皆さんこんにちは。
遂にEOS R3が正式発表され、その全ての機能とスペックが公開されました。まさに実用性に特化したもの凄いプロ機を出してきたという印象です。
目次
- EOS R3のスペック部分について
- コンセプトを明確化した結果オールラウンダーになったEOS R3
- ローパスフィルターを安易に廃さない誠実さ
- Picture Style Editorで劇的に良くなるEOS Rシリーズの画質
- なぜPicture Style Editorを調整するのか?
- RFレンズの特徴とEOS Rシリーズとの相性
- 最高約30コマ/秒について
- ローリングシャッター歪みの低減は無駄ではないが大騒ぎするほどのことではない
- AF低輝度限界-7.5EVは凄いがスピード感が重要
- 世界最高約8.0段の手ブレ補正効果は高感度耐性とのバランスを考えて使うといい
- EOS R3の機能性について
- 前髪が目にかかると瞳AFが奥の目に合わせにいってしまう問題とその対処
- 前髪問題を完全に過去のものにしたEOS R3の驚愕の瞳AF
- 人物・動物に加えて、モータースポーツ(車・バイク)も認識可能に
- 遥かに実用的になって復活した、視線入力対応ファインダーを搭載
- 物理シャッターが無くなったスペースをどう活用するか?
- ダブルスロットのCFexpress+SDカードという選択は正しかったのか?
- 連続動画撮影最長6時間に対応
- 4K Canon Log 3に対応
- 4K オーバーサンプリングの実現
- RAW動画内部記録
- 動画撮影中に人物・動物・モータースポーツの被写体追尾が可能
- EOS R3の外装などについて
- EOS-1D系と同等の防塵・防滴性能
- 快適な操作性を備えた縦位置グリップ一体型ボディー
- マグネシウム合金採用ボディー
- マルチコントローラー、スマートコントローラー
- メイン電子ダイヤル、サブ電子ダイヤル2つの合計3つの電子ダイヤル
- バリアングルモニターは単なる縦位置撮影や自撮りのためではない
- 5GHz無線搭載でも悩ましい無線でのテザー撮影速度
- データ通信や電源供給が可能な新アクセサリーシュー搭載
- EOS R3の総合評価
- 画質面に関して
- 機能面に関して
- 価格面に関して
- EOS R3は総合評価95点
- 実用性において、まさに「無双」のカメラ
今回は次世代のスポーツフォトグラファー・報道カメラマンのスタンダートになるであろう、このEOS R3の印象を語っていこうと思います。
■EOS R3のスペック部分について
コンセプトを明確化した結果オールラウンダーになったEOS R3
まずはキヤノン初のフルサイズの2,410万画素の裏面照射型積層COMSイメージセンサーですが、これは、
- スポーツフォトグラファー
- 報道カメラマン
- ネイチャーフォトグラファー
などには最適なイメージセンサーではないでしょうか。それ以外にも特別に高画素を必要としない多くのジャンルの撮影にとても使いやすいイメージセンサーだと思います。
私は今はEOS R5を使っていますが、じゃあ2,410万画素じゃダメかというと、9割方の撮影は2,410万画素で十分足りる上に、必要なときだけPhotoshopのスーパー解像度を使うといった手もあるので、大半のプロフォトグラファーでも2,410万画素でも構わないのかも知れません。
また多くの撮影ジャンルにおいて、2,410万画素の裏面照射積層CMOSイメージセンサーというのはとても使い勝手が良いのではないかと思います。
私からすれば、EOS R5やα1は本当の意味でのオールラウンダーではないですし、EOS R5やα1でスポーツフォトが撮れないわけではないですが、どちらもスポーツフォトや報道写真に最適なカメラとは思いません。
EOS R5やα1はスポーツ撮影向きの操作性になっておらず、スポーツ撮影にも一応使えるというだけです。
対してEOS R3は画素数を抑え操作性もスポーツ撮影をイメージして目的をはっきりさせたわけですが、結果的には多くのフォトグラファーにとって汎用性の高い機種になっていると思います。
ローパスフィルターを安易に廃さない誠実さ
ちなみにイメージセンサーと画素数についていうと、EOS R5は解像力の高いレンズと組み合わせると割とモアレが出るのですが、レンズ性能がEFからRFレンズになって上がったことで、これまでよりも細かいパターンと干渉するようになったと感じます。
一般的に「高画素機はモアレが出にくい」と言われていますが、それは正確な表現ではなく、モアレというのはベイヤー配列によって起きる干渉縞ですから、常にレンズが十分に解像しているという前提であれば、画素数が上がってもイメージセンサーとの干渉が発生するパターンの大きさが変わるだけです。
レンズとイメージセンサーの解像力が上がると、これまでモアレが発生していたものは解像するようになるのでモアレが出なくなるのですが、逆にこれまではレンズの解像力不足で解像出来ずにディテールが潰れてモアレが出なかったいたものと干渉し始めて、より細かいパターンの時にモアレが発生し始めるというわけです。
要するにこれまでは解像力の低いレンズが一種のローパスフィルターの代わりになっていたために、高画素センサーを搭載するとレンズの解像がついていかないためにモアレが出にくかったわけです。しかしレンズの解像力が上がると、高画素機でもこれまでよりも小さいパターンと干渉し始めるというわけです。
非常に極端に言えば、10万画素しかない超低画素イメージセンサーだと低画素だから滅茶苦茶モアレが発生しまくるかというとそんなことはありません。干渉するパターンが少ないからです。
また逆に2,400万画素センサーは10万画素の超低画素センサーと比較して高画素なのだからモアレが劇的に出にくくなるでしょうか?そんなこともありませんよね。
10万画素のカメラより2,400万画素のカメラの方がはるかに高画素であるにも関わらずモアレは普通に発生します。
なので「レンズが無限に解像するという前提」であれば、画素数が増えても干渉縞が発生するパターンの大きさが変わるだけで、「高画素機だからモアレが出ない」というわけではありません。
EOS R5の場合も高画素機でありながら、ちゃんとローパスフィルターを搭載していますが、RFマウントになってレンズの解像力も上がっているのでモアレは出る時は普通に出ます。
ちょっと厄介なのは、これまでよりもより細かいパターンと干渉してしまうために、これまででは肉眼で「ああ、これなんかモアレ出そうだな」と警戒出来ていたものがキッチリ解像してくれるようになったのは良いのですが、これまでなら解像せずに潰れていたようなパターンで気付かない間にモアレが発生し、家に帰ってモニターの等倍表示でじっくり見るとモアレに気付くということが増えてきました。
つまりレンズとイメージセンサーの解像力が人間の目を大幅に超えてしまったために、人間の目ではなかなか認識できないような非常に細かい服の生地であったり撮影距離でモアレが出るため、予想がしにくくなってきている(それも人間側の慣れでいずれ予測が追いついていくとは思いますが)部分があります。
カラーフィルターとの干渉が原因で発生する偽色はレタッチソフトで割と簡単に除去できるのですが、残った輝度モアレのパターンはレタッチで何枚ものカットを綺麗に消すのはかなり手間がかかるので、撮影時にうっかり見逃さないように気をつけるようになりました。
キヤノンは高画素機でも安易に他社のようにローパスフィルターを無くさないので、そのあたりはカメラメーカーとしての誠実さを感じる部分です。
EOS R3はEOS R5と同じ水晶複屈折板によるローパスフィルターを採用しており、EOS-1D X Mark IIIのような16点分離のGDローパスフィルターは採用されていません。これは恐らくは単純にコストの問題だと思うのですが、まあEOS R3の価格を考えれば仕方がないでしょう。スペック面ではEOS-1D X Mark IIIよりも上で、加えて視線入力まで搭載していながら価格は安いのですから。
このモアレの抑制に関しては、カラーフィルターを工夫した富士フイルムのX-Trans CMOSは優れたアイデアだと思いますが、富士フイルムとキヤノンではカメラやシステムの方向性が違うため、「X-Trans CMOSだから富士フイルムにしよう」とは思いませんが、富士フイルムのような工夫は他のメーカーも積極的に検討するべきだと思います。
モアレが出にくいというのがセールスに直接的に影響するとは思えませんが、たとえすぐにはセールスに繋がらなくても、実用性に影響するところで手を抜かないのが、本物のカメラメーカーのあるべき姿勢だと思います。
昨今ではベイヤーセンサーの構造を考えれば必要なローパスフィルターを無くすことをまるで良いことと勘違いしている人が増えており、「ローパスレスで高解像!」などという狂っているとしか思えない宣伝文句が跋扈してしまっています。
ローパスフィルターレスなんて只のコストダウンですからね?
