ストロボ同調速度が多少上がっても意味がない26の理由

SONY α1
画像引用:Amazon(https://amzn.to/3zhKPYt)

皆さんこんにちは。

以前違う記事の中で、ストロボ同調速度(またはフラッシュ同調速度)が1/250秒だろうが1/400秒だろうが大した意味なんてないという趣旨の話を少しさせて頂きました。

今回はその部分だけをより分かりやすい形でかつ詳細に、Q &A形式で、「なぜ意味がないのか」をまとめておこうと思います。

目次

  1. ストロボ同調速度が多少上がったくらいでは、撮れる写真は今までと変わらないというのは本当ですか?
  2. 同調速度が上がることで、ハイスピードシンクロを使わなくても速いシャッターが切れるようになることは利点ではないですか?
  3. ハイスピードシンクロがないライティング機材でも速いシャッターが切れるというのは、機材を選ばないという意味で利便性の向上に繋がると言えるのではないですか?
  4. しかしクリップオンストロボをオンカメラで古いストロボや他社製カメラ用のストロボを使用する場合は、ハイスピードシンクロが使用できない場合がありますから、ストロボ同調速度が速いカメラを使用する意味があるのではないでしょうか?
  5. 屋外で花などを日中シンクロで撮る場合、シンクロ速度が速い方が露出オーバーにならないのではありませんか?
  6. ストロボ同調速度が上がれば、多少であったとしても日中シンクロで露出オーバーになるケースやオーバーする量を減らせるのではないでしょうか?
  7. F値をもっと絞ってみるのはどうでしょうか?
  8. ストロボ同調速度が上がるよりも、ハイスピードシンクロの方が効果的にボカせるということでしょうか?
  9. お互いにハイスピードシンクロを使用すれば、1/500秒同調のカメラであれば、1/250同調のカメラよりもさらに1段分ボカせるのではないでしょうか?
  10. 日中シンクロは動く被写体を撮影する際にも使用する場合があると思いますが、この場合もストロボ同調速度が1/250秒と1/500秒で同じなのでしょうか?
  11. ハイスピードシンクロは写りが不自然になるから、通常シンクロの方が良いと聞いたのですが?
  12. ハイスピードシンクロは不自然に見えるというのは、普段と違う発光モードを使っているという思い込みからくる錯覚ということでしょうか?
  13. ハイスピードシンクロよりも通常シンクロの方が、大光量を出せるメリットがあるのではないでしょうか?
  14. 日中シンクロではフル発光は必要ないということでしょうか?
  15. ハイスピードシンクロは連続で発光させるためストロボに負荷がかかり、ストロボの寿命を縮めると聞きましたが本当でしょうか?
  16. ハイスピードシンクロだと熱停止が頻繁に起きたり、リサイクルチャージタイムが伸びてしまうのではありませんか?
  17. スタジオ撮影で速いシャッタースピードが欲しいというようなプロの撮影現場でも、ストロボ同調速度の違いで撮れる写真が変わってしまうということはありませんか?
  18. HMIランプやLEDライトのような定常光ではフリッカー現象が発生したりしませんか?
  19. 強い定常光は被写体となる人物が眩しさ感じたり、機材が熱くなったりしませんか?
  20. 大型ストロボとはいえハイスピードシンクロを使えば光量が落ちますし、HMIランプが大光量といっても定常光ですから、大型ストロボの通常発光と比較して光量が不足するようなことはありませんか?
  21. 閃光速度が早くても、ストロボ同調速度が遅いカメラは幕速が遅いのですから、ストロボ光とスタジオの地明かりで、二重に露光されたようにブレて写ってしまうのではありませんか?
  22. それ以外にも動きを止めて写す方法はありますか?
  23. それらの方法はある程度の知識や機材が必要になるため、ハードルが高いのではないでしょうか?
  24. ストロボ同調速度が多少向上しても実用的な意味がないのであれば、色々なカメラ系の雑誌やWebメディアでプロカメラマンや写真家の方々が、ストロボ同調速度が速い機種が登場すると絶賛しているのはなぜでしょうか?
  25. それでもストロボ同調速度は、少しでも速いに越したことはないのではないでしょうか?
  26. 結局ストロボ同調速度が1/250秒でも1/400秒でも1/500秒でも、撮れる写真や利便性に変わりはないということでしょうか?

