みなさんこんにちは。
今日はちょっとしたトリビアですが、キヤノンのフラッグシップ機にはフィルム時代から代々、
という風に、「EOS」と「1」の間に「-(ハイフン)」が入っていることで有名です。
これは他のEOSシリーズでは見られないことで(実は一部例外がありそれは本編でご紹介します)、EOS 5DやEOS 6D、あるいはミラーレスのEOS R5やEOS R6シリーズでもハイフンはありません。
そもそもなぜフラッグシップ機である1系にだけハイフンがあるのでしょうか?その歴史と経緯についてお話ししたいと思います。
目次
- ハイフンが入っていたEOS-1系たち
- 例外的に存在したEOS-3
- 実はEOS以前から1系にはハイフンが入っていた
- 結局なぜ1系には「-(ハイフン)」が入っているのか?
結論だけ知りたいという方はガッとスクロールして頂いて、終盤の「4.結局なぜ1系には「-(ハイフン)」が入っているのか?」だけ読んでいただければと思います。
ただ歴史的な流れも知っておいた方が面白いと思うので、時間のある方は全部読んでみるのをお勧めします。
■ハイフンが入っていたEOS-1系たち
そもそもEOS-1系のEOSと1の間に「-(ハイフン)」が入っていることを知らなかった(というよりも見ていたのに気づかなかった)という方も一定おられるのではないかと思います。
そこでこれまでのEOS-1系の歴史に触れておくと、これは最近始まったことではなく歴代のEOS-1系に入っているもので、一覧にしてみると、
- EOS-1:1989年
- EOS-1 HS:1989年
- EOS-1N:1994年
- EOS-1N HS:1994年
- EOS-1N DP:1994年
- EOS-1N RS:1995年
- EOS-1V:2000年
- EOS-1D:2001年
- EOS-1Ds:2002年
- EOS-1D Mark II:2004年
- EOS-1Ds Mark II:2004年
- EOS-1D Mark II N:2005年
- EOS-1D Mark III:2007年
- EOS-1Ds Mark III:2007年
- EOS-1D Mark IV:2009年
- EOS-1D X:2012年
- EOS-1D C:2012年
- EOS-1D X Mark II:2016年
- EOS-1D X Mark III:2020年
このようになります。凄いですね。
つまりフィルムのEOS-1からずっと「-」が付いているわけです。
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■例外的に存在したEOS-3
EOSとそれに続く数字の間にハイフンが入る機種は「基本的には」フラッグシップである1系だけなのですが、一部例外もあり、それがEOS-3(1998年発売)です。
EOS-3は、先行して発売されたEOS-1N(1994年発売)とEOS5 QD(1992発売)の中間に位置するモデルでした。
EOS-3はEOS-1Nと共通する部分も多く「フラッグシップに匹敵する性能」ということで1系にだけ付けられていた「-」が特別に許されたのではないかと言われています。
ただし機種名こそ「EOS-3」ですが、ボディにはEOS-1系と異なりハイフンのない「EOS 3」印刷されいて、微妙な差別化がなされています。
そう考えると先日開発発表されたEOS R3のボディにも「-」は付いておらず、その点はフィルムのEOS-3と同じですが、どうやらEOS R3に関しては機種名も正式にハイフンなしの「EOS R3」になるようです。
個人的にはこのデザインはここ数年のEOSの中でも最高のデザインだと思っており、CINEMA EOSのEOS C70にも少し似ている気がします。
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■実はEOS以前から1系にはハイフンが入っていた
さて大分EOSシリーズのハイフンの歴史については知って頂けたと思いますが、実はこれはEOSシリーズからではないのです。
キヤノンがフラッグシップ機に「-1」という機種名をつけた初代機はEOS-1ではありません。さて初代がどの機種かおわかりでしょうか?
わかる人はキヤノンファンか、ある程度カメラ歴が長い方だと思います。
さて正解は何かと申しますと、あの機械式フィルムカメラの歴史的名機、F-1(1971年発売)がキヤノンが初めて「xxx-1」という名称をあてた最初の機種でした。
つまり、FDマウント時代からキヤノンには「-1」の称号があったわけです。
- F-1:1971年
- F-1高速モータードライブカメラ:1972年
- AE-1:1976年
- F-1改(F-1N):1976年
- OD F-1:1976年
- A-1:1978年
- AV-1:1979年
- AE-1プログラム:1981年
- ニューF-1:1981年
- AL-1:1982年
- ニューF-1ハイスピードモータードライブカメラ:1984年
という風に、なんと半世紀も前から「xxx-1」という称号が使われています。その初代機が、かの有名なF-1だったわけですね。
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■結局なぜ1系には「-(ハイフン)」が入っているのか?
遂に結論となるのですが、なぜキヤノンはフラッグシップ機に「xxx-1」というハイフンを入れるようになったのか?ということですが、F-1の開発に着手した当時、キヤノンは売れてはいたものの、どちらかというと大衆機のメーカーというイメージで、ライバルであるニコンの方がブランドとしては格上でした(ちなみに有名な「ニコンF」の発売は1959年)。
そんな中キヤノンがニコンに追い付くべく、社運をかけて開発したのが(当時キヤノンは本当に死力を尽くして開発したと言われています)、1971年に発売した「F-1」でした。
F-1はプロからも高い評価を受けキヤノンのブランドを一気に押し上げることになるのですが、それ以来「xxx-1」という機種名をフラッグシップ機の伝統として残したそうです。
キヤノンによるとF-1以来キヤノンが世に出すレンズ交換式カメラおいて、「1」の称号が与えられた機種には特別な意味があり、1の前に「-」をつけることで、「1」をより強調させたいと考えたそうです。
またキヤノンにとってフラッグシップ機に付けられる「1」が特別な数字であることを多くの方に知ってもらいたい、こうした思いからF-1以来の「-」を今尚継承しているとのこと。
そのメーカーの礎となったモデルの機種名に対する思い入れというのはキヤノンに限ったことではありませんが、キヤノンというメーカーが50年も前に発売されたF-1にかけた思いを今も引き継いで、フラッグシップ機において「xxx-1」という伝統を守っていることには心揺さぶられるものがあります。
ちなみに私が若い頃初めて自分のお金で買った一眼レフがキヤノンのニューF-1で、本当に素晴らしいカメラでした。
その後ニコンのF3も買うのですが、この二機種は私の写真人生のスタートラインでもあり、本当にどちらも思い出深い機種で、かつ神がかった名機だと思います。
4年前に「キヤノンNew F-1とニコンF3、機械式フィルム一眼レフ頂上対決!」という記事を書いているので、ご興味がある方はご覧いただければと思います。
Reported by 正隆