EOS R3でモアレや偽色がどの程度出るのかは気になるポイントですが、こうした縦グリップ一体型のボディは一般的にスポーツフォトグラファーや報道カメラマンのイメージがあると思います。
スポーツ選手はユニフォームに化繊の素材を使われていることが多く、光沢感のあるような化繊素材は割とモアレが発生しやすいので気をつける必要があります。
またこのクラスのバッテリーグリップ一体型のカメラは意外とフリーのブライダルフォトグラファーなども好んで使っていることがあります(ブライダルは高画素が必要でないことと、披露宴会場が薄暗いこと、撮影枚数が多いことなどから)。
そしてブライダルだと光沢のある新郎のスーツや新婦のウェディングドレスでモアレが発生することがままあり、しかも撮影枚数が多いにも関わらずスピーディーな納品が求められるジャンルであるために、そうした撮影でのモアレの発生率がどの程度になるのかは気になる部分です。
私はスポーツやブライダルは撮影する機会がない(昔はブライダルも撮っていたんですが、もう何年も撮っていない)ので関係ないといえば関係ないのですが、スポーツやブライダルはポートレートのようにフォトグラファーの意思で撮影位置や被写体の位置を変えられず、モアレが出るかどうかはほとんど運任せになってしまいますからローパスフィルターは現時点では絶対にあった方が良いでしょう。
Picture Style Editorで劇的に良くなるEOS Rシリーズの画質
DIGIC Xも影響しているのだと思いますが、最近のキヤノンの画質設計は正しく設定すればとても優れていると思います。
私はわりとキヤノン信者だと思われているようですが全く的外れで、仕事で使いやすいからキヤノンを使っているだけで、趣味で撮影するのだったら、実用性一辺倒で面白みも何もないキヤノンよりライカなんかを使っていると思います。Foveon時代のシグマも面白かったと思います。
で、画作りに関して私の感覚ではEOS R5もカメラ内の画質調整だけでは不十分というか真価を引き出すことは難しく、デフォルトの画作りやカメラ内での調整だけであれば、ニコンのZシリーズの方が私は好みです。
なのでキヤノンのRF機の場合はPicture Style Editorで細かく設定した方が良いと感じていて、その点はEOS R3もおそらく同じだろうと思います。
一口にPicture Style Editorで設定すると言っても、様々なシチュエーションを撮影してバランスを取っていかないといけませんし、プリントのことも考えないといけません(プリント時はレタッチソフトで結局プリント用の調整が必要なのですが、それを最小限の調整で済むようにしておかないといけません)。
なんだかんだで購入してからPicture Style Editorや操作設定を半月くらいは調整して自分に合うようにしてから実際に使い始めるのですが、Picture Style Editorで微調整を繰り返した結果、EOS R5は今では恐ろしいほど安定した画質となります。
キヤノン機はデフォルトの状態やカメラ内のピクチャースタイルの設定だけで使っている人も多いのですが、PCのPicture Style Editorでちゃんと調整するのは手間ですが劇的に良くなるのでおすすめです。
なぜPicture Style Editorを調整するのか?
キヤノンの画質設計はデフォルトでは当然様々な被写体を想定しているので、撮影対象が特定のジャンルに偏っていたり、プリント時にプリント用のレタッチを加える人だと、ある程度Picture Style Editorで自分の用途に合わせておく方がより良くなります。
人物撮影ならカメラ内のピクチャースタイルをポートレートに設定するだけでいいというわけではなくて、キヤノン的にはポートレートモードであれば当然様々な人物撮影を想定して画質設計をするわけですが、実際には「ポートレート」といってもフォトグラファーによって被写体がかなり偏るわけです。
つまり、お宮参りや七五三などで子供ばかり撮っている人もいれば、ブライダルの撮影ばかりしている人、政治家のポスターばかり撮っている人、グラビアばかり撮っている人や、コスメなどのビューティー系を撮っている人などてんでバラバラで、同じポートレートでも期待している写り方は各人で全然違うわけです。
メーカー側としてはそんな都合まで配慮できませんから、ピクチャースタイルに、
- お宮参り、七五三モード
- 政治家選挙ポスターモード
- non-noビューティーページモード
- FLASHグラビアモード
- arモード
- 装苑モード
なんてものは当然ないわけです。
しかしポートレートの中ですらお客さんや媒体によって「求められている雰囲気」というのは全然違うわけですから、自分の撮影に最適化された細かい調整が必要になってきます。
もちろんレタッチはするわけですが、全然かけ離れたところからレタッチするのは大変ですから、撮影の時点で仕上がりになるべく近い形の画作りにしておきたいわけです。
しかし画質設計は(キヤノンの考える良い写りという中で)最大公約数的にならざるを得ず、それをPicture Style Editorで自分用に調整するというわけです。
個人的にはポートレートに関してはPicture Style Editorを適切に設定したキヤノン機が、全メーカーでも一番安定して万人受けする写りになる思っています。これは「最高の写り」とか「玄人受けする」という意味ではなくて、より多数派に受ける写りという意味です。
またPicture Style Editorを適切に設定すると、「シャープネス」「コントラスト」「彩度」のようなものだけでなく、オートホワイトバランスも恐ろしいほど正確で、もはやマニュアルでホワイトバランスを取るよりも、AWBW(ホワイト優先)で撮影する方が結果が良く、かなりおかしな光源下でも他のメーカーよりも色の再現性が高いと思います。
Picture Style Editorを調整したからといって、カメラの画質設定が滅茶苦茶になるようなことはなく、元に戻すのは簡単ですから、撮影対象がある程度限られているような方は、これまで全く触ったことがないという人でも、一度Picture Style Editorを触ってみることをおすすめします。
またEOS R3では初めて[オートライティングオプティマイザ]と[高輝度側・階調優先]の同時設定が出来るようになったのですが、むしろなぜ今まで同時に設定出来なかったんだという機能で、これで階調コントロールと逆光補正が同時に行えます。
ファームウェアアップデートでEOS R5やEOS R6などでも出来るようにして欲しいところです。
HDRモードも昔のHDRのイメージがあるのかあまり注目されていませんが、EOS R3のHDRモードは約0.02秒で3枚の画像の撮影を終えるので、手持ちでも撮影できて良いと思います。
RFレンズの特徴とEOS Rシリーズとの相性
EOS Rシリーズは見合ったレンズを使うとシャキッとしつつも線が細い解像をするというのも良いと思います。ズームならRF24-70mm F2.8 L IS USM、単焦点ならRF85mm F1.2 L USMなど凄くいいですよ。
今時は「解像するレンズ」というのは沢山あるのですが、昔のニッコールのようにバキバキに太い解像をされても変です(※現在のニコンのZマウントレンズはそんなことはなく、ニコンらしいシャープさは保ちつつも不自然な輪郭強調のようなものはなく、全メーカーでもトップクラスのとても素晴らしい写りです)。