我々がカメラを正しく評価できるようになれば、カメラはより良い方向に進化していくでしょう。

■ストロボ同調速度Q&A


Q1.ストロボ同調速度が多少上がったくらいでは、撮れる写真は今までと変わらないというのは本当ですか?

A.はいその通りです。一般的なストロボ同調速度のカメラであっても、ハイスピードシンクロ機能を使うことでストロボ撮影時に速いシャッタースピードで撮影することができます。つまりストロボ同調速度が1/250秒から1/400秒や1/500秒に上がっても、今まで撮れていた写真しか撮れません。

Q2.同調速度が上がることで、ハイスピードシンクロを使わなくても速いシャッターが切れるようになることは利点ではないですか?

A.ハイスピードシンクロは既に普及している一般的な機能で、しかもわずかなストロボ同調速度の向上とは異なり、シャッタースピードの上限までストロボ発光とシンクロさせられる優れた機能です。

既に存在するより強力な機能を「わざと使わない」という非合理な前提条件を設けて、「ハイスピードシンクロを使わなくても」という話をしても意味がありません。普通の人はハイスピードシンクロを使うだけです。

Q3.ハイスピードシンクロ機能がないライティング機材でも、速いシャッターが切れるというのは、機材を選ばないという意味で利便性の向上に繋がるとは言えませんか?

A.ハイスピードシンクロは現在では、クリップオンストロからスタジオで使うようなモノブロックストロボやジェネレーターのような大型ストロボまで、幅広く搭載されており珍しい機能ではありません。

またハイスピードシンクロはシャッター幕が開く前から発光を始め、シャッター幕が閉じてから発光を終わります。連続的に発光している間にシャッターを切るため、カメラ側から見ると事実上定常光のような状態になっているため、同期のタイミングを殆ど心配する必要がありません。

そのため相当速いシャッタースピードに設定しても、「ハイスピードシンクロで幕切れを起こした」という話はほとんど聞いたことがないのではないかと思います。

それに対して一度しか発光しない通常シンクロはシンクロのタイミングが「非常にシビア」であるため、

  • ワイヤレス発光によるライティング
  • 純正以外のストロボを使ったライティング
  • 多灯ライティング

こうした条件下では、たとえカメラ側の仕様にあるストロボ同調速度の上限でシャッタースピードを設定してしまうと、幕切れを起こすことがままあります。

カメラメーカーが保証しているストロボ同調速度というのは、メーカー側で独自の表記がない限り、「純正クリップオンストロボをオンカメラで使った場合」が前提となっているため、ワイヤレス発光や多灯ライティング、ましてや他社製ストロボでもストロボ同調速度まで幕切れを起こさないという保証はしていません。

つまり、「通常シンクロであるから機材を選ばない」とこうことはなく、シンクロ速度の上限まで正確に対応できるかは思いの外シビアです。

本格的な撮影をする人ほど、多灯ライティングやワイヤレス発光を行うわけですから、上級者になるほどストロボ同調速度の上限が多少上がるかどうかは意味がなくなってしまうわけです。

Q4.しかしクリップオンストロボをオンカメラで古いストロボや他社製カメラ用のストロボを使用する場合は、ハイスピードシンクロが使用できない場合がありますから、ストロボ同調速度が速いカメラを使用する意味があるのではないでしょうか?

