フォトマスター検定の予想問題です。フォトマスター検定勉強法も掲載していますので、参考にして頂ければと思います。
過去の各級の予想問題のまとめ
合格目指してさっそく問題です!
難易度:1級レベル
問:「メカシャッター」「電子先幕シャッター」「電子シャッター」の3つの方式を選べるローリングシャッター方式のイメージセンサーを搭載しているカメラで「電子シャッターモード」を使用して撮影した。
その際のイメージセンサーの露光方向はどうなっているか?最も多いと考えられるものを選べ。
① 電子シャッター時はイメージセンサーの上から下に向かって露光される機種が多い
② 電子シャッター時はイメージセンサーの下から上に向かって露光される機種が多い
③ 電子シャッター時の露光方向はメカシャッターの走行方向と同じになる機種が多い
正解はこのあとすぐ!
■正解は②(電子シャッター時はイメージセンサーの下から上に向かって露光される機種が多い)
メカシャッター時の露光はシャッター幕の動く方向に露光される
まず「メカシャッター」による撮影時についてですが、その際はもちろんメカシャッターの動く方向に露光されていきます。
ミラーレス機などでは、
- シャッター幕が上から下に走行するもの
- シャッター幕が下から上に走行するもの
この両方がありますが、どちらの方向に動くにせよ当然シャッター幕が走行する方向に露光されていきます。
電子先幕シャッター時の露光は後幕の動く方向に露光される
次に「電子先幕シャッター」による撮影の場合ですが、電子先幕シャッターの場合は、電子先幕は後幕のメカシャッターと同じ方向に露光していきます。
電子先幕が先に動作を始めて露光を開始し、メカシャッターの後幕がそれを追いかける形でシャッターが閉じていきます。
メカシャッターの動く方向は先ほど解説した通り、ミラーレス機などでは上から下に下りる機種と下から上に上がる機種の両方がありますが、
- 後幕のメカシャッターが上から下に動く機種では、電子先幕も上から下へ露光
- 後幕のメカシャッターが下から上に動く機種では、電子先幕も下から上に露光
当たり前といえば当たり前ですが、メカシャッターと対向する形で電子先幕が露光を初めてしまうと、後幕のメカシャッターでケラれてしまいますから、電子先幕の動きはメカ後幕シャッターの走行方向に合わせて動くようになっています。
電子シャッター時はイメージセンサーの下から上に向かって露光される機種が多い
さて、この問題文でもある「電子シャッター」時の露光方向ですが、実は電子シャッター撮影時は多くの機種でイメージセンサーの下から上に向かって露光を行います(※全ての機種が下から露光するわけではなく、まれにですが一部の機種では上から下に露光を行う機種もあります)。
電子シャッター時はイメージセンサーの下から上に向かって露光や読み出しが行われる機種が多いため、メカシャッターが上から下に降りる機種では、ローリングシャッター歪みの方向が、メカシャッターおよび電子先幕シャッター時と、電子シャッター時で逆になる機種があります。
電子シャッター時だけ露光方向が下から上に変わるからです。
まとめると、
メカシャッターが上から下に走行する機種の場合
- メカシャッター時→上から下に露光
- 電子先幕シャッター時→上から下に露光
- 電子シャッター時→下から上に露光
メカシャッターが下から上に走行する機種の場合
- メカシャッター時→下から上に露光
- 電子先幕シャッター時→下から上に露光
- 電子シャッター時→下から上に露光
となります。
メカシャッターが上から下に走行する機種であっても、「電子シャッターモード」ではイメージセンサーの下から上に向かって露光を行うわけです。
なぜ電子シャッター時は下から上に向かって露光するのか?
電子シャッター時はメカシャッターの走行方向は無視できるわけですから、電子シャッター時でも電子先幕シャッター時と同じ方向に露光すれば良さそうなものですが、なぜ電子シャッター時だけほとんどの機種で下から上に向かって露光を行うのでしょうか?