逆に「一見やわらかい写りに見えるけれど、良く見るとちゃんと解像している」といったタイプのレンズもある(今だと富士フイルムのGマウントレンズに多い気がします)のですが、ああいった写りだと写真に詳しい人にしか良さが伝わらないという問題が起こります。
富士フイルムのレンズ設計者は多分、コシナツァイスのプラナーみたいな写りが好きなんだろうと思います。
GFX自体はある程度詳しい人しか買わないでしょうからいいとしても、その写真を「見る側」まで写真に造詣が深いとは限りません。なので、GFXの描写を見たときに人によっては「なんだ、解像してないじゃん」と過小評価をされてしまう可能性はあるわけです。
それと比較して、キヤノンのRFレンズとDIGIC Xの組み合わせや画質設計は、まさに万人受けするとても使いやすいレンズだと思います。
これらのレンズの話はMTFしか見ていないとわからないことなので、その辺りがキヤノンの凄さなんだろうと思います。機械的な計測値よりも実写性能を重視しています。
最高約30コマ/秒について
まあこれは普通に撮影する分にはもう十分すぎるほどの数値で、ポートレートフォトグラファーにはもうこれが秒間60コマになっても撮れる写真には何も関係がありません。そもそも連写をほとんど使わないです。
もちろんこれはスポーツ撮影では事情が変わってくるとは思いますが、それでも30コマ/秒で良いカットが撮れない人は、60コマ/秒になっても撮れない人だと思います。
ただハイスピード撮影をフル画素で行いたいという需要はあるようですし、動画撮影などもあって、画像処理の速度は上がっていきますから、今後もおのずと連写速度は上がっていくでしょうし、速度は設定できるのですから上がって悪いこともありません。
キヤノンは昔から秒間コマ数にはこだわりがあるメーカーですから、キヤノン的には気にはしていると思いますが、もう秒間撮影速度のアピールは、かつてのコンデジの画素数競争のようなもので個人的には食傷気味です。
あと「撮影開始のタイミングがつかみやすいよう、1枚目撮影の直前はブラックアウトする」というのもいいですね。要するにカチンコと同じ役割なのだと思いますが、但しこの機能は好みもあるでしょうから、ON/OFFできた方が好ましいと思いますが。
ローリングシャッター歪みの低減は無駄ではないが大騒ぎするほどのことではない
キヤノンは既にCINEMA EOSでグローバルシャッターを搭載したEOS C700 GS PLを発売していますから、いずれはスチールカメラでもグローバルシャッター機が登場するのは確実だと思いますが、読み出し速度の向上でローリングシャッターでも歪みの低減が着々と進んでいます。
ここ数年で「ローリングシャッター歪み」という言葉が急速に有名になったために、ローリングシャッター歪みが少ないことがまるで「カメラの革命」のようにアピールされるようになってしまいました(※ソニーのせいです)。
ローリングシャッター歪みが低減しても良いのですが、メーカーがおかしなアピールをしてそれが流行ってしまうと、他のメーカーもセールス的な理由から追随せざるを得ず、本来もっと進化・改善して欲しい部分がなおざりになったまま、開発リソースがそちらに割かれてしまうので、新しい言葉や覚えたての言葉に過剰に熱狂するべきではないと思います。
メカシャッター(物理シャッターという意味での)でもフォーカルプレーンシャッター歪みが生じるため、敢えて横走りシャッターのカメラを使うというような工夫はフィルムカメラ時代からされてきました。
何を言いたいかというと、ローリングシャッター歪みが低減されたからといって撮れる写真の作品性が変わるわけではないということです。
最近よく見られるような、わざわざ回転している扇風機を電子シャッターでアップで撮影して「こんなにローリングシャッター歪みが!」みたいな作例を見ると呆れます。
君らは「ローリングシャッター歪み写真家」かと。
ローリングシャッター歪みの説明のための作例であったとしても、シチュエーションに現実味がなさすぎるだろうと。
私は「回っている扇風機のアップを電子シャッターで撮って下さい」なんて撮影を頼まれた事もなければ、作品として撮りたいと思った事も人生で一度もないです。
仮に扇風機を撮るのが趣味だったとしても、それは止まっている状態の「雰囲気のある扇風機」か、回っている状態を撮りたいなら、シャッタースピードをある程度落として羽の形が見えないように写して「回転しているように」撮るはずです。
「回転させながら」「高速シャッターで止めて」「ローリングシャッター歪みが出るように」撮影するなんてこと普段なら絶対にしないでしょう?
- 羽を止まっている状態を撮影したい→そもそも電源を入れない
- 羽が動いているところを撮りたい→羽がブレていないと動いているとわからないので高速シャッターにはしない
ということです。
「ゴルフのスイングでドライバーが曲がって写ってしまいました」みたいな作例なんかも同じで、あれもメーカーがわざと横位置撮影しているものを見せられているだけです。
EOS-1D X Mark IIIの電子シャッター
EOS R3の電子シャッター
上の写真はキヤノンが「EOS R3の電子シャッターはこんなにローリングシャッター歪みが減りました」というアピールに使っている画像ですが、やはり横位置で撮影しています。
でも実際のゴルフのスイングのこんなタイミングを下半身だけのアップで撮影しますか?しないでしょう。
ちなみにこういうタイミングのゴルフのスイングを真横から狙うようなカットは、縦位置撮影すれば電子シャッターでもドライバーが歪みません。センサーからの読み出しが縦方向になるので。
要するに高速で移動している被写体があったとして、
- 横方向に移動している被写体→縦位置で撮影
- 縦方向に移動している被写体→横位置で撮影
このように被写体の移動方向とイメージセンサーの読み出し方向が直交するように撮影してあげれば、電子シャッターでもローリングシャッター歪みはほとんど起こりません。被写体の直線部分とセンサーの読み出し方向が同じになるからです。
さらに歪みを減らす方法としてもう一工夫出来るのですが、EOS R3から話が逸れてしまうので、それに関しては違う機会に詳しく解説できればいいかなと思っています。
結局のところ上のような作例は、
- 広い構図だと歪みが分かりにくいから寄りで撮りたい
- 縦位置で撮るとほとんど歪まないから横位置で撮りたい
という思惑からわざわざ横位置撮影で寄りで撮っているから、このような実際には撮影しないような、下半身だけの構図になっているわけです。
これも根本は「回っている扇風機の作例」と同じで、ローリングシャッター歪みを出すための作為的な作例であることには変わりありません。
大体、ゴルフのインパクトのシーンを撮影する人なんてゴルフ関係のフォトグラファーくらいのものでしょうし、それを踏まえてなお、ゴルフのショットの写真の多くは、
- 振り始める直前の狙いを定めて静止している緊張感のある瞬間
- ヘッドを振り上げて高い位置に来て、今まさに振り下ろす直前の静止した一瞬
- 振り抜いて止まった状態で弾道を見ている、体をひねった格好いい姿勢のところ
などを使うわけで、ボールが当った瞬間にゴルフクラブが多少反っていようがいまいが、どうせそんな瞬間なんて採用されません。スポーツ紙などを見ても、ゴルフのヘッドがボールに当たる瞬間なんて画にならないので普通は使わないし、稀に使っていたとしても縦位置写真でしょう?
