富士フイルムがXマウントをフルサイズ対応マウントとしていた場合、最初の数年間はリード出来ていたとしても、今後のキヤノン・ニコン・ソニー・パナソニックがフルサイズミラーレスを主戦場とした場合、勝ち残っていくのは非常に難しかったであろうと思います。

今後熾烈化するであろうフルサイズミラーレス市場で戦うよりも、市場規模が小さくとも競合の無い中判ミラーレス市場で勝負する方が富士フイルムにとってチャンスはあるでしょう。

中判カメラはオールラウンダーではないものの、現在のフルサイズミラーレスはあらゆる面で他社に勝るようなスペックが期待をされる傾向であるのに対し、中判ミラーレスは画質さえ良ければAFや連写性能が多少見劣りしても許されるという点も作る側にとって魅力です。

また数百万クラスのデジタルバックシステムがどこまで行っても一般的にならないのに対して、中判デジタルカメラとしては小型かつ安価にシステムを揃えられるGFXシリーズは、高速なAFや連写を必要としないユーザーに対して、フルサイズミラーレスに対する競合機ともなり得るでしょう。

つまり、フルサイズミラーレス市場にフルサイズミラーレス機で参入するよりも、中判ミラーレスで対抗する方が富士フイルムの立場としては良い結果となるではないかと思います。

43.8×32.9mmというセンサーサイズに関しては考える余地があったと思いますが、Xシリーズを支えつつ、その陰でGFXシリーズのボディ・レンズラインナップを拡充していくのが富士フイルムの生き残る道であるように思います。

■パナソニック


フルサイズミラーレスは起死回生の一手となるのか?

パナソニックはミラーレスのパイオニアでしたが、他メーカーのミラーレス市場参入後急速にシェアを下げ、GHシリーズが動画用途で奮闘していたものの、全体としてはジリ貧といった状態でした。

そこで生き残りをかけて、パナソニックがデジタルカメラ事業の存続をかけて打った渾身の一手がフルサイズのLUMIX Sシリーズです。

パナソニックアプライアンス社の本間哲朗社長は、週刊ダイヤモンドのインタビューで以下のような趣旨の回答をしています。

  • フルサイズミラーレスカメラ市場でグローバルのシェア10%を狙っていく
  • 現場からフルサイズミラーレスカメラをやりたいという声が上がったのは2016年の初めくらい
  • ここでフルサイズミラーレスに投資しないことはカメラ事業からの撤退を意味する
  • かなり長く議論し、一時期そのためにカメラの投資を中断していたこともあった
  • LUMIX GH5LUMIX G9である程度の実績を残すことがプロジェクト実行の条件だった
  • 小型で機動性のあるマイクロフォーサーズとフルサイズは棲み分けが出来ると考えている
  • 現時点でパナソニックは新製品と既存製品の自社競合を心配する程のポジションにはない

本間哲朗社長の話は現実的かつ正直な話のように思います。

ただパナソニックに限らず、2マウントに公平に注力していくというのは現実的にはどのメーカーであっても難しいでしょう。

“カメラ業界が今後、フルサイズミラーレスに急速にシフトするのは明白だったし、市場で伸びるのはここしかない。ここで投資しないことはカメラ事業からの撤退を意味する。”

という本間哲朗社長の発言は、実質的なパナソニックのマイクロフォーサーズマウントの敗北宣言とも言えるもので、今後は急速にLマウントに軸足を移していくものと思われます。

フォーマットが異なることに加えて、フランジバックに殆ど差がないため、マイクロフォーサーズ用レンズをLマウントで使用するためのマウントアダプターは電子接点やバヨネットマウントであることを考えると、オートフォーカスでマウントアダプターを作ることは現実的ではなく、パナソニックからもマイクロフォーサーズ→Lのマウントアダプターは発表されませんでした。

LUMIX S1/S1Rはコンセプトや動画ボタンの位置、液晶モニターのタイプなど各部の作りを見る限り、LUMIX GH5/LUMIX GH5Sのような極端に動画性能に特化した機種というよりは、LUMIX G9のような動画撮影にも強い静止画重視のコンセプトのように見えます。

