ソニーがいない世界線では多くのカメラメーカーが幸せだった?

SONY
画像:SONY(https://www.sony.co.jp/)

皆さんこんにちは。

初のフルサイズミラーレス機となる、α7が発売された2013年後半から、α1が発売された昨年2021年前半までの約8年間、カメラ業界の話題の中心はソニーであったと思います。

しかし、同時にカメラ業界でのソニーの躍進に連動する形で多くのカメラメーカーが衰退していったことも事実です。

もしもソニーがレンズ交換式カメラ業界に参入しなかった世界があったなら、一体どうなっていたでしょうか?

目次
  • ソニーによって衰退した多くのメーカー
    • ニコン
    • オリンパス
    • パナソニック
    • ペンタックス
  • ツァイスさえも自社ブランドのかませ犬にしたソニー
    • ツァイスまでもG Masterレンズの踏み台に利用したソニー
    • ツァイスとの約束もあっさりと反故にしてAマウントを捨てたソニー
    • デジカメWatchのインタビューでも堂々と嘘をついていたソニー
  • カメラ業界を荒らし回った末に自ら滅びゆくソニー
    • カメラ業界を荒らすだけ荒らしてキヤノンに返り討ちにされつつあるソニー
    • もしもソニーがカメラ業界に参入していなかったら?

そこで今回は、ソニーが存在しなかった世界線のレンズ交換式カメラ業界を想像してみましょう。

■ソニーによって衰退した多くのメーカー


ニコン

おそらくニコンはソニーからレンズ交換式カメラ用のイメージセンサーをもっとも買ったカメラメーカーでしょう。しかし同時にソニーによって最も打撃を受けたメーカーと言えます。

かつてニコンと言えば、長らくキヤノンと並び「カメラ業界の二強」と呼ばれていたわけですが、ソニーのフルサイズミラーレスの攻勢によって、その地位を奪われてしまいました。

もしもソニーがカメラ業界に参入せず、昨今の「フルサイズミラーレス」という大きな流れが起こらなかった、あるいは緩やかにシフトしていれば、ニコンは今も二強の地位を保てていたでしょう。

そもそもソニーはどう見てもニコンを潰しにかかっているとしか思えない時期がありました。

例えば、こちらの海外ソニーのα UNIVERSEの記事は名指しでニコンZ 6Z 7のネガティブキャンペーンを行なっています。

ここまでではないものの、日本版α UNIVERSEでも同じような趣旨の記事が掲載されたことがありました。外部のカメラマンによる寄稿といった形を取っている点がまた姑息さを感じさせます。

しかしメーカー公式サイトが、このように名指しで競合メーカーをディスる記事を掲載することは極めて稀なことです。

それにしてもレンズ交換式カメラ用イメージセンサーの一番のお得意さまであったニコンを潰しにかかるソニー、まさに「恩を仇で返す」というに相応しい所業と言わざるを得ないでしょう。

オリンパス

デジタル一眼レフ時代苦戦していたオリンパスですが、ミラーレスによって一気に息を吹き返し、また自らが火付け役の一端を担ったカメラ女子といったブームにも助けられ、オリンパスは一時は隆盛を誇りました。

しかしながら、そうしたオリンパスの生き残りの道を潰しにかかったのも、やはりソニーでした。

センサーサイズの違いをことさらにアピールし、まるで「全ての写真愛好家やカメラファンにフルサイズ機が必須」であるかのように喧伝し、マイクロフォーサーズを陣営を潰したのは紛れもなくソニーだったでしょう。

ソニーさえいなければ、オリンパスは今もOMデジタルソリューションズになることもなく、ミラーレスのトップメーカーでありえたのかもしれません。

そもそも、一眼レフとミラーレスの共存という可能性を潰し、「フルサイズミラーレスでなければカメラとして価値がない」という潮流とイメージを作っていったのがソニーでした。