それに、世の中にはローリングシャッター歪みの影響がほとんど影響しない撮影ジャンルの方がずっと多いと思います。
ムービー撮影となるとまた少し事情が変わってくるので、ムービー撮影が主体の人であれば意味があると思いますが、そもそもEOS R3を自撮りやビデオログ用に使う人はそれほど多くはないでしょう。
もちろんローリングシャッター歪みは少ないに越したことはないので、ローリングシャッター歪みが低減されることは、良いことですが、「回転する扇風機」や「ゴルフのインパクトの瞬間」のような、ローリングシャッター歪みを起こすこと自体が目的化した無意味な作例を撮って喜んでるのは、本当は写真なんて全く興味がない只の機材オタクだけですから、そんな人の意見なんて聞く価値はありません。
それにこの話もイメージセンサーの読み出し速度はこれからも向上していくのですから、ローリングシャッター歪みは勝手に減っていき、いずれはグローバルシャッターで完全に過去の話になるのでしょう。
AF低輝度限界-7.5EVは凄いがスピード感が重要
暗所での撮影にも色々あって、星野撮影などではMFでライブビューで合わせればいいわけですが、AFを使う撮影で極端に暗い撮影だと夜行性の動物の撮影などになるわけですから、-7.5EVまでピントが合うというのは嬉しいかなと思います。
EOS R5のAFは-6.0EVまで対応しており、これは平均的な他社競合機と比較して2段程度(つまり1/4の明るさでも合焦する)優れたものになっていますが、それでもピントが合い難い時はあって、暗い屋内撮影などではポートレート撮影でも迷うことがあります。
最終的には合焦するので別に-6.0EVの低輝度限界が事実ではないとかそういうつもりはないのですが、カメラとしては普通のこととはいえ明るい環境下のようにスムーズにビシビシと合わずに、「ちょっと(AFが)迷ってるな」とか「普段より遅いな」という感じの時はあって、完全にモデルさんや自分のタイミングで撮れない時があります。
人物撮影といっても相手もプロのモデルさんですから、ちゃんとポージングの度に適度に撮りやすいように止まってくれるわけですが、それでも尚そういったことが時々起こるわけです。
それと比較すれば、EOS R3の撮影対象となるような室内スポーツや野生動物などになれば、当然モデルさんのように止まってくれるわけではありませんから、-7.5EVでも盤石とは言えないと思います。
つまりポートレートのフォトグラファーににとっては「どれほどの真っ暗闇でピントを合わせられるか?」ということよりも(もちろん夜行性の野生動物を撮影している方には重要なことでしょうが)、ポートレート撮影においては、薄暗い室内やローキーな雰囲気の撮影時にもビシビシとピントが合ってくれるととても有難いわけです。
テレコンを使うようなかたには恩恵があるのかもしれませんが、私はテレコンを使わないのでテレコン使用時に実感としてどの程度影響があるかは分かりません。
昔に比べればキヤノンの場合は低照度下でのAFは劇的に進化はしているものの(例えばソニーのα1のAF輝度限界は-4.0EVまでです)、まだまだ進歩が求められていると思います。
- ポートレートフォトグラファー→暗くても一瞬もピントが迷うことがない
- スポーツフォトグラファー→暗くてもピントを外すことがない
このようなAFが実現してくれればいいなと思います。
とは言っても当然測距輝度範囲が広がっているということは、これまでは合焦に微妙な遅れを感じていたようなシーン程度であればビシビシ合うようになっている可能性が十分あるわけですから、この進化はもちろん大歓迎です。
世界最高約8.0段の手ブレ補正効果は高感度耐性とのバランスを考えて使うといい
この手ぶれ補正8.0段(CIPA基準)というのは数字としては驚異的で、「手ぶれさせないためには、焦点距離分の1秒が目安」といった昔の基準(今は実際はもっとシビアになっていますが)で言えば、RF24-70mm F2.8 L IS USMの70mm域で8.0段分の補正効果となっていますから、おおよそ、
1/70秒→1/35秒→1/18秒→1/9秒→1/4秒→1/2秒→1秒→2秒→4秒
ということで、理論上は70mmの望遠端で約4秒の手持ち撮影が出来るというわけがわからないレベルの手ぶれ補正となっています。
もちろんこれはCIPAの基準に則った加振装置による計測値ですから、実際の撮影ではそこまでビタ止まりするわけではないのですが、実際に止まるのが仮に5.0〜6.0段程度だったとしても、十分に驚かされる性能です。
余談ですが、今のデジタルカメラは簡単に等倍で確認できるため昔の「手ぶれしない目安は焦点距離分の1秒」という我々の考え方のほうも見直すべき時期だと思います。
ただ実写でそこまでのスローシャッターで撮影する必要がある被写体というのは相当に限られています。
EOS R3の高感度耐性の高さと強力な手ぶれ補正を組み合わせれば、十分「高画質な状態での」手持ち夜景撮影なども可能でしょうから、ぶれない限界のシャッタースピードに挑戦するような撮影をするより、「程よい高感度設定と手ぶれ補正の強力さをバランスよく利用して撮影する」というのが実用的な使い方になるのかもしれません。
逆に数秒の手持ち撮影が仮に出来たとしても、被写体が建築物のような人工物でもない限り、手ぶれしなくても被写体ぶれが起きてしまうでしょう。
手ぶれ補正の性能に関しては、オリンパスが全メーカーの中でも先行していましたが、最近はキヤノンの手ぶれ補正性能の進歩が凄いことになっていて、一応EOS R3は現時点で世界最高の手ぶれ補正効果を持つレンズ交換式カメラとなっています。
またEOS Rシリーズはオリンパスよりイメージセンサーの質量が大きいため、イメージセンサーの動きを制御するのもずっと大変なはずですが一体どうなっているのでしょう。
果たして他のフルサイズメーカーは、キヤノンの手ぶれ補正の進化についていけるのでしょうか?
ここまでくると補正量や協調制御に限界がくるマウントも出てきそうな気がします。
■EOS R3の機能性について
前髪が目にかかると瞳AFが奥の目に合わせにいってしまう問題とその対処
EOS R3には「瞳/顔/頭部」に加え、新たに「胴体」の検出に対応しています。
またマスクをしているときなど、これまで瞳を認識しにくかったシーンでの検出出来るようになっています。
コロナでマスクを普段はマスクを着用している人が多いと言っても、撮影時にモデルさんやタレントさんがマスクをしたままということはまずないのですが、EOS R3は報道関係でも使われるカメラですから、そうしたシチュエーションでは役立つ人もいるでしょう。
またインタビュー撮影などでもマスクを着用したままという場合もあるので、カメラマン側からマスクを外して貰うように頼めない場合に助かると思います。
報道やインタビュー撮影を行っているフォトグラファーには非常に有用な進化だと思います。
しかし私の場合インタビュー撮影も昔やっていたことはありますが今はやっていないため、個人的にはマスクに対応よりも、瞳AFの前髪がかかった時の問題に対応して欲しいと思っています。
私の場合ポートレート撮影が多いので、EOS R5は基本はシャッター半押しで瞳AFが動作するようにしているのですが、手前の目にだけ前髪がかかっていたり、微妙に横を向いていたりすると、カメラが手前の目が認識できない時があり、奥の目にピントを合わそうとしてしまいます。この奥の目にピントを合わせようとしてしまうのが思いの外厄介で、
- どちらの目も認識してしまう場合→手前の目を選択するので問題ない
- どちらの目も認識できない場合→顔認識や頭部認識になって被写体のカメラに近い部分に合わせようとしてくれるので問題ない
問題は、奥の目だけは認識できているという状態です。
前の目だけ完全に目が隠れるくらいの前髪の量なら奥の目に合わせる方が写真として自然という場合もあるのですが、シースルーバングのような、人間には前の目が明らかに見えているのにカメラは認識できないということはよくあります。
その際に奥の目に合わせるくらいなら、手前の目にかかっている前髪に合わせてくれた方が「まだマシ」という場合は良くあって、厳密には手前の目にかかっている前髪にピントが合っていても、手前の目が被写界深度内に入っている状態になってさえいればいいわけです。
しかし、なまじ奥の目だけは認識できているので、そちらに瞳AFが引っ張られてしまうというわけです。
EOS R5も例えばいわゆる親指AF状態にして、シャッター半押しでAFを動作しないようにして、例えばAF-ONボタンに瞳AFを割り当てて、AEロックボタンにAF起動を割り当てるというような方法で、瞳AFにしたり通常のAFにしたりを切り替える方法で、奥の目にピントを合わせてしまう場合には、通常のAFを起動させてカメラに近い部分(要するに手前の目の前髪)にピントを合わせるモードに変更するという手もあるのですが、私の場合は「ほとんどの場合は瞳AFでいい」ので、親指AFのようにAF-ONボタンを押しっぱなしにしているのは面倒なので、シャッター半押しAFで瞳AFが起動して欲しいわけです。
なので動作としては、今EOS R5で設定出来る「AF-ONボタンを押している間だけ瞳AFを動作せられる」というものではなく、逆に「AF-ONボタンを押している間だけ瞳AFを切りたい」のです。
それなら奥の目だけを認識してしまう少ないケースの時だけ、AF-ONボタンを押して頭部認識になってくれるというわけです。
EOS R3はポートレート撮影を最優先にした機種ではないのでそこまで求めるのはどうかと思いますが、不要な人は使わなければいいだけのメニューなので、EOS R5のフェームウェアアップデートやEOS-R1などでは、是非、AF-ONボタン(あるいは他のボタンでも)に「押している間だけ瞳AFを解除」という設定を割り当てられるようにして欲しいと希望しています。
こんな重箱の隅をつつくような要望を、あらゆる撮影ジャンルの人が自分の使い方の都合で各々要望を出してくるのですから、カメラの開発者は大変ですね。
前髪問題を完全に過去のものにしたEOS R3の驚愕の瞳AF
…ところがどっこい!