A.仮にハイスピードシンクロがない、あるいはハイスピードシンクロが動作しない他社のカメラ用のストロボを敢えて使ったとして、さらに「ホットシュー直付けのオンカメラでしか使わない」とか逆に「どのようなライティングを組んでも、必ずストロボ同調速度の上限まで確実にシンクロしてくれる」という都合の良い条件を仮定したとしましょう。

しかしそれでさえストロボ同調速度が1/250秒のカメラとストロボ同調速度が1/400秒のカメラのシンクロ速度の差は、段数でいえば僅か2/3段程度の差しかありません。

つまり、日中などでシャッタースピードが1/400秒を超えてしまうとシンクロさせることは出来ないため、結局ハイスピードシンクロ機能やNDフィルターを使うことになります。

逆に1/250秒以下のシャッタースピードではどちらのカメラも同調するわけですから、ストロボ同調速度が2/3段程度上がったとしても、丁度1/250秒〜1/400秒の範囲にシャッタースピードが常に収まる撮影でしか意味がないため、実用上の差はありません。

Q5.屋外で花などを日中シンクロで撮る場合、シンクロ速度が速い方が露出オーバーになりにくいのではありませんか?

A.実際に撮影してみればわかりますが、被写体や撮影者の位置が僅かに変わるだけでも、2/3段〜1段程度のシャッタースピードは普段から頻繁に変わっています。

ストロボ同調速度が1/250秒のカメラだったから露出オーバーになった、1/400秒同調や1/500秒同調だったから適正露出に収まったなどという都合の良い気象条件は現実にはありません。また被写体や撮影者の位置や向きが変わらなくとも、環境の明るさは刻一刻と変化しています。

Q6.ストロボ同調速度が上がれば、多少であったとしても日中シンクロで露出オーバーになるケースやオーバーする量を減らせるのではないでしょうか?

A.現実には変わりません。例えば晴天屋外の露出値はEV14程度になります。F1.4の単焦点レンズでボカすために開放絞りで使ったとすると、ISO100・絞りF1.4で1/8000秒のシャッタースピードになります。つまり、ストロボ同調速度が1/400秒程度ではそもそもシャッタースピードが全く足りていません。その差は4段以上です。

仮にF2.8のマクロレンズで花を撮影したとしても1/2000秒のシャッタースピードが必要になります。そのために多少ストロボ同調速度が上がっても実用上の効果は望めません。

「グローバルシャッターで1/8000秒まで全速同調する」といったことであれば条件によって利便性が向上すると思いますが、同調速度が1/250秒だろうが1/400秒だろうがあるいは1/500秒であったとしても、「日中シンクロで背景をボカしたい」というような用途では、全くシャッタースピードが足りていないため、結局はハイスピードシンクロやNDフィルターを使う必要があるというわけです。

ISO100/絞りF1.4で撮影した場合の露出表を書いておきます。

露出表(ISO100/F1.4のとき)
環境例 EV値 F値 シャッタースピード
真夏のビーチ・晴天下の雪景色 16 F1.4 1/32000秒
快晴 15 F1.4 1/16000秒
晴天 14 F1.4 1/8000秒
薄曇り 13 F1.4 1/4000秒
曇天 12 F1.4 1/2000秒
雨天 11 F1.4 1/1000秒
早朝・薄暮 10 F1.4 1/500秒

これを見て頂ければ、F1.4のレンズの開放でシャッタースピードが1/500秒以下で適正露出にになるためには、早朝や薄暮の時間くらい暗い環境でなければいけないことがわかります。

しかし、太陽がまともに出ていない早朝や薄暮の時間帯にストロボ発光させることを日中シンクロと呼べるかどうかさえ疑問です。

そしてこの露出表からわかる重要なことは「日中シンクロはほとんど全ての天候下で、ストロボ同調速度が1/250秒でも1/400秒でも結局ハイスピードシンクロ 機能を使うかNDフィルターを使う必要がある」ということです。

そのため「ストロボ同調速度が1/400秒のカメラだから日中シンクロに強い」とは言えないというわけです。

Q7.絞りを大幅に絞ってみるのはどうでしょうか?

A.大幅に絞りこめば露出オーバーを防げますが、その方法であればストロボ同調速度が1/250秒のカメラであってもハイスピードシンクロを使わずに日中シンクロ撮影が可能なので、ストロボ同調速度が多少高いことに意味がないということに変わりはありません。

そしてどのような天候でも同じですが、ストロボ同調速度が1/250秒と1/400秒では2/3段の差しか変わりませんから、F5.6まで絞るか、F6.3まで絞るか程度の違いでしかありません。

それでは適正露出内に収まっても十分に背景をボカすことは出来ないので、本来の目的であった「レンズ開放付近で背景をボカしつつストロボも使いたい」という目的とは離れてしまいます。

Q8.ストロボ同調速度が上がるよりも、ハイスピードシンクロの方が効果的にボカせるということでしょうか?