パナソニック

皆さんご存知のように、そもそも「ミラーレス」というシステムを最初に作ったのはパナソニックです。

しかしソニーはパナソニックが苦心して考え出し、LUMIXがブランドイメージとして定着させた一眼動画需要に関してもソニーはもろにかぶせてくるという、プライドも独自性もない手法によってLUMIXを潰しにかかりました。

もしもソニーがいなければ、パナソニックは「動画ならLUMIXだよね」という地位を今も維持し、一定のシェアを長期にわたって維持できていたのかもしれません。

ペンタックス

一眼レフ主流の時代にミラーレスという新たなシステムが誕生し、レンズ交換式カメラの主流はやがてはミラーレスへと移り変わっていくことは多くの人が予想できたと思います。

しかし、

  • 時代はフルサイズミラーレス
  • フルサイズミラーレスにあらずんばカメラにあらず

といったイメージを近年カメラマニアに強く植えつけていったのはもちろんソニーです。

そのため元々はコンパクトデジタルカメラと一眼レフの中間的立ち位置で、一時は「ブリッジカメラ」というような呼ばれ方もしていたミラーレスが、ソニーによって「ミラーレスであってもフルサイズセンサーでなければ価値がない」という空気が醸成されていきました。

そうした状況の中、一眼レフに特に思い入れ強く、また開発リソースの関係からフルサイズミラーレスを積極的に開発することが出来なかったペンタックスも、ソニーによってAPS-Cおよびフルサイズイメージセンサーの一眼レフ市場を削られ、どんどんやせ細っていきました。

ソニーがいなければ一眼レフ時代はハイアマチュア・プロ向けにもう少し長く続いていたはずで、ペンタックスのミラーレスシステムへの移行も可能であったのかもしれません。

しかしソニーがフルサイズミラーレスを急速に広めてしまったために、ペンタックスの開発速度では一眼レフ市場に残らざるを得ない状況となりました。

 

■ツァイスさえも自社ブランドのかませ犬にしたソニー


ツァイスまでもG Masterレンズの踏み台に利用したソニー

伝統あるツァイスもソニーの被害者といって良いでしょう。

ソニーがレンズ交換式カメラ事業に参入する際、カメラメーカーとしてのブランド力に乏しかったソニーは、ツァイスに頭を下げ業務提携し、α系のスチルカメラでもツァイスブランドを使わせてもらえるようになりました。

それが今ではソニーはそのツァイスブランドを利用する形で、事実上ツァイスレンズの上に自社の「G Master」シリーズをラインナップし、ツァイスをかませ犬扱いにして自社のブランド価値を高めています。

ご存知のようにパナソニックも長年ライカと提携しており、かつてライカ銘のレンズなどを「パナライカ」と揶揄するように言われた時期もありましたが、パナソニックはライカに対するリスペクトを忘れず誠実な提携姿勢を続け、今では「パナライカ」はむしろ褒め言葉になっているように思います。

ツァイスを自社のG Masterブランドの踏み台に利用したソニーとは大違いです。

ツァイスとの約束もあっさりと反故にしてAマウントを捨てたソニー

ちなみにソニーが出している、My Sonyメールマガジンの2008年11月6日号の特集記事は「ソニー×カール ツァイス 被写体の美しさをあますところなく表現するために」というもので、ソニーがα事業においてツァイスと提携した際の逸話が掲載されており、その中でソニーの勝本徹氏がツァイスの経営陣から以下のようなことを問われたと書かれています。

“勝本さん、ソニーはこれから100年一眼レフのビジネスをやっていく覚悟がありますか?一眼レフのビジネスは、単にカメラを売れば済むものではない。お客様は、“α”マウントがずっと存続することを信じて、ソニーへの信頼にお金を出してくれるのです”

そうしたツァイスの問いかけに対し、勝本氏は「αマウントを100年続ける覚悟がある」と応えたことで、この提携はなされました。

…で、このツァイスとの会話を言葉通りにとれば、2008年から100年続ける約束なのですから、2108年までソニーはAマウントを続けなけらばいけないはずなのですが、

  • 一眼レフ機などとうに出しておらず
  • 公式サイトにも既にAマウント機のラインナップはなくなり
  • 「ソニーは1 Mount」(もちろんEマウントのこと)といったキャッチコピーを喧伝

しています。

ソニーがツァイスとした「αマウント一眼レフを100年続ける」という約束はどこにいったのでしょうか?