勿論8K動画時代も考慮してのラージフォーマット化でもあるでしょうから、今後GHシリーズのような機種もLUMIX Sシリーズでラインナップされていく可能性は十分にあるでしょう。

ライカLマウントを採用し、パナソニック・ライカ・シグマのアライアンスを形成したことは、フルサイズミラーレス市場でのスタートダッシュとしては悪くない判断だと思います。

とは言え、「自社製品が売れなければ、同盟として幾ら成功してもカメラ事業は続けられない」というのが現実であり、パナソニック自身マイクロフォーサーズ時代に十分に経験したでしょうから、結局はパナソニックがLUMIX Sシリーズでどれだけ売ることが出来るのか?という話になると思います。

本間哲朗社長やデジカメWatchのパナソニック担当者のインタビューを見るに、パナソニックはLUMIXの現状を正しく認識しており、LUMIXがどのような方向性を目指すべきか?についても、これまでで最も真剣に考えてきたことが伺えるように思います。

かつてのパナソニックは、「いずれ動画と静止画の垣根はなくなる」というような誤った考えに陥っていたと思います。

しかし、LUMIX S1/S1Rはそのあたりの反省が外観からでも十分に感じられますし、これが8K時代になっても流されることなく、静止画と動画を正しく切り分けて進化させつつ、それを活かせるラインナップを形成することが出来たなら、LUMIX Sシリーズは魅力的なものになると思います。

また、個人的には現在のLUMIXシリーズの最大の魅力は「分かりやすい操作性」だと思っていますから、LUMIX S1/S1Rで小型化に拘らなかったのも英断だと思います。「ミラーレスは小さくなければ価値がない」というのはそもそも幻想であり、小さくても大きくても売れるものは売れますし、売れないものは売れません。

当初のレンズラインナップや50mm/F1.4のコンセプトも魅力的だと思いますから、アクセサリーも含めて地に足のついたシステムを目指してしっかりと粘り強く作っていくことが出来たなら、パナソニックにも生き残りのチャンスはあるように思います。

■オリンパス


次の進化が待たれるオリンパス

生き残りをかけて各社が大きな一手を打っている中、今の所それほど大きな動きが無いのがオリンパスとリコーです。

キヤノン・ニコン・ソニー・パナソニックがフルサイズミラーレスに、富士フイルムが中判ミラーレスに注力してつつある今、オリンパスも何かしらの大きな次の手が必要になるでしょう。

パナソニックがフルサイズミラーレスに舵を切ることが出来たのは、歯に衣着せぬ言い方をするなら「パナソニックが売れておらず、このままではデジタルカメラ事業からの撤退が目に見えていた」からだと思います。

しかしオリンパスはOM-DやPENシリーズが世界シェア約4.1%(日経調べ)という、そこそこの数字を持っているため、新システムに移行するかどうかは、パナソニックよりもより悩ましい決断となるのだろうと思います。

それについてオリンパス内部では既に結論が出されているとは思いますが、今の所オリンパスの次の一手と呼べる大きな動きは明確な動きは分かっていません。

パナソニックがフルサイズミラーレスを発売すると、その時点での各社のレンズ交換式カメラのフォーマットは、

メーカー 中判 フルサイズ APS-C m/4/3 1/1.7型
キヤノン フルサイズ APS-C
ニコン フルサイズ APS-C
ソニー フルサイズ APS-C
富士フイルム 中判 APS-C
パナソニック フルサイズ m4/3
リコー フルサイズ APS-C 1/1.7型
ライカ 中判 フルサイズ APS-C
オリンパス m4/3

このようになっており、フルサイズをラインナップしていないのは富士フイルムとオリンパスのみとなっています。

富士フイルムは中判ミラーレスをラインナップしていますが、オリンパスは中判もフルサイズも無く、多くのメーカーがフルサイズ市場で戦うことになった今、マイクロフォーサーズ一本でどこまで戦えるかは疑問です。

マイクロフォーサーズで行くにしても、オリンパス自体の注目度を上げる必要があるでしょう。

参考:DIAMOND online
画像:YouTube