A.はい。例えば同じ開放F値がF1.4のレンズを使って晴天の屋外で撮影したと仮定し、ISO100でストロボ同調速度1/250秒のカメラでハイスピードシンクロを使って1/8000秒でシャッターを切った場合と、ストロボ同調速度1/500秒のカメラで通常シンクロをした場合で、同じ露出になるように撮影したとします。

1/8000秒シャッターと1/500秒シャッターでは4段分の差があるため、

  • 絞りF1.4:シャッタースピード1/8000秒(ハイスピードシンクロ)
  • 絞りF5.6:シャッタースピード1/500秒(通常シンクロ)

このように、1/250秒同調のカメラでハイスピードシンクロさせた方が4段分絞りを開放に出来き大きなボケを得られます。

つまり多少ストロボ同調速度が上がるよりも、ハイスピードシンクロやNDフィルターを使用した方がずっと効果的というわけです。

対してハイスピードシンクロを使わなければ、ストロボ同調1/500秒のカメラであっても、わずか1段分しか絞りは開けられませんから、晴天下で適正露出を得ようとすると、

  • 絞りF5.6:シャッタースピード1/500秒(通常シンクロ)
  • 絞りF8.0:シャッタースピード1/250秒(通常シンクロ)

という違いになり、どちらも大してボカすことができません。

Q9.お互いにハイスピードシンクロを使用すれば、1/500秒同調のカメラであれば、1/250同調のカメラよりもさらに1段分ボカせるのではないでしょうか?

A.いいえ。ストロボ同調速度が1/400秒や1/500秒のカメラであっても、シャッタースピードがそれを超えてハイスピードシンクロになってしまえば1/250秒同調のカメラと同じ条件になるため、例えば最高シャッター速度が同じ1/8000秒であれば、適正露出を得るための絞り値も同じになるのでボケ量は同じです。

Q10.日中シンクロは動く被写体を撮影する際にも使用する場合があると思いますが、この場合もストロボ同調速度が1/250秒と1/500秒で同じなのでしょうか?

A.1/250秒同調よりも1/400秒同調の方がブレ量は若干減るのですが、そのような場合も結局はハイスピードシンクロの方がずっと速いシャッタースピードを設定できるため、ハイスピードシンクロでシャッタースピードをより高速に設定した方が動きを止めて写す効果も強くなります。

Q11.ハイスピードシンクロは写りが不自然になるから、通常シンクロの方が良いと聞いたのですが?

A.ハイスピードシンクロというのは、ストロボを連続的に発光させながらその間に設定されたシャッタースピードで露光しているだけで、ストロボ光の質や当たり方が変わるわけではありません。

そのためハイスピードシンクロ時であっても、他の設定が同一であれば通常シンクロと写り方が変わることはありません。

Q12.ハイスピードシンクロは不自然に見えるというのは、普段と違う発光モードを使っているという思い込みからくる錯覚ということでしょうか?

A.錯覚というよりは、一般的にハイスピードシンクロを使う最も多いシチュエーションが日中シンクロであるため、日中シンクロで強めにストロボを当ててしまうと、あるはずの陰影がなくなってしまうため違和感のある不自然なライティングになってしまいます。それをハイスピードシンクロのせいだと勘違いしているのでしょう。

HDR撮影やレタッチでシャドウ部を持ち上げ過ぎると不自然な写真に感じるように、日中シンクロで陰影を消し過ぎてしまうと、同様に「強い影が出るはずの部分に影が出ていない(あるいは極端に薄い影しか出ない)」ために、かえって違和感のある写真になってしまいます。

しかしそれは明るい環境下でストロボを使うために結果的にハイスピードシンクロモードに切り替わっているというだけなので、適正な発光量やストロボ光の当て方をできなければ、通常シンクロであっても同じように不自然な写りになることに変わりありません。

