昔は「写真はレンズで決まる」といったような言葉もありましたが、デジタル時代になりイメージセンサーの性能も画質を左右する重要な要素になりました。
イメージセンサーの性能のレビューで世界的に有名なDxO Markですが、そんなDxO Markのセンサーレーティングを参考に、「機種ごとではなく、カメラブランドとして」どのメーカーのイメージセンサーが画質面で優れているのか?の統計を取ってみました。
■イメージセンサーの性能比較
対象機種
対象はDxO Markのセンサーレーティングの総合点から、各カメラメーカーの上位10機種を抽出し、それぞれの項目の合計点と平均点を割り出しています(※小数点2桁以下切り捨て)。
富士フイルムに関してはDxO Markにデータが極端に少なく、また機種も極端に古いことから、比較として適切ではないと判断し除外しています。
総合点比較(上段は上位10機種の合計点、下段は平均点)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 |
ソニー | ニコン | キヤノン | リコー | オリンパス | パナソニック |
927点 | 924点 | 841点 | 821点 | 733点 | 719点 |
92.7点 | 92.4点 | 84.1点 | 82.1点 | 73.3点 | 71.9点 |
総合点で栄えある1位に輝いたのは、やはりと言うべきなのかソニーでした。世界最先端のイメージセンサーテクノロジーを持ち、カメラ業界を技術でリードしているソニーがその実力を見せつけた形になりました。
2位になったのはニコン。1位のソニーとは僅差で、この2社は総合得点においても各項目においても他メーカーに大きな差をつけており、まさに異次元の戦いとなっています。
3位にランクインしたのはキヤノンでした。上位2社には差をつけられているものの、フルサイズフォーマットをほとんどラインアップしていない4位以下と比較すると、多くのフルサイズセンサー搭載機があることもあり、総合点では3位とシェアトップメーカーとしての意地を見せています。
ポートレート:色深度(bits)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 |
ソニー | ニコン | キヤノン | リコー | パナソニック | オリンパス |
252.5 | 250.0 | 241.9 | 239.8 | 230.2 | 229.7 |
25.2 | 25.0 | 24.1 | 23.9 | 23.0 | 22.9 |
総合点に続いてポートレート部門でもソニーが首位を獲得しました。ソニーは像面位相差オートフォーカスによる広いAFカバーエリアとポートレートの親和性も高いため、人物撮影などの方面でセールスをかけていくのも良いように思います。
2位にランクインしたのはニコンでした。このテストとは直接関係ありませんが、以前はニコンは色がポートレート向きではないという意見もありましたが、近年ではホワイトバランスも改善し、加えてホワイトバランスの「白を優先する」が追加されたことで、むしろポートレートにも適したホワイトバランスとなっています。
3位にランクインしたのはキヤノンでした。ソニー・ニコンと比較するとやや差があるものの、全体で3位は悪い順位ではなく、多彩なレンズラインアップもあり、実際にポートレートでも現在もっとも使われているメーカーでしょう。
風景:ダイナミックレンジ(EV)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 |
ニコン | ソニー | リコー | パナソニック | オリンパス | キヤノン |
139.8 | 138.3 | 135.4 | 125.7 | 124.4 | 123.3 |
13.9 | 13.8 | 13.5 | 12.5 | 12.4 | 12.3 |
風景(ダイナミックレンジ)の項目で1位になったのはニコンでした。もともとダイナミックレンジの広さには評価の高かったニコンですが、ここではソニーを上回って首位を獲得しています。
2位にはさすがのソニーがランクイン。ニコンとの差も僅差で、平均で見るとわずかに0.1EVの差ということで非常にハイレベルな戦いとなっています。
なんと3位にランクインしたのはリコーでした。リコーは現在フルサイズ機をわずか1機種しかラインアップしておらず、ほとんどがAPS-C機であることを考えると、比較的画素ピッチの影響が少ない項目とはいえ3位という成績は素晴らしいもので、風景のペンタックスここにありという存在感を見せました。
最下位はまさかのキヤノンでした。最近のキヤノン機はさまざまなテストでダイナミックレンジの狭さを指摘されることが多いようですが、ここでも少し厳しい結果となっています。
スポーツ:ISO感度(ISO)
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 |
ニコン | ソニー | キヤノン | リコー | オリンパス | パナソニック |
28856 | 26541 | 24650 | 13853 | 9174 | 6930 |
2885.6 | 2654.1 | 2465.0 | 1385.3 | 917.4 | 693.0 |
高感度性能を表すスポーツの項目では、ダイナミックレンジの項目に続いてニコンが1位となりました。ここでは2位のソニーにもそれなりに差をつけており、ニコン機の高感度性能の高さを感じさせるものとなっています。
2位にランクインしたのはやはりソニーでした。どの項目においても常に安定した高性能を感じさせるものとなっています。
3位はキヤノンが意地を見せ4位以下に大差をつけてのランクインとなりました。スポーツや報道のジャンルでも高いシェアを誇るキヤノンとしては、高感度性能は絶対にニコン・ソニーに食いついていきたいところでしょう。
イメージセンサーの現在と未来
さて皆さんいかがでしたでしょうか?
総合点とポートレート(色深度)部門でソニーがトップ、風景(ダイナミックレンジ)とスポーツ(高感度)性能でニコンがトップとなり、この2社はまさに異次元の戦いを見せた形となりました。
今年ソニーは驚異の測距点数と秒間20コマの電子シャッターを実現したイメージセンサーを搭載したα9を、ニコンは超高解像と高い高感度性能を両立した完全自社設計のイメージセンサーを搭載したD850でカメラ業界を沸かせています。
対してシェアトップのキヤノンが、デュアルピクセルCMOS AFといった独自の技術で、この強力な2社のイメージセンサーに対してどう対抗していくのかも今後の見所でしょう。
またAPS-C主体のリコー(ペンタックス)の健闘など、細かい部分ではさまざまなドラマを見ることができました。
デジタル時代ならではの撮像素子の進歩を、これからも我々は想像と期待をもって見守っていくこととしましょう。
Reported by 正隆