ツァイスと約束した2008年からわずか8年後の、2016年のα99 IIを最後にAマウント機は登場していません。α99 IIはトランスルーセント・ミラー機なので正確には一眼レフですらなく、実際はさらに前に遡ります。

100年どころかわずか8年でAマウントを事実上やめてしまったわけです。

また「ソニーは1 Mount」というコピーを打ち出していますが、普通に読めばどう考えても、「Aマウントはもう捨てた」という宣言でありツァイスとの約束破りであることは明白です。

逆にソニーが「Aマウントを捨てていない」と主張するなら、「ソニーは1 Mount」というキャッチコピーが嘘となりますから、どちらにしてもやはり嘘ということになります。

そもそもこの「ソニーは1 Mount」というのもおかしくて、シネマカメラまでこのキャッチコピーの画像に使われていますが、ソニーの上位シネマカメラはPLマウントがデフォルトで、ガチガチに取り付けらているPLマウントを取り外せば「一応Eマウントにもできる」というにすぎません。

ソニーの公式サイトの画像すら、例えばVENICEVENICE 2に付けられているのはEマウントレンズではありませんから、これで「ソニーは1 Mount」と主張されて違和感はぬぐえません。

ソニーも上位のシネマカメラでEマウントレンズを使う人なんてほとんどいないことを知っているから、VENICEVENICE 2のデフォルトをPLマウントにしているわけです。

しかしマウントアダプターをつけたり外したりして「1 Mount」だと言って良いのなら、ニコンもZシリーズでFTZマウントアダプターキットを発売しておりFマウント機としても使用できるため、Zマウントを「不変のFマウント」と言い張っても良いことになってしまいます。

しかしデフォルトがZマウントであるカメラを「FマウントにもできるからFマウント機である」というのが不自然であるように、デフォルトがPLマウントの状態で発売しているシネマカメラをEマウントだと主張するのはやはりおかしいだろうと思います。

デジカメWatchのインタビューでも堂々と嘘をついていたソニー

ちなみにEマウントの初代機を発表したが2010年5月なのですが、遡る2009年12月にソニーはデジカメWatchのインタビューでミラーレス開発について質問された際、以下のように回答しています。

“デジカメWatch:もしミラーレスに取り組むとすれば、新たにレンズマウントを設計し直すことになりますよね?

ソニー(勝本徹):既存のマウントを継続して利用する可能性、新規に起こす可能性の両方があると思います。我々としては、αマウントは“デフォルトで必ず”やっていくマウント規格ですから、まずはここをさらに充実させていかなければならない。しかし、それ以外にプラスアルファのミラーレスも全くやる可能性がないかというと、そうも言いません。もっとも、絶対にミラーレス機をやりますよ、とも言いませんが。要はまだ何も決まっていないということです。”

ミラーレスに関してソニーの勝本徹氏(※先ほどツァイスとの提携の話で出てきたかたと同一人物です)はミラーレスの開発に関して「まだ何も決まっていない」と回答しているのですが、ソニーはそのわずか約5ヶ月後の2010年05月11日にEマウントとNEX-5NEX-3を発表しています。

ソニーはEマウントとNEX-5NEX-3をたった5ヶ月間で開発・発表したのでしょうか?普通に考えればありえないことです。

というよりもソニー自身が、Eマウント発表後に同じデジカメWatchのインタビューで、Eマウントは2008年12月から開発していたことを認めています。

以下はEマウント発表時のデジカメWatchのインタビューからの引用です。

“デジカメWatch:いつ頃プロジェクトが動き始めたのでしょうか?