もっと言うとストロボでなくとも、例えば銀レフで逆光の人物の暗部を起こしすぎると不自然な写りになるというのと理屈は変わりません。

つまり、「ハイスピードシンクロだと写りが不自然になる」と感じるというのは、撮影者が光量や光の当て方が適切にできていないことが原因でありライティング技術が未熟ということです。

発光モードのせいにするのではなく自然な光の当て方などのライティング技術を磨くことが大切です。

コツとしては、影が薄まればいいという気持ちで弱めに光を当てることと、太陽光の真逆から光を当てずに少し角度を変えることです。

Q13.ハイスピードシンクロよりも通常シンクロの方が、大光量を出せるメリットがあるのではないでしょうか?

A.同じ時間あたりの発光量で切り取ってみれば、通常シンクロの方が発光量を強くすることが出来ます。

しかし実は通常シンクロとハイスピードシンクロの光量の差は多くのメーカーのストロボでおおよそ1/4程度の差しかありません。

例えば逆光で顔が暗くなってしまった人物を日中シンクロで明るくするとしても、通常シンクロとハイスピードシンクロの光量の差は1/4程度しかないわけですから、仮に絞りF2.8のレンズで3m離れた逆光の人物を明るくするのに必要になるガイドナンバーはF2.8×3.0m=GN8.4ですから、ハイスピードシンクロにして光量が1/4に落ちたとしても、必要なガイドナンバーはGN33.6程度です。

しかも逆光補正で完全に明るくしてしまうと不自然な写りになるので、実際にはある程度自然に見えるバランスになるように発光量を落としますから、そこまでのガイドナンバーすら必要ありません。

日中シンクロの場合、カメラの内蔵ストロボですら(光質はともかく)光量が足りてしまう場合も多いのはそのためです。

まして「ストロボ同調速度がどうこう」といったことを話題にするようなカメラであれば、外付けのクリップオンストロボくらいは使うでしょうから、日中シンクロで「ハイスピードシンクロにしたせいで光量が足りない」ということはまず起こりません。

また逆にフル発光が必要な暗い環境であれば、意図的にシャッタースピードを上げない限りハイスピードシンクロにはならないので、同調速度が1/250秒同調でも1/400秒同調でも通常シンクロになるため発光量に差は生まれません。

例えば夜景であればストロボ光はそもそも被写体である景色に届きませんし、夜景ポートレートのようなものであればスローシンクロになることはあっても、普通ハイスピードシンクロは使わないません。

ですからストロボ同調速度が異なるカメラを使っても、片方のカメラだけがハイスピードシンクロになるということはないというわけです。

暗い環境であればストロボ同調速度に関わらず、通常シンクロやスローシンクロを使いますから、それで発光量が足りないというのであれば、それはストロボのガイドナンバーやワット数を見直すかISO感度を上げて撮影するべきです。

Q14.日中シンクロではフル発光は必要ないということでしょうか?

A.はい。よほど特殊な条件でもない限り日中シンクロでフル発光は必要ありません。

日中シンクロはストロボ光で全てを写しているわけではなく、逆光で暗くなってしまった被写体を明るく持ち上げたり、太陽光で出来た強い陰影を緩和する、つまり暗部をストロボ光で起こすためのものです。

そのためフル発光のような光量は必要なく、弱い閃光を繰り返すハイスピードシンクロで光量的にも問題ありません。実際にそれで光量の問題がなかったからハイスピードシンクロは広く普及し使われてきたのです。

Q15.ハイスピードシンクロは連続で発光させるためストロボに負荷がかかり、ストロボの寿命を縮めると聞きましたが本当でしょうか?

