色温度のK(ケルビン)って元々はどんな意味?

画像:https://ja.wikipedia.org/

フォトマスター検定の予想問題です。フォトマスター検定勉強法も掲載していますので、参考にして頂ければと思います。

過去の各級の予想問題のまとめ

合格目指してさっそく問題です!

難易度:1級レベル

問:カメラで色温度を表す指標として使われる単位にK(ケルビン)があるが、この「ケルビン」の元となったのは何か?次の中から選べ。

① ツァイスのパウル・ルドルフが物体が温度によって色が変わる現象を写真表現で使えるよう0から9999までの数値に当てはめたもの
② 写真の色調を示すための指標としてフランス人発明家ジョゼフ・ニエプスが写真業界で使われていなかったKを単位にして提唱したもの
③ 熱力学温度の単位で絶対零度を0K(ゼロ・ケルビン)を基準とし物理学者ケルビン卿の名をとって表したもの

正解はこのあとすぐ!

■正解は③(熱力学温度の単位で絶対零度を0K(ゼロ・ケルビン)を基準とし物理学者ケルビン卿の名をとって表したもの)


①と②の選択肢の解説

今回の問題は物理を勉強した方には簡単というか習った事があると思いますし、それ以外の方にはかなりカメラに詳しくないと知らないかと思います。

まずは不正解の、

  1. ツァイスのパウル・ルドルフが物体が温度によって色が変わる現象を写真表現で使えるよう0から9999までの数値に当てはめたもの
  2. 写真の色調を示すための指標としてフランス人発明家ジョゼフ・ニエプスが写真業界で使われていなかったKを単位にして提唱したもの

この二つに関して簡単に説明しておくと、

①はツァイスの有名な設計者で「パウル・ルドルフ」といえば、ドイツの物理学者でレンズ設計者でもあり、「プラナー」や「テッサー」といった現代でもレンズ設計に発展型が使われている有名なレンズを発案した天才設計者です。ただし、色温度の「ケルビン」とは関係がありませんから不正解となります。

次に②ですが、フランス人発明家のジョゼフ・ニエプスは色温度ではなく、1825年に写真そのものを発明した人で、まさにこの人なしで写真の歴史は語れないという偉大な発明家ですが、やはり「ケルビン」とは無関係であるため不正解となります。

物理現象を元に決められたケルビンの単位

では問題のケルビンですが、簡単にまとめますと、

  1. 宇宙で存在しうる最も低い温度が絶対零度(-273.15℃)
  2. この絶対零度である-273.15℃を0として温度を表現したものが「絶対温度」でこの単位がK(ケルビン)と定められた
  3. ケルビンの由来は1848年にケルビンを提唱したイギリスの物理学者ウィリアム・トムソンの爵位である「ケルヴィン卿」に由来する

というわけです。

物理の世界では温度が下がるほど物体は小さくなり、理論上-273.15℃以下の温度では物体は消滅してしまいます。

在るものが消滅するのはおかしいので、宇宙には-273.15℃以下の温度は存在し得ないとされています。

現在観測されている最も低い温度は、ブーメラン星雲の-272℃で、これはケルビンに変換すると、わずか1Kとなります。

なぜ℃ (摂氏:セシウス温度)ではなくK(ケルビン)を使うのかというと、物理の計算をするときにマイナスの数値があると計算が面倒になるため、宇宙で存在しうる最も低い温度が絶対零度であるならば、それを0とした温度の単位があった方が計算がわかりやすいという理由から発明されました。

ドイツの物理学者ガブリエル・ファーレンハイトが1724年に提唱した°F(華氏)も乱暴に言ってしまえば、「ファーレンハイトにとってその表記が便利だから」というような理由で提唱し、それが広まったのですが、それと比較するとK(ケルビン)は物理学者にとっては結構納得のいく温度の単位ではないでしょうか。

また我々がよく使っている、℃(摂氏)は、スウェーデンの天文学者であったアンデルス・セルシウスが、水の氷点を0℃、沸点を100℃と設定し決めたものですから、℃(摂氏)の方がK(ケルビン)よりも適当な理由で決められたと言えるのかもしれません。

それと比較すると、宇宙に存在しうる最も低い温度である絶対零度を0Kとする絶対温度の方が理論的な気もします。

K(ケルビン)は写真表現にも転用され、ケルビンが低いほど赤に近く、ケルビンが高いほど青に近くなるということを表すためにK(ケルビン)が使われるようになりました。

余談ですが、光は波長が短いものほどエネルギーが大きくなります。つまり、赤は波長が長く青は波長が短いために、青の光の方がエネルギーは大きいのです。

赤っぽい色調を暖色系、青っぽい色調を寒色系と呼んだりするので、少し意外な感じがしますが、実際は青の光の方がエネルギーが大きいのです。

逆に発している色から温度を推察することもできます。赤いろうそくの炎よりもガスコンロなどの青い炎の方が温度が高いといったことは多くのかたがご存知だと思います。

色温度は物理法則のエネルギー量に準じるため、青い色の光を放つガスコンロの炎の方が赤い光のろうそくの炎よりもエネルギーが多く高温であることが分かるわけです。

カメラにおける色温度設定の違和感の正体

ただ皆さんもご存知のように、カメラの設定では環境光の色かぶりなどを補正するためにホワイトバランスを設定するため、カメラの設定では、K(ケルビン)値を下げると写真は逆に青っぽくなり、K(ケルビン)を上げると写真は赤っぽくなります。

カメラのホワイトバランスのK(ケルビン)値の設定は、逆の方向に色が変わるわけです。

これは「その環境光の色温度をカメラに設定する」という考え方であるため、逆に動いているわけでもないのですが、例えば「5300KのLED定常光でライティングする」といったような人工光源によるライティングならまだしも、風景撮影などで「この環境光は○○ケルビンの光だな」という感じで考える人は少ないと思いますので、ホワイトバランスのケルビン値を上げると赤っぽく写る、下げると青っぽく写ることに、多少の混乱や違和感を感じる場合があるのではないかと思います。

というわけで、今回は写真の色温度を表すK(ケルビン)の由来についてお話ししました。

Reported by 正隆