なんとEOS R3はこの前髪問題に違う形で既に対応していました!しかも追随が速い。
上の動画を見ていただければ分かりますが、結構暗い場所で前髪が目にかかって、しかも素早く動いているモデルさん(通常はポージングで一瞬止まるのでここまで動きっぱなしではありませんからよりシビアな撮影条件というわけです)であっても、ちゃんと前髪がかかった手前の瞳を認識しています。
前髪がかかっても両目とも認識しています。
影になってても両目とも認識しています。これは正面に近い構図なので実際には向かって右側の目にピントを合わせて撮影すると思いますが、従来であればこのような状況では暗く前髪がかかっている向かって左側の目は認識せず、向かって右側の目「だけ」を認識していました。
しかしEOS R3ではちゃんと両方を認識しています。
これだけ指がかかってても両目とも認識しています。
こんなに暗くて髪に隠れていても、目のおおよその位置を認識して手前の目にピントを合わせようとしています。
背景は真っ暗ですが、実際はある程度頭部にライティングが当たっているとはいえ(※このへんはキヤノンの見せ方の上手さというか、したたかだなとは思いますが)、それを差し引いてもこの暗さとモデルさんの素早い動きの中でのEOS R3の瞳AFの正確さと追随速度は驚愕です。
明るい環境で瞳に追随する速度だけで言えばEOS R5でもα1でもとても高速なのですが、やっぱり前髪が邪魔したり片方の目だけ暗くなっていたりすると認識しやすい方の目しか認識しません。
また瞳認識に関してはよく追随が速いとか遅いといったテストをYouTubeで見かけるのですが、七五三やスクール写真のフォトグラファーならまだしも、モデルさんやタレントさんは、動く→とまる、動く→とまるのポージングを繰り返すので、子供のように常に走り回ったりはしません。
そのため速度的にはEOS R5でも十分に高速で、追随できるかどうかより瞳を認識しにくい髪型やポーズでも確実に「両目を」認識して欲しいわけです。
求めていたのはまさにEOS R3のような瞳認識で、これだけ分厚い前髪をこの暗さで両目を認識してくれるのなら、「奥の目しか認識しなくて面倒臭い」ということはほとんど起こらなくなるでしょう。
キヤノンありがとう。最高かよ。
EOS R5にもファームウェアアップデートで対応して欲しいですが、少なくとも今後出る上級機であれば全機種対応でしょうから安心しました。ちゃんと細かい要望を開発が吸い上げている証拠ですね。
それにしても対応していたとは。長々語ってきた前髪問題はなんだったんでしょう(笑)
人物・動物に加えて、モータースポーツ(車・バイク)も認識可能に。
車・バイク認識は私の撮影に関係ないので、好きにしてもらえばいいと思います。
車とかバイクのどこを認識するのかと思いきや、全体やスポットでの検出が可能だそうです。
バイクやフォーミュラーカーのようなオープンな車体ならヘルメットとか、ラリーカーならボンネットあたりとか、選べるということでしょうか?
モータースポーツを撮影する人にとって便利な機能になっているといいですね。
自分に関係ないことは書くことがないという…。
遥かに実用的になって復活した、視線入力対応ファインダーを搭載
これがEOS R3の目玉機能で視線入力がスムーズで正確に動作するかは、EOS R3の評価を分ける大きなポイントの一つになると思います。
公式の動画を見たところ十分使える速度に見えて、これまでのマルチコントローラーやスマートコントローラーよりも、測距点選択が劇的に楽になると思います。
スポーツ撮影ではクロスプレーの時にも、撮りたい選手の方を見ていればいいだけですから、任意の人物に合わせるのがあっという間であればこの視線入力は革新的なものとなるかもしれません。
先ほど話していたポートレート時の頭部AFだのも、結局のところ視線入力がバシバシ決まるなら自由自在であるわけで、背景ボケを確認するのにピントが合焦しにいかれては困るので、幾らスムーズでも常に視線入力というわけにはいかないと思います。
しかし通常は瞳AFで、認識が上手くいかない時にはAF-ONボタンを押している間だけ視線入力に素早く切り替えられるというようなことが出来れば滅茶苦茶便利なので、あらゆる撮影ジャンルで革新的なAFとなる可能性があると思います。
ちなみに私カメラを使い始めた頃からなぜか人よりもマニュアルフォーカスが得意でしたが、もう最近は静物以外ではマニュアルフォーカスをやる気も全く起きないです。
動体撮影に関してはカメラのAFの方が人間を遥かに超えていますから、あとは撮影者が意図したところを正確に追ってくれるかが重要なので、まさにEOS R3のような視線入力や被写体の画像認識技術の向上が求められているわけです。
それにしても、EOS R3はAFのトラッキング性能スムーズですね。
物理シャッターが無くなったスペースをどう活用するか?
動画用途の高まりも考えると、RFマウントがフランジバックを20mmとミラーレスとしては長めにとってあることからも、キヤノンには上級機にビルトイン方式のNDをスチールカメラにも内蔵する可能性は捨て切れません。
CINEMA EOS C70のビルトインNDフィルター
ただいずれかのメーカーの開発者の中には、もっと進んだアイデアを持っている人がいるかも知れません。
またフランジバックだけを見れば、光学的にはフランジバック長は短いことは長いことを兼ねる(バックフォーカスを長く取りたければ鏡筒を伸ばしてレンズを離せばいいだけなので)わけですが、メカ設計的にはフランジバックを極端に短くすると問題が出てくるので、キヤノン的にはいずれシャッター幕が無くなった時にそのスペースを有効利用できる可能性がなくても、単純にカメラシステム全体の設計のバランスとしてあのフランジバック長が最適だと判断しただけだけかもしれません。
ソニーE→ニコンZの電子接点式マウントアダプターもあることから、わずか18mmと16mmのフランジバック2mm差でもAF対応マウントアダプターを作れるのですから、数十年後の将来再びマウントを変更することになったとしても、その際に20mmのフランジバックなら、AF対応かつ望遠レンズでも強度面でも耐えられる電子接点マウントアダプターを作れるでしょう。
いずれにせよ今しばらくはメカシャッターは残ると思いますが、イメージセンサーにゴミがつくことを防止する役割の方が大きくなりつつある部分もあるので、シャッター幕はセンサー保護のための簡易なものになるか、あるいは完全に姿を消していくのかもしれません。
ダブルスロットのCFexpress+SDカードという選択は正しかったのか?