A.そもそも1/250秒同調のカメラが常にハイスピードシンクロになるわけでもなければ、1/400秒同調のカメラではハイスピードシンクロを一切使わないというわけではありません。

1/250秒同調のカメラ側だけがハイスピードシンクロになるのはシャッタースピードが1/250秒〜1/400秒の間だけのほんの2/3段分のとても狭い条件下であり、1/500秒同調のカメラと比較しても1段分です。つまりこの非常に狭い幅以外のほとんどのシャッタースピードで同条件になるわけです。

そしてQ6で露出表で説明したように、日中シンクロのほとんどのシチュエーションでは、どちらのカメラであってもハイスピードシンクロになります。

そのためストロボ同調速度が1/250秒でも1/400秒(あるいは1/500秒)でも、実際にはハイスピードシンクロ機能の利用回数はほとんど変わらないため、ストロボの寿命に顕著な差が出るようなことはありません。

Q16.ハイスピードシンクロだと熱停止が頻繁に起きたり、リサイクルチャージタイムが伸びてしまうのではありませんか?

A.ハイスピードシンクロはフル発光を連続して行っているわけではなく、弱い発光を連続的に行っています。ストロボのコンデンサーには一定の電荷しか溜められないため、ハイスピードシンクロに設定してあってもハイスピードシンクロ一回の発光の間にフル発光を連続的に行っているわけではないということです。

そのためハイスピードシンクロだからといって、フル発光を連続して行うのと比較してリサイクルチャージタイムが伸びたり、熱停止の確率が顕著に上がるということはありません。

また日中シンクロの場合それほど強い発光を必要としませんから、連続的に発光させるハイスピードシンクロであってもフル発光と同じ発光を繰り返しているわけではありません。

実際に強い発光を繰り返すと熱停止したり発光量が不安定になるストロボというのはありますが、それはハイスピードシンクロのせいというよりは、単純に「ストロボの性能の問題」ですから、連続発光が必要で熱停止が起こることが不安なのであれば、良いストロボを使うか交換して使えるように予備のストロボを用意するべきです。

ここでは通常シンクロとハイスピードシンクロ時のストロボへの負担の話になってしまいましたが、実際にはハイスピードシンクロを繰り返す撮影環境というのは、日中シンクロ撮影のようにカメラのストロボ同調速度が1/250秒でも1/400秒でも「どちらでもハイスピードシンクロになってしまう環境」です。

そのためストロボ同調速度が1/250秒のカメラを使っていてストロボが熱停止するのであれば、同調速度が1/400秒のカメラでも同様にハイスピードシンクロを繰り返すわけですから同じく停止することになります。

またカメラ側のストロボ同調速度とは関係のない「ストロボの性能の問題」を、まるでカメラのストロボ同調速度問題のようにすり替えて話しても意味がありません。

例えば1/250秒同調のカメラの方だけをハイスピードシンクロに設定し、1/400秒同調のカメラを通常シンクロに設定するような「作為的な比較」でもしない限りは、カメラ側のストロボ同調速度が1段や2段変わろうが、一方のストロボだけが熱停止してしまうということは起こらないということです。

現実の撮影ではありえない条件を無理やり設定して議論しても意味がありません。

Q17.スタジオ撮影で速いシャッタースピードが欲しいというようなプロの撮影現場でも、ストロボ同調速度の違いで撮れる写真が変わるということはありませんか?

A.変わりません。スタジオ撮影の場合モノブロックストロボやジェネレーターといった大型ストロボでの撮影が増えますが、現在ではそうした大型ストロボもハイスピードシンクロに対応した機種が多く問題なく速いシャッタースピードで撮影できます。

また先ほども申し上げたように、カメラ側のストロボ同調速度というのは、純正クリップオンストロボを使用した場合しか検証されていませんから、スタジオの大型ストロボや多灯ライティングやワイヤレスライティングでは参考にならないカタログ上だけのスペックです。

ちなみにそうした「スタジオで速い動きのものを止めて撮る」というような撮影では、大光量のHMIランプや業務用の大型LEDライトが使われることもありますが、HMIランプやLEDライトは定常光であるため自由にシャッタースピードを設定することが可能です。

Q18.HMIランプやLEDライトのような定常光ではフリッカー現象が発生したりしませんか?

A.今時はカメラ側にもフリッカーレス機能がありますし、HMIランプや業務用の大型LEDライトはフリッカーフリーの仕様になっているので気にしなくても大丈夫です。

Q19.強い定常光は被写体となる人物が眩しさ感じたり、機材が熱くなったりしませんか?