ソニー(手代木英彦):2008年12月初旬に、事業本部長(当時の石塚氏)に呼ばれ、αのもっとサイズの小さなものはできないか? と言われたのです。驚いたことに、すでにデザインセンターに発注をかけ、一眼レフライクなデザインの小型α的なカメラのコンセプトデザインと、そのモックアップまでできていました。旅行や街中に手軽に持っていけるαのミニ版というコンセプトです。”

2009年12月のインタビューでは「ミラーレスの予定はない」といいつつ、実際にはインタビューに答えていた1年前の2008年12月からEマウントは開発されていたわけです。

時系列で言えば以下のようになります。

  • 2008年12月:Eマウント開発開始
  • 2009年12月:インタビューに「ミラーレス開発に関しては何も決まっていない」と回答
  • 2010年05月:EマウントおよびNEX-5NEX-3を発表

要するにソニーはデジカメWatchのインタビューに対して意図的に嘘をついていたわけで、これではインタビューの意味なんて何もなくなってしまいますよね?

それにしてもよく同じメディアのインタビューに対して、これだけ堂々と「前のインタビューで言ってたのは嘘で、裏でバリバリ開発していました」と後から悪びれもせず言えられたものだと驚いてしまいます。

 

■カメラ業界を荒らし回った末に自ら滅びゆくソニー


カメラ業界を荒らすだけ荒らしてキヤノンに返り討ちにされつつあるソニー

しかしそんなソニーの振る舞いにまったをかけたのは、カメラ業界のラスボス「キヤノン」でした。

キヤノンも「カメラ業界を守るため」といった高尚な理由ではないでしょうが、実際にソニーに対しEOS R5EOS R6から本格的にフルサイズミラーレス市場で反転攻勢をかけたのはキヤノンでした。

BCNの調査によると、キヤノンは2021年の10月下旬以降はミラーレスのシェアでソニーを抜いており、現在は10週連続でミラーレスの販売シェアトップ2機種以上を独占しています。

ちなみに3位もキヤノンで、EOS RPとなっています。EOS RPは今や日本で一番売れているフルサイズミラーレスです。

そしてキヤノンがソニーを抑え込んだことに連動する形で、一部のメーカーは息を吹き返し、特にニコンはZ 9の発表以降は明らかな復調の兆しがみえています。

さらに、最近ではOM-1LUMIX GH6などオリンパスやパナソニックも健闘してます。

もしもソニーがカメラ業界に参入していなかったら?

もし、ソニーがカメラ業界に参入していなければ、

  • ニコン→一眼レフを主力に二強体制を維持
  • オリンパス→ミラーレスのトップメーカーとしてOMデジタルソリューションズにもならずオリンパスのまま
  • パナソニック→動画といえばパナソニックとして安定した地位を築く
  • 富士フイルム→静止画重視のミラーレス派カメラマニアの支持を得て手堅くファンを獲得
  • ペンタックス→一眼レフこだわり派メーカーとしてそれなりにコンスタントな開発を続けられる程度には規模を維持

と、いった感じで各社良いことづくめだったのかもしれません。

パナソニック、オリンパス、ニコンと次々と他社を潰しにかかったソニーでしたが、その結果としてキヤノンやニコンもフルサイズミラーレス市場への本格参入を余儀なくされ、フルサイズミラーレス市場が泥沼のシェア争いとなってしまい、ソニー自身がかつての勢いを失ってしまいました。

ソニーはいったいカメラ業界で何がしたかったのでしょう?そもそもソニーには「共存共栄」の精神が足りないように思います。

ソニーはカメラは作らず、イメージセンサーを供給するだけにとどめておくのが、カメラ業界にとって一番良い影響を与えられたのではないかと思います。

 

Reported by 平原正隆