これはなんとも言えないというか、α1のようなCFexpress Type A/SDのダブルスロットのような愚かな選択はやめて欲しいと思っていましたし、キヤノンやニコンがそんな考え無しの仕様のプロ機を作るとは思っていなかったので、そこはほとんど心配していませんでした。
個人的には、EOS R3にはCFexpress Type Bのダブルスロットが好ましいと思っていましたが、キヤノンも悩んだと思いますが、EOS R3はEOS R5と同じCFexpress Type BとSDのダブルスロットを採用したようです。
もうこの辺は詳しく説明するときりがないのでしませんが、結局のところ、
- EOS R5
- プロ→CFexpress Type B+SDのダブルスロット
- アマ→CFexpress Type B+SDのダブルスロット
- EOS R3
- プロ→CFexpress Type Bのダブルスロット
- アマ→CFexpress Type B+SDのダブルスロット
が汎用性に優れていると思います(各人に最適という意味ではありません。その方が多数派にとって利便性が高いという意味です)。
なので、EOS R5はプロアマ問わずCFexpress Type B+SDのダブルスロットの方が使いやすいと考えて、実際CFexpress Type BとSDのダブルスロットになっていると思うのですが、これはEOS 5D系のような同クラスの一眼レフの機種からの経験から、キヤノン的にEOS R5はCFexpress Type B+SDのダブルスロットの採用に自信があったと思います。
対してEOS R3はキヤノンも相当悩んだと思いますが、キヤノンが想定するEOS R3の購入層を考えた時に、これが最大公約数的に利便性が高いと読んだのかと思います。
私はEOS R3に関してはCFexpress Type Bのダブルスロットにして欲しかったのですが、「すべきだったと断定できるか」というと難しいところで、キヤノンの判断にも一理あると思います。
ニコンのZ 9はCFexpress Type Bのダブルスロットで来るのでしょうか。噂されている画素数などを考えればそれが賢明だと思います。
連続動画撮影最長6時間に対応
ようやく29分59秒までの連続撮影時間制限がなくなりYouTuberの方も喜ばれることでしょう。本当はYouTuberに適した動画用途であればもっと違う機種があると思いますが、連続撮影時間の制限はキヤノンの動画機能の弱点でもあったので、これは実用的で良い進化でしょう。
インタビュー撮影なども何も考えず長回しでいいわけですから、普段はスチールのインタビュー撮影をするフォトグラファーが簡単な動画を頼まれた際にも有用です。
またEOS R3は排熱も強そうなので、長回しも安心して出来そうです。
4K Canon Log 3に対応
私は動画は専門ではないのでLog撮影をしていないので、詳しい人たちが語ればいいと思います。
4K オーバーサンプリングの実現
これも私は動画は素人なので、動画に詳しい人たちが語ってくれることでしょう。オーバーサンプリングvsドットバイドット議論とか面白いですよね。
画素数が2,410万画素で4k動画だと、ベイヤーセンサーでは4画素1組ですから、オーバーサンプリングするというのは妥当な判断だと思うのですがどうなんでしょう?さっぱり分かりません。
RAW動画内部記録
実際に「RAW動画撮影をするような人」がEOS R3を敢えて選ぶかという疑問はありますが、AF的な理由から動画用途で敢えてEOS R3を選ぶ人もいるのかも知れないので、内部記録できないよりはできた方が良いのでないでしょうか。
分からないことや知らないことを正直に言う方が良いでしょう。動画の項目は私にはさっぱりわかりません。
動画撮影中に人物・動物・モータースポーツの被写体追尾が可能
本当にフォトグラファーは、昔のような写真技師の時代から(昔は「写す」と「現像する」というだけで専門的な知識が必要な時代がありました)より、操作ではなく表現のための技術やクリエイティブな才能が求められてるのだと思います。
実際の動画中の追尾を見ると物凄くスムーズで良いと思います。動体予測のアルゴリズムが上手いのか、追いかけているというより、常に次にどの位置にいるかを把握してピントをスムーズに送っている印象です。
もちろん従来から追尾のアルゴリズムとは「先を読んで」ピントを動かすというものでしたが、EOS R3はそれがよりカメラが被写体の動きを(ほぼ)完全に読みきっているという印象を受けます。
ただ相当速いといっても、モータースポーツやスキーのような曲線的な動きの作例なので、これが急にターンするようなスポーツシーンでもここまでガッツリ追尾するのかは見てみたいところですが、この様子だとおそらくそれも大丈夫なのでしょう。
5GHz無線搭載でも悩ましい無線でのテザー撮影速度
これ搭載してくれてると嬉しいですね。ただ内蔵タイプなので、ワイヤレスファイルトランスミッターWFT-E9Bのように100m以上も飛ばせるような強力なものではないのではないかと思いますが、あれば嬉しいですよね。
私はスポーツフォトグラファーではないので、大きな会場で撮影データを長距離飛ばすといったことはしないのですが、スタジオでのテザー撮影はEOS R5の内蔵Wi-Fiを使ってPCに送信することはままあるのですが、この内蔵Wi-Fiが快速とは言えません。
キヤノンの人によるとPCの性能にも影響される場合があるそうなのですが、テザー撮影するのに家でレタッチで使っているデスクトップPCをスタジオに一々持ち込むわけにもいかないですし、それで劇的に速度が変わるとも思えないので、Mac Book Proを持っていきいます。
そもそもPCというよりは、単純にEOS R5のデータが大きすぎるせいだと思いますが、無線でのRAWの転送は私の感覚では全くダメと感じるくらい遅いです。
別にテザー撮影の転送画像はJPEGでも全然構わないので、JPEGだけを転送するのですが、JPEGでも最高画質だとそれなりにもっさりしています。
そのため結局有線で繋ぐのですが(有線の方が圧倒的に高速です)、ホリゾントスタジオや普通のハウススタジオ内などでは有線でいいのですが、ハウススタジオで外の庭とかプールサイドで撮影してPCは屋内あるというような場合有線は使いづらいので無線で送らざるを得なくなります。
そもそもテザー撮影といっても、私がテザー撮影したいのではなくて(自分はカメラで確認してますから)、モデルさんの事務所の人とかタレントさんのマネージャーさん側からの「PCで見たい」という要望からテザー撮影になることの方がずっと多いわけです。
なのでPCを見たいマネージャーさんとかにあまり近くにいられても邪魔なので(ライティング機材とかもゴチャゴチャしていて危ないですし)、出来れば5メートルくらいは離れたところにPCを置いて見てもらいたいのですが、そうするとUSBケーブルも限られてきますし結構かさばるので、無線の方が取り回しが良くなるわけです。
しかし無線だと遅いのでRAW+JPEGでJPEGを小さいサイズに設定して、JPEGだけ転送してモニターの全体表示でパッと確認するだけという風にしていますが、それはそれでJPEGの最大サイズを残せないので撮っている側としてはデメリットにしかなりません。
EOS R3は画素数が2,410万画素ですから、EOS R5よりデータが軽いので、JPEGのラージ/ファインでも快適に転送できるのかも知れません。それなら大分いいなと思います。
本当は2021年にカメラにUSBケーブルつけてテザー撮影なんてしたくないんですよ。でも取り回しはともかく、転送のレスポンスにおいて今でも有線は無線を圧倒しています。
■EOS R3の外装などについて
EOS-1D系と同等の防塵・防滴性能
堅牢性や信頼性はスポーツフォトグラファーや報道カメラマンにとって生命線ですから、そうしたフォトグラファーを対象としているEOS R3も当然EOS-1D系と同等でなければならないわけです。
理屈の上では、クイックリターンミラーのような堅牢性と軽量化の両立が難しい部材が減る分、ミラーレスの方が堅牢性は上げ易いでしょうから、1D系よりも軽量でありながらより信頼性が高いという進化をEOS R3やEOS-R1には求めたいところです。
防塵防滴性はミラーレスでもレンズ交換式である限りは原理的に極端に有利になるわけではないと思いますが、まあこれからも頑張って向上させていっていただければと思います。
快適な操作性を備えた縦位置グリップ一体型ボディー
バッテリーグリップ一体型には多くのメリットがあり、
- 縦位置グリップとの連結部がないため、ボタンやダイヤルの配置の自由度が高く、縦位置横位置いずれでも同等の操作性を実現でき、かつボタンやダイヤルの数の増やしたり、操作部を大きく作ることができます
- 縦位置グリップとの連結部が無い構造であるため剛性感が高くなり、大型のレンズを付けた場合の操作性にも安心感が高まります
- 分離型のように重心が下に偏ることがないため、重心がマウントに近く縦位置横位置の持ち替えが楽になります
- 分離型のように連結部から雨や雪などが入らないため、特に縦位置撮影時で上から降って来る雨や雪に強くなります
- 一体型は分離型よりも内部スペースが広いため、排熱などに有効活用しやすくなります
これらが、スポーツフォトグラファーや報道カメラマンが使うことを重視して作られていた、EOS-1D系やニコン1桁機が一体型を採用していた理由で、当然EOS R3もニコンのZ 9もバッテリーグリップ一体型を採用してきました。
なので一体型を採用したことはもう当然ですね。
逆にこれが分からないのが分からない。フラッグシップ機を分離型にしてオリンピックで惨敗したどこぞのメーカーは写真撮ったことないのでしょうか?
EOS R3の操作系で唯一不満な点は上面のMODEボタンで、ここはモードの変更時に「上面液晶モニターの表示も含めて」操作性が良くないと思っているので、改善すべきだと思います。
マグネシウム合金採用ボディー
まあこれはこのクラスではいつものことで、特に言うこともないのですが、カメラメーカーとしてはさらに進化した素材なども研究しているのでしょうか?