眩しさや熱を感じることはありますが、そもそもムービー撮影は常時定常光で撮影するわけですから、スチール撮影で光を当てる時間は動画撮影と比較すれば大した問題になりません。

それでも眩しすぎるとか熱いという場合は、定常光で撮影すること自体よりも、

  • 適正な光量に設定されていない
  • スムーズなセッティングが行われていない
  • ライティングの方向がおかしい

といったことに原因があります。そしてこれらは瞬間光であったとしてもダメなことなので、ムービーよりも短い時間しか光を当てないスチール撮影でモデルさんに大きな負荷がかかるのであれば、そのライティングは瞬間光か定常光かという以前に技術的におかしいのです。

またこれらの問題はカメラのストロボ同調速度とは関係のない話です。

Q20.大型ストロボとはいえハイスピードシンクロを使えば光量が落ちますし、HMIランプが大光量といっても定常光ですから、大型ストロボの通常発光と比較して光量が不足するようなことはありませんか?

A.今のカメラは高感度に非常に強いため、単純にカメラの感度を少し上げて撮影するという方法があります。

ハイスピードシンクロ による光量の低下はわずか1/4程度だというのは先にお話ししました。つまり、カメラの感度を2段も上げれば十分で、スタジオ撮影で大型ストロボを使用するような今時のデジタルカメラであれば、感度がISO100からISO400に2段上げたところで画質的な影響はほとんどありません。

またストロボには閃光時間というものがあり、この閃光時間は近年どんどん高速化されています。

そうした閃光時間が短いストロボはストロボ同調速度よりも遥かに短い、数千分の1秒から数万分の1秒という時間で発光を終えるため、その閃光時間の短さを利用することで、ハイスピードシンクロでシャッタースピードを上げなくても、ストロボ光によって動きを止めて写すことが可能です。

要するにスタジオ内を暗くして、ストロボ光だけで写すということです。

この場合露光するのは発光している間だけなので、ストロボ同調速度が1/250秒でも1/500秒でも関係がありません。

Q21.閃光速度が早くても、ストロボ同調速度が遅いカメラは幕速が遅いのですから、ストロボ光とスタジオの環境光で、二重に露光されたようにブレて写ってしまうのではありませんか?

A.ホリゾントスタジオはもともと外光をカットする作りになっているので、室内を暗くするためには室内照明を落とせばいいだけですし、室内照明を一括して落としたり調光しやすいようにスイッチも配慮されています。

それも露光に影響が出ない程度で構わないので、室内が完全に真っ暗である必要はありませんし、モデリングランプなどの明かりがあっても問題ありません。

対してハウススタジオの中には外光を取り入れることを重視した明るいスタジオも多く、時間帯によっては非常に明るい場合もあります。またオープンセットと呼ばれる、言ってみれば屋外に作られたスタジオのような撮影セットもあります。

そのような場合は環境光の影響を受けますが、それだけ明るいスタジオであれば、事実上屋外での日中シンクロ撮影をするのと似たような条件になるため、ハイスピードシンクロでも光量が足りるので、ハイスピードシンクロを使えば良いということになります。

またハウススタジオでも外光が不要な場合は暗幕で遮光するといった方法もあります。

Q22.それ以外にも動きを止めて写す方法はありますか?

その他には、中判デジタルカメラのようなレンズシャッターの機種を使う方法があります。レンズシャッターは基本的に全速同調になりますので、1/1000秒同調や1/1600秒同調といった高速なシンクロ撮影が行えるため、そうしたカメラとレンズをレンタルして撮影する方法があります。

Q23.それらの方法はある程度の知識や機材が必要になるため、ハードルが高いのではないでしょうか?

