皆さんこんにちは。
さて、北京2022冬季オリンピックが近づいてまいりました。
東京2020オリンピック(2021年開催)では、実際の画像から調べたシェアやメーカーの公式発表から推測すると、おおよそ、
- キヤノン:55-60%
- ニコン:30-35%
- ソニー:10-15%
という感じだったのだろうと思います。
果たしてこの数字が北京2022冬季オリンピックではどのように変化するのでしょうか?
今回は総合的な観点から、3社のオリンピックでのシェアがどの程度になるか予想したいと思います。
目次
- 北京2022冬季オリンピックカメラメーカーシェア予想
- プロ市場のシェアの変動は緩やか
- 1位:キヤノン(55-60%):横ばい
- 2位:ニコン(35-40%):微増
- 3位:ソニー(5-10%):微減
既にオリンピックでのシェアに影響を及ぼしそうな要素がはっきりしており、今回の冬季オリンピックはコロナでずれ込んだ東京2020大会から半年しか経っていない開催でもあるので、予想しやすいのではないかと思います。
■北京2022冬季オリンピックカメラメーカーシェア予想
プロ市場のシェアの変動は緩やか
まず最初にプロフォトグラファーというのは今使っているメーカーに問題がなければ簡単にマウントを変えたりはしませんから、短期間でシェアが大幅に変わるようなことはありません。その理由は、
- 機材の量が多い
- 操作方法が変わるとスムーズに撮影できない
- 画作りが変わると自分の作風や好みと離れてしまう
こういった理由から、プロ市場のシェアの変動というのは一般の人ほどシェアの変動が激しくありません。
またスポーツフォトグラファーなら素早い操作をするため、慣れ親しんだ操作系から違うメーカーに変わってもすぐには指が覚えている操作を変えられないですし、ポートレートなどのフォトグラファーなら画作りが大きく変わってしまうと自分の好みや作風に合うように調整するのにかなりの手間を要します(しかも手間をかけても元のメーカーと完全に合わせられるわけでもありません)。
そのためポートレート撮影などでは、デジタルとはいえM型ライカを使っているフォトグラファーも今でも割といるくらいです。
なので2021年に開催された東京2020大会でも、一般シェアでは苦戦していたニコンのプロユーザーも殆ど減っていなかったわけです。
あるインパクトのある機種が1機種や2機種出たからといって、雪崩を打つように短期間で特定メーカーのフォトグラファーだらけになるとかそういうことはそもそも起こりえないのですが、なんとなくその辺りを誤解していている人が多かったように思いますが、最近はそのあたりもちゃんと伝わってきつつあるのかなという気はしています。
では各メーカーの北京2022冬季オリンピックでの現実的なシェアを予想していきましょう。
1位:キヤノン(55-60%):横ばい
キヤノンに関してはほぼ横ばいで大きな変化はないでしょう。
キヤノンは現行のフラッグシップ機であるEOS-1D X Mark IIIでもオリンピックの撮影に対応できますが、加えてEOS R5とEOS R3も発売され、様々なジャンルのプロユーザーのミラーレスへの移行も順調です。もちろんキヤノン系のオリンピックフォトグラファーにとってのミラーレス機の移行先のメインはEOS R3となるわけです。
またレンズ構成は変わっていないものの、RFマウントの超望遠レンズである、
- RF400mm F2.8 L IS USM
- RF600mm F4 L IS USM
といった大口径超望遠レンズも既に発売されています(絶賛品薄中ではありますが)。
これまでは、
といった組み合わせが多かったと思いますが、EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×の後継というか、RFマウントにおけるテレコン内蔵の大口径超望遠レンズが出るまでは、
- EOS R3+RF400mm F2.8 L IS USM
この組み合わせがキヤノンユーザーのオリンピックフォトグラファーの主力レンズになっていくのでしょう。
つまりキヤノンの場合、RFマウントでカメラもレンズも既にオリンピックレベルの撮影に対応できるものがシステムとして揃っているので他のメーカーに変える必要もないのです。
またEFの超望遠レンズもEOS R3にマウントアダプターで簡単に取り付けられるので、ボディから順次移行していくことも容易です。
そのあたりは流石にキヤノンの上手さとというか、よく計画されていて、北京2022冬季オリンピックに向けて既に準備がばっちり出来ています。
EOS R3は現在動体撮影をするには世界最強のミラーレスカメラだと思います。それはα1やZ 9以上でしょう。視線入力とデュアルピクセルCMOSの組み合わせはスポーツ撮影には異常なほど強力です。
ただしキヤノンにはEOS-1D X Mark IIIも大口径超望遠レンズも十分にあり、さらにEOS R5の登場でスポーツに限らずキヤノンを使っていたプロはスポーツに限らず「このままミラーレスもキヤノンで大丈夫だな」とという安心感があったためソニーへのプロの流出がそもそもほとんどありませんでした。
そのためEOS R3はEOS-1D X Mark IIIからの乗り換えには最高の機種ではあるものの、ニコンと比較してソニーからの出戻りユーザーはそれほど期待できないでしょう。
そのためシェアとしては横ばいだと思います。そのため予想シェアはほぼ横ばいの55-57%程度と考えられます。
2位:ニコン(35-40%):微増
ニコンは2021年にZ 9によってオリンピックに対応できるカメラを出しただけでなくブランドイメージも大幅に回復したため、他メーカーへの流出を完全に阻止したと言えるでしょう。
加えてD6の後継となるフラッグシップのZ 9が出たことで、シェアはやや増加の35-40%と予想します。