カメラの場合、排熱も必要なので単に軽くて強度高ければ良いというわけではないですし、市場規模からしても、優れた材料が常識的なコストで採用できるというのが他の業界で実現してから「じゃあカメラにも使えないだろうか?」となるのだろうと思いますが、内部の細かいパーツの部材は変化してきましたが、外装はもう長いこと上位機=マグネシウム合金という時代が続いているので、そろそろ新しい素材が出てきたら面白いんじゃないかと、お気楽に期待しています。
あと新しいパンチングレザー格好いいですね。昔ソニーがNEX時代にパンチングレザーを採用したことがありましたが、なんで捨ててしまったのでしょうか?勿体無い気がしましたが、まさかここでキヤノンが採用してくるとは。
未来感がある造形ともマッチしていて素晴らしいデザインだと思います。
マルチコントローラー、スマートコントローラー
おおよそこういう感じのレイアウトになることは多くの方が予想されていたとは思いますが、EOS R3では視線入力も追加されたため、測距点選択をするための機構が、マルチコントローラー、スマートコントローラー、タッチ&ドラッグAF、視線入力、ダイヤル操作など数多く搭載されており、
- ダイヤル操作→あえて使えないようにする理由がない
- タッチ&ドラッグAF→これもあえて出来なくする理由がない
- スマートコントローラー→指での素早い測距点選択に有用
- マルチコントローラー→スマートコントローラーよりも悪天候時に強い
- 視線入力→より簡単に素早く測距点選択を行うためのEOS R3の目玉機能
といったことを考えると、それぞれに存在する理由があるとはいえ、ちょっと機能的に被ってきているため、今後どう発展していく(あるいは整理していくのか)は気になるところです。
スマートコントローラーは雨や雪といった悪天候時は反応が悪い場合もあるものの一応手袋での操作にも対応しているため、スマートコントローラーや視線入力が今後も強化され、総合的に悪天候でも問題なく素早い測距点選択が出来るようになれば、長らく背面の一等地で活躍してきたマルチコントローラーもより有用な機能が発見されれば、違う操作系へと変わっていくのかも知れません。
メニュー操作でマルチコントローラーを使う人もそれなりにおられるのですが、習慣的に指が届きやすいそこにいくというだけで、メニュー操作のためだけであれば現在のマルチコントローラーの形状である合理性は薄いような気もします。
背面に余裕がある一体型ボディゆえの、ある意味で贅沢な悩みではありますが、今後どう進化していくのか期待したい点です。
メイン電子ダイヤル、サブ電子ダイヤル2つの合計3つの電子ダイヤル
露出の三大要素である、
- 絞り
- シャッタースピード
- 感度
これらをそれぞれに操作することを考えた場合、特に中級機以上では、ダイヤルが3つ以上必要になるわけです。
現代のミラーレスカメラのある程度のクラスより上は、絞り・シャッタースピード・感度をそれぞれ別のダイヤルで独立操作できるようになっており、EOS R5やEOS R6も同様ですから、まあ敢えてアピールする程のことでもないような気はします。
バリアングルモニターは単なる縦位置撮影や自撮りのためではない
可動式モニターにも、
- バリアングル
- チルト
- 三軸チルト
などがあり、それぞれメリットデメリットがあるので、どれが一番良いとかいうことはありません。人と用途によります。
最近なぜか「三軸チルトはチルトとバリアングルの両方の良さを兼ね備えた上位互換」といった盛大な勘違いをされている方もたまにおられるようですが、そんなことはありません。
そのため、パナソニックも富士フイルムもソニーも、チルトにしてみたりバリアングルにしてみたり三軸チルトにしてみたりと、機種によって変えているわけです。
バリアングルモニター=自撮り、という目的とは限りません。実際シネマカメラや業務用のムービーカメラのような、自撮り撮影を想定していない高級機ほど、
- バリアングルモニター
- 側面に設定用のモニターのみ
- 外部モニターが前提でモニターがない
こういう機種が多く、シネマカメラで背面チルトモニターなんてほとんど見ないでしょう?
動画用途でしかもシネマカメラなら横位置撮影しかしないのだから、一旦横に開いてから角度を調整するバリアングルより一発で角度を変えられるチルトモニターの方が便利そうに思われるかもしれませんがそうではないのです。
ショルダータイプでなくとも動画撮影では横にモニターが出てくれた方が使いやすいので、動画機はバリアングルモニターや外部モニターを付ける前提に作られています。
理由は皆さん自身で考えて欲しいと思いますのでここでは敢えて書きませんが、暇なときにでも考えてみると可動式モニターへの理解が深まるのではないでしょうか。
ヒントとしては、カメラを三脚に乗せて、背面にチルトモニターや(光軸上で動くタイプの)三軸チルトモニターあると仮定し、カメラの真後ろに立って、モニターを見ながらズーミングやピント送りなどの動画のカメラワークをスムーズに行えるか試してみればすぐ分かると思います。大抵の人は「やり辛い」と感じると思います。
さらにサービスでVIDEO SALONさんの動画を一つおいておきます。
静止画と動画では、三脚やカメラに対する撮影者の立ち位置が異なるということに注目していただければ、なぜ業務用動画機のモニターが背面ではなく側面に出るようになっているのか分かるのではないでしょうか。
他にもバリアングルモニターを採用する理由があるのですが、こういった最近よく見かけるブラシレスジンバルにカメラを乗せたとして、背面で動くチルトモニターや三軸チルトモニターと、モニターが横に出てくれるバリアングルモニターでどちらがモニターを見やすいでしょう?
なぜ動画撮影を重視した機種がチルト式や三軸チルト式ではなく、バリアングルモニターを採用する傾向にあるのか分かってきたのではないでしょうか?
結局、可動式モニターは「どれが一番良い方式」いったことは言えず、用途や使い方によって変わってくるということです。
話は戻りますが、結局キヤノンはこれまでの自社の経験則やユーザーデータや動画撮影などを考慮してバリアングルモニターにしたのだと思いますが、妥当な判断だったのではないでしょうか。
データ通信や電源供給が可能な新アクセサリーシュー搭載
これはまあ将来性を考えればどこかで対応すべきことだったので採用したこと自体は良いと思いますが、それなら8K動画を搭載したEOS R5から搭載すべきだったのではないかという気はします。
ただこれまでのEOS用のアクセサリーも使えるというのはとても大きなポイントかなと思います。
クリップオンストロボライティングが主体ではない私ですら、クリップオンストロボは今家に6台くらいはありますから、七五三やブライダルのフォトグラファーのように、クリップオンライティングが多いフォトグラファーにとっては今までのストロボが使えるかどうかは重要なポイントでしょう。
前のホットシューのストロボが使えなくなるような、汎用性の無いホットシューの変更なんてダメですから。
私はスピードライト EL-1のようなみたいな純正クリップオンストロボは使っていないので、Godox V860II-CとかGodox V860III-Cとかですが、それでも2万円〜2万8000円くらいのストロボ6台とトランスミッターが全部使えなくなるとか普通に嫌ですから。
もっと持っているであろう、七五三やブライダルの人たちなんかは絶対嫌でしょう。キヤノンのユーザーが多いジャンルですし。
あとは恐らく誰もが心配しているのが堅牢性や耐久性でしょう。
まあその点はソニーがマルチインターフェースシューで散々やらかしましたから、それを踏まえてキヤノンは設計したはずで、接点やロック機構の強度は十分考えて作っているだろうとは思いますが、今のところはまだ何も確証はないので実際にどうなのかはこれから分かると思います。
防塵防滴に関しては、使用自体は従来のEOSのホットシュー対応アクセサリーをそのまま挿すだけで使えるものの、防塵防滴対応のスピードライト EL-1などのアクセサリーを使うにはマルチアクセサリーシューアダプター AD-E1が必要になります。
アダプターが必要になるのは仕方がないにしても、マルチアクセサリーシューアダプター AD-E1はもっと薄型に出来なかったのかなとは思います。
あれだと幾ら強度があっても嵩張りますし、流石に合成感の低下は感じるだろうと思います。クリップオンストロボってそもそも小さな場所にそこそこ重くて高さのあるものを取り付けるわけですから、強度は相当ないとダメです。
まあクリップオンストロボを付けた状態で土砂降りで撮影するフォトグラファーは多くはないでしょうし、逆に冬季オリンピックのような過酷な環境で撮影するスポーツフォトグラファーはクリップオンストロボは基本的に使わないので、付属のホットシューカバーを付けておけばホットシューも防塵防滴になるわけですから多くのフォトグラファーにとっては、実用上は問題ないとは思います。