A.これまでスタジオでの本格的な撮影を想定した場合の方法として、以下のような例をご紹介してきました。

  1. 大型ストロボのハイスピードシンクロを使う方法
  2. HMIランプや業務用LEDライトのような強力な定常光を使う方法
  3. ストロボの閃光時間を利用する方法
  4. 中判デジタルカメラのレンズシャッターを使う方法

確かにこうした方法はアマチュアの方がほとんど使う機会がない機材もあると思います。

一連の質問が「スタジオ撮影で速いシャッタースピードが欲しいというようなプロの撮影現場」という話でしたので、これらの方法をご紹介したわけですが、実際にこうした撮影を行うプロフォトグラファーであれば、この程度のことは朝飯前です。

身も蓋もないことを言ってしまえば、この程度のことを「ハードルが高い」と感じてしまう人に、そうした撮影の依頼が来ることは一生ないので気にする必要はありません。

一般の方が速いシャッタースピードが欲しい場合は、クリップオンストロボでハイスピードシンクロ撮影をすれば十分です。

Q24.ストロボ同調速度が多少向上しても実用的な意味がないのであれば、色々なカメラ系の雑誌やWebメディアでプロカメラマンや写真家の方々が、ストロボ同調速度が速い機種が登場すると絶賛しているのはなぜでしょうか?

A.彼らは実際はプロフォトグラファーではなく、カメラ系のライターやレビュアーです。

彼らのそうした発言が出てくる最も大きな理由は「ストロボ同調速度のような地味な部分を評価することで、玄人っぽさをアピールしたい」という虚栄心です。

また現実の撮影を理解していないという「単なる知識不足」という面もあります。

しかし彼らは深く考えて発言しているわけではないので、

  • これでこれまで撮れなかったものが撮れます
  • これで現場で助かります

といったアバウトなことしか言わないのですが、

  • 従来のカメラでは撮れなかった「これまで撮れなかった写真」とはどのような写真なのか?
  • 撮影現場でどのような利便性の向上につながるのか?

といった点を具体的に示すことが出来ません。これまで説明してきたように、そのような事実は「そもそもない」からです。

ですから、そのようなライターやレビュアーを見かけた際には、「この人の話は聞く価値がなさそうだな」という別の判別の基準として利用すると良いでしょう。

Q25.それでもストロボ同調速度は、少しでも速いに越したことはないのではないでしょうか?

もちろんストロボ同調速度は速いことはデメリットではありません。しかし同時にこの「ストロボ同調速度は速いに越したことはない」という言い訳は、先ほどの話に出たカメラ系ライターやレビュアーの「最後の隠れ蓑」でもあります。

あれほどストロボ同調速度の向上を絶賛していたにも関わらず、それを論理的を否定されると、最終的には「でも速いに越したことはないから」という非常に消極的で言い訳じみた話に逃げるのです。

しかし最終的にそういう逃げ口上しかなくなるということ自体が、彼らの考えが浅はかであったということの「究極の証明」であると言えます。

またここまで「ストロボ同調速度が多少上がっても実用上の意味はない」ということを長々説明してきたわけですが、このような機能が過剰に評価される風潮が蔓延してしまうと、「本来改善されるべき点がおろそかになり、売り文句を作るために実用性と関係のない部分に開発力が割かれてしまう」という問題が起こるからです。

ストロボ同調速度のようなデメリットがないものであれば「無駄なところに開発力が割かれる」という程度の被害で済みますが、

  • 画素数と高感度耐性
  • 携帯性と操作性

といったようなトレードオフの関係にある性能の場合、かつてのコンパクトデジタルカメラにおける高画素競争のようなことが起きてしまうと、「売るために実用性を落とす」という悲惨なことも起こり得ます。

ですから我々は、

  • 本当にそれが撮影に役立つのか?
  • その機能にどの程度の価値があるのか?

ということを適切に評価しなければなりません。適切に判断できなければ逆に、せっかく優れたアイデアを盛り込んだにも関わらず、評価されずセールスに繋がらなかったために廃れていく場合もあります。

カメラメーカーを良い方向に育てるのはユーザーなのです。

Q26.結局ストロボ同調速度が1/250秒でも1/400秒でも1/500秒でも、撮れる写真や利便性に変わりはないということでしょうか?

A.はい、変わりません。

ストロボ同調速度が多少上がったくらいでは、

  • 今まで撮れなかった写真が撮れることはない
  • ハイスピードシンクロ機能やNDフィルターは従来通り必要

これらのことも変わりませんから、気にする必要はありません。


以上です。

Reported by 山﨑将方