ニコンの場合、東京2020大会からシェアを落とす要素がないのでシェアアップが期待できるわけですが、劇的にシェアを上げられるかというとプロ市場はそういうものではないということは先にお話しした通りです。
またニコンは現時点でNIKKOR Zに大口径超望遠レンズが無いという問題があります。
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは良いレンズだと思いますがオリンピックでプロが使うには少し力不足ですし、まさにオリンピックなどに今後使われていくであろうNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sは2月18日発売なので、2月4日から始まる北京2022冬季大会には間に合いません。
このレンズ自体は非常に素晴らしいレンズだという予感がしますが、間に合わないのではどんなに素晴らしいレンズでも使うことはできません。
一部のオリンピックフォトグラファーにはテスト用として貸し出されるでしょうが、ニコン系スポーツフォトグラファーに行き渡るにはまだまだ時間がかかるでしょう。
そのため、Z 9+NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sの組み合わせでの活躍が期待されるのは次のワールドカップからでしょう。
もしこのレンズが2021年の夏から秋に発売され、北京冬季オリンピックに間に合っていればオリンピックでのシェア増加にもっと期待が持てたと思います。
そのため今現在ニコンを使っているオリンピックフォトグラファーたちはマウントアダプター FTZ IIなどでFマウントの大口径超望遠レンズをZ 9使うことになります。
ただし現在他社のカメラを使っているユーザーが、NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sが出るのが分かっているのに北京大会に間に合わないからといって、今更Fマウントの、
などを買うわけがありません。
そのあたりはニコンファンも現実的に考えないと、幾らZ 9があってもZマウントの大口径超望遠レンズが発売されていない現状では、他メーカーを使っているスポーツフォトグラファーをニコンに呼び込むことは現時点では出来ません。
つまり、北京2022冬季オリンピックでZ 9を使うのは、
- 今現在D6などを使っているニコンユーザーのフォトグラファー
- 元々はニコンを使っていてミラーレスに移行する際にソニーに乗り換えたけれど、まだFマウントの大口径超望遠レンズを残していたフォトグラファー
この2種類のどちらかです。
1は今もニコンを使っているフォトグラファーなのですから、当然D6がZ 9に変わってもオリンピックでのプロユーザーのシェアが増えるわけではありません。
2はこの数年のニコンの不振で、ミラーレス化を期に主にソニーに移ったものの「Fマウントの大口径超望遠レンズをまだ残している」という人です。
ただそういう人が多数いるかというとそうでもないでしょう。オリンピック撮影用のカメラとレンズ一式をαで揃えようとすると、
- α1(もしくはα9 II)×2台
- FE 16-35mm F2.8 GM(オリンピックでは会場の全景も撮ります)
- FE 24-70mm F2.8 GM
- FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
- FE 400mm F2.8 GM OSS
こういった機材が一通り必要になるため、それらを購入する際にFマウントの大口径超望遠レンズは売ってしまっている可能性が高いわけです。
なので、ニコンのシェア増加のためには元ニコンユーザーのフォトグラファーでも、
- Z 9を機にニコンに戻りたいと思っている
- Fマウントの大口径超望遠レンズを残している
この両方の条件を満たしている人が必要があります。
そのためEマウントに移行していた一部がニコンに戻ってくるものの、全員が戻ってくるわけではありませんので微増となるわけです。ただ東京2020大会よりニコンのシェアが増えるのは間違いないと思います。
そのため、ニコンの予想シェアは微増の35-40%程度と考えます。
3位:ソニー(5-10%):微減
ソニーに関してはαユーザーが東京大会より増える要素がないので、予想シェアは東京2020大会よりも下がって5-10%程度と考えます。
2021年の東京2020大会では既にソニーはα1が発売されていましたし、FE 400mm F2.8 GM OSSも発売されていました。
それ以降、特にシェアを変えられるほどのオリンピックに有用そうなカメラやレンズが登場していないことから、東京大会以上にシェアが上がる要素はありません。
対するキヤノンは東京2020大会以降にEOS R3とRF400mm F2.8 L IS USM(オリンピック直前の発売)しており、ニコンはもちろんZ 9をリリースしています。
つまりキヤノンとニコンは2021年の東京大会「以降に」オリンピックの主力となるミラーレス機を発売したわけです。しかしソニーの場合はそうではないので、主にニコンに戻るフォトグラファーによってソニーのシェアは減少するでしょう。
それをどの程度抑えられるかは、東京2020大会でα1を使用した元ニコンユーザーのフォトグラファーがαに対してどういう印象を受けたかにかかっています。
D6などを使っていた時よりもα1に変えて良くなったと感じていればソニーに留まってくれるでしょうし、逆であればニコンに戻ることも考え始めるでしょう。そしてFマウントの超望遠大口径レンズをまだ残していれば、受け皿となるちょうどZ 9があるわけです。
そういうわけで、北京大会でのソニーのシェアは微減して5-10%程度と微減するだろうと思いますが、他メーカーへの流出をどこまで抑えられるかソニーの踏ん張りどころとなるでしょう。
いずれにせよ冬季オリンピックのもう一つの戦いである、カメラメーカー同士の競争も楽しみですね。
Reported by 正隆