ですが、ホットシューの仕様を変更するということ自体結構デメリットも伴う部分なので、せめて先んじて(あるいはEOS R3の発売と同時に)、アクセサリーの側を新しいホットシューに対応したラインナップを即座にラインナップして変更すべきで、マイクとかスマートフォンと接続するアクセサリーなんかよりも、新型ホットシューに対応したクリップオンストロボを少なくとも中級機と上級機の2機種はラインナップしておくべきです。
現行の最上位の純正クリップオンストロボであるスピードライト EL-1ですら、アダプターを使わないと使用できない(防塵防滴にならないだけではなく、使用できないことがマニュアルに記載されています)という仕様は正直「馬鹿かよ」とは思います。
しかも、スピードライト EL-1の発売日は2021年02月、つまりEOS R3と同じ年に発売した防塵防滴仕様の最上位機の純正クリップオンストロボが、アクセサリーを付けないと使えないといういうのは、ストロボ開発との連携が取れていないにもほどがあると思います。
繰り返しになりますが、私は将来を見越してホットシューに電子接点を追加すること自体には賛成です。そもそも昔のコールドシューに接点を追加して利便性を高めたのが今のホットシューなのですから、将来的な利便性のために必要なことだと思います。
なので「準備不足な状態で新型ホットシューを採用した」という点を指摘しているわけです。
■EOS R3の総合評価
画質面に関して
あくまで主観ですが、画質だけだとDPREVIEWなどのサンプルを含めて見てもEOS R5の方が綺麗に見えます。
特にPicture Style Editorで適切に設定された状態のEOS R5のポートレート画質は、現在フルサイズセンサー機の中で全てのメーカーでトップだと思います。
そのくらい圧倒的に安定して綺麗です。「綺麗さが圧倒的」なのではなく「綺麗に写る確率」が飛び抜けているということです。
話はEOS R3に戻りますが、EOS R3はキヤノンのフルサイズ機で初の裏面照射型積層イメージセンサーを採用するわけですが、画質面に関しては心配はなさそうです。
ただ実写の画像を見ると、低感度画質だけで言えばEOS R5の方が私の目には綺麗に見えるので、その点は「うーん…」と思う部分もあります。
DxOのセンサーレーティングなんかどうでも良くて、実写を見てそう感じるなら、もうそれ以上の基準はありません。写真の最終的な判断は人間の感性でするもので、機械で計測した数値を比較するものではないからです。
まあこのあたりはキヤノン自身EOS R3の画質を「画素数で上回るEOS 5D Mark IVをしのぐ解像性能を実現しています。」という表現にとどめており、実際、低感度画質はEOS R5に及ばないのだろうと思います。
ただ低感度画質もEOS R5に大幅に劣っているとかそういった意味ではなく、使っていて画質に不満が出るようなものではないと思います。
それにEOS R3とEOS R5は本来は用途が異なるカメラで、私はほとんど低感度でしか撮影しないわけですから、低感度画質だけを比較してもEOS R3の画質面での真価は分からないのかもしれません。
スポーツフォトや報道写真のような、暗い環境下でもライティングなしで撮影したり、高速シャッターを求められる用途なら、高感度画質が非常に重要になってきますから、DPREVIEWの水族館のサンプルを見ると素晴らしい高感度耐性だと思いますから、スポーツフォトや報道用カメラとして十分以上の良好な画質だと思います。
機能面に関して
EOS R3はこれまでEOS-1D系でやってきたような、安定的性を重視したスペックなので不安要素はないと思いました。
特にEOS R3のAF関係は、操作性から機能性から、これまでの不満点をことごとく改善してきていて滅茶苦茶良いと思います。
単純にAF速度が速いとかどうとかではなくて、カメラ史上最高の使いやすさを実現しているAFではないかと思います。
価格面に関して
個人的にはEOS R3の価格コム最安値は¥673,200ですから、思ったより安いと感じました。α1の価格コム初値最安が¥782,633で、縦位置グリップVG-C4EMの初値最安が¥33,936ですから、バッテリーグリップを付けた状態だと、合計で¥816,569円です。また、EOS-1D X Mark IIIの初値最安が¥791,999です。
- EOS R3:税込¥673,200(最安初値)
- EOS-1D X Mark III:税込¥791,999(最安初値)
- α1+VG-C4EM:税込¥816,569(最安初値)
となるのですが、この3機種の中でEOS R3が明らかに優れていると思っているので、個人的にはEOS R3の性能を考えればかなり安いと思います。
もちろん絶対的な価格で言えば、EOS R3は一般的にみて「とても高価なカメラ」にカテゴライズされるわけですが、EOS R3が現時点ではラインナップの一番上になるかなりの上級機であることと、経済成長率が低い日本人にとって近年カメラやレンズ全体が高すぎるというのが原因だと思います。
EOS R3は総合評価95点
実際の出来がどうかは実機を見ないと確定できませんが、現時点で分かっている部分を信用する限り、ここ10年のキヤノン機の中でも最高の出来で95点くらい。
マイナス5点は、
- 低感度画質はEOS R5に負けていると感じる点→-1点
- バッテリーが従来のLP-E19で大容量化されていない点→-1点
- メモリーカードがCFexpressのダブルスロットではない点→-1点
- MODEボタンとモード表示に改善が見られない点→-1点
- 新型ホットシューの対応の仕方が準備不足な点→-1点
大きなものではないですが、多少不満に感じたのはこのあたりだけです。
実用性において、まさに「無双」のカメラ
EOS R5とEOS R6はキヤノンのミラーレスの暁を感じさせる何かがありましたが、どうやらEOS R3でキヤノンはミラーレスのコツというか真髄のようなものをレフ機時代と同等かそれ以上のレベルで掴んだようで、相当な手応えがあるのだろうと思います。
カタログスペック上の話ではなく、実用性においてEOS R3は動体撮影のジャンルで無双できるという確信を得て、だからキャッチコピーを「無双」にしたのだろうと思いますし、EOS R3の公式動画などを観ても「実際に使えば競合機を圧倒していることが分かるはず」という自信が随所に漲っています。
カタログスペックではなく実用性において、EOS R3でキヤノンは競合他社を完全に置き去りにし、数年先を行っていると思います。
またEOS R3に対してどう感じるかで、その人が本当に「撮影」に詳しい人かどうかもすぐ分かります。
- 「すごいカメラを出してきたな」と思う人→詳しい人
- 「特に飛び抜けたスペックではないな」と思う人→にわか
です。
常々申し上げているように、こういうカタログスペックに現れない部分に気付けるかどうかが大事で、EOS R3を見るに、これからミラーレスでもキヤノンはプロ市場で当分独走していくと思います。そして他社はなぜスペックは負けていないのにキヤノンばかりプロに使われるのか分からないという状況に陥っていくでしょう。
しかしEOS R3が圧倒的なのは仕様表で分かるようなスペックではなく実用性なのですから、そこに気づかない限りいつまでも追いつくことは出来ません。
逆にキヤノンは、EOS R3で掴んだカメラ作りを普及価格帯の機種にも盛り込んでいけるかが今後のポイントになるでしょう。プロ機を作るのが上手いから入門機を上手く作れるとは限りません。
そしてEOS R3を買うべきかどうかですが、「現在ニコンユーザーで、Z 9を待っている」という人以外で、予算があるのならEOS R3を即予約すべきです。
それほど良く出来たカメラですし、世界中のスポーツや報道をはじめとしたプロフォトグラファーがEOS R3を買いまくって、あっという間に品薄になることは容易に想像できます。そしてそれは簡単には解消されないでしょう。
ただ私はEOS R3を購入する予定はなく、理由としては、
- 低感度での撮影がほとんどであること
- 高画素が必要な撮影がそれなりにあること
- メイン機とサブ機で画素数を揃えておきたい
という点などがあります。3の「メイン機とサブ機で画素数を揃えておきたい」というのは、
- カメラ1に標準ズーム+カメラ2に単焦点レンズ
このようなパターンで撮影していることが多く、その理由はレンズ交換は時間がかかるのでレンズ交換を妥協してしまう場合があるため、サブ機を利用して2台体制でそれぞれに違うレンズを付けっ放しにしてカメラを持ち替えた方が早いというわけです。ゴミも入りませんし。
しかしこの方法だと、2台のカメラで撮影しているのでカットごとに画像サイズや写り方が大幅に変わってしまうと困るので、2台は同じ(もしくは同程度の)画素数のカメラにしたいという部分があって、そういった幾つかの理由から、EOS R5 IIが登場するまではEOS R5でいこうかなと思っています。
ただEOS R5の瞳AFはファームウェアアップデートでEOS R3並にして欲しいと強く願っています。あれだけの悪条件でも両目を認識してくれるのは夢のような性能です。
もし自分がスポーツフォトグラファーだったなら、EOS R3は即買いしていると思いますし、高画素が必要のないジャンルを撮影されている方であれば、EOS R3は非常におすすめできる機種だと思います。
Reported by 正隆