これにはローリングシャッター歪みの形状が関係しています。
最近はイメージセンサーの読み出し速度が向上し、ローリングシャッター歪みは大幅に低減されてきましたが、これまで電子シャッター時はローリングシャッター歪みが顕著に出る機種が数多くありました。
電子先幕シャッター時は電子先幕を追いかける形でメカシャッターが走行するわけですが、電子シャッターではメカシャッターが関係なくなるため、上からでも下からでも露光が可能です。
そのため電子シャッターでは下から上に露光させた方が、ローリングシャッター歪みの量そのものは同じであっても、歪む方向が変わるため下から上に向かって露光方向をしたから上にしています。
イメージセンサーに投影される像は上下左右逆像
皆さんもご存知のように、レンズ後端から射出された像はイメージセンサーに対して上下左右逆像で投影されています。
一眼レフ時代には、これをクイックリターンミラーやペンタプリズムで反転させて正立像としてファインダーで見られるようにしていました。
しかしミラーレスカメラではイメージセンサーで受けた像をEVFで表示させる際に上下左右を反転表示させて正立像として見せています。
一眼レフとミラーレスで正立像として見せるための技術は異なっても、レンズから投影される像が上下左右逆像である点は同じです。
記録される像もレンズから投影される像は同様で、上下左右は逆像です。
そのため、例えば、
- 電車を真横から撮影する
- 電車は左から右に向かって走行している
とした場合、
イメージセンサー上では、上下左右逆像で投影されているわけですから、
- 電車は左右逆像の右から左に向かって走行している
- 電車の上下も反転して走行している
というようにイメージセンサーには投影されているわけです。
果たして、電子シャッターモードでイメージセンサーの上から下に向かって露光したとしたら電車のローリングシャッター歪みはどのように写るでしょう?
これらをまとめて「いらすとや」さんのイラストで表現してみました。イラストの電車は右側の縁になっている側が先頭車両でそちらに向かって走行していると仮定しています。
1.実際の電車は左から右に走行していたとする
進行方向は→で車両の先頭は右側の緑の部分です。
2.イメージセンサー上では上下左右逆像で投影されている
像面に投影される像は←に向かって走行し上下も逆像になるため、先頭は左側の緑の部分です。
イメージセンサー上では上下左右逆像に投影されていますから、車両の先頭が左側に来て、上下も逆になっていますし、走行方向も右から左に変わります。ちょうど大判カメラのような見え方ですね。
3.電子シャッターで上から下に露光するとローリングシャッター歪みはこうなる
上下左右逆像なのですから、これを電子シャッターでイメージセンサーの上から下に向かって露光すると、先に露光されるのは車両の下側部分からになります。
そして電車が走行しているため画面の上下で露光に時間差が生じ、車両上部がイメージセンサー上に投影される像の進行方向である左方向に露光のタイミングがズレてこのように露光されます。
あれ?左右のズレが逆じゃない?と思われるかもしれませんが、左右も逆像なので、撮像面上では電車は向かって左方向に逆転して走行しているので、ズレる向きも変わるので上の図で合っています。
4.それを正立像に戻すとこうなる
それを画像処理によって正立像にするとこうなります。右側の車両先頭部分上部が前に突き出たように写るわけです。
5.電子シャッターで下から上に露光にするとローリングシャッター歪みはこう変わる
逆に電子シャッター時にイメージセンサーの下から上に向かって露光するとどうなるでしょうか?
先に露光されるのは画面の下側からとなりますので、画面下と画面上部で今度はこのような形で露光のタイミングに差が生じます。
6.それを正立像に戻すとこうなる
その画像を画像処理で正立像に戻したのがこれです。
こう見て頂くと同じようにローリングシャッター歪みが発生しているわけですが、歪み方には違いがあるというのがわかります。
比較してみましょう。
①イメージセンサーの上から下に露光したもの
②イメージセンサーの下から上に露光したもの
傾き方の角度が完全に正確なわけではありませんが、おおよそこのような写り方の違いになります。
どちらが自然に見えるかは人によって違うかもしれません。
しかしブラウン管テレビの走査線の方向が上から下方向であったりした慣習的な理由から、②の歪みかたの方が自然に見えるのではないか?と考えられ、ほとんどの電子シャッター搭載の機種で電子シャッター時は下から上に向かって露光するようになりました。
繰り返しになりますが、全ての機種が電子シャッター時に下から上に露光するわけではなく、まれにですが上から下に向かって露光を行う機種もあります。
まとめると、
- メカシャッター:上から下に走行するものと下から上に走行する機種がある
- 電子先幕シャッター:後幕のメカシャッターの走行方向と同じ方向に電子先幕が露光を行う
- 電子シャッター:ほとんどの機種で下から上に向かって露光と読み出しを行う
このようになっています。
今後は電子シャッターのみの機種がどんどん増えていくでしょうから、こうした電子先幕シャッター時と電子シャッター時の逆転現象が見られるのもそう長い期間ではないでしょう。
今回の問題は結構難しかったと思いますが、皆さん正解できましたでしょうか?
Reported by 正隆