ソニーが35mmフルサイズ対応のEマウント広角ズームレンズFE 16-35mm F2.8 GMとFE 12-24mm F4 Gを発表しました。Eマウントフルサイズ対応広角ズームレンズとして初のF2.8通しレンズであるFE 16-35mm F2.8 GMと、同じくEマウントフルサイズ対応レンズとして最広角のFE 12-24mm F4 G、画角かF値か、またどちらの写りがより良いのか非常に悩ましいところだと思います。
そこで今回はこの2本のEマウント超広角ズームレンズを比較してみましょう。
■FE 16-35mm F2.8 GMの魅力
FE 16-35mm F2.8 GMの概要
FE 16-35mm F2.8 GMはF2.8通しとなるレンズで、このレンズが登場すると、
といういわゆる大三元レンズがEマウントでも揃うこととなります。FE 16-35mm F2.8 GMの発売時期に関しては、8月の発売に発売するとのこと。
FE 16-35mm F2.8 GMは5枚の非球面レンズと2枚のXA(Extreme Aspherical)レンズを採用した非常に贅沢なレンズ構成となっています。
また13群16枚構成、11枚羽絞りという非常に贅沢な設計でありながら非常に小型軽量に仕上がっている点も大きな魅力でしょう。
同クラスレンズとの比較
レンズ名 | レンズ構成 | 最大径 | 全長 | 質量 |
FE 16-35mm F2.8 GM | 13群16枚 | 88.5mm | 121.6mm | 約680g |
Vario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM II | 13群17枚 | 83.0mm | 114mm | 約872g |
EF16-35mm F2.8L III USM | 11群16枚 | 88.5mm | 127.5mm | 約790g |
AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR | 12群17枚 | 82.5mm | 125.0mm | 約680g |
同じ焦点距離とF値のソニーAマウントレンズであるVario-Sonnar T* 16-35mm F2.8 ZA SSM IIと比較すると、FE 16-35mm F2.8 GMはなんと192gという凄まじい軽量化を果たしています。
また競合他社であるキヤノンのEF16-35mm F2.8L III USMと比較した場合、FE 16-35mm F2.8 GMは全長で5.9mm短く、質量は110g軽量に仕上がっており、F値が4.0のニコンのAF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VRと同等の質量を実現しています。
このことから、FE 16-35mm F2.8 GMがこのクラスのレンズとして非常に小型軽量に仕上がっていることがお分かり頂けたかと思います。
またレンズ最前面には汚れや水滴が付きにくいフッ素コーティングを、さらに内部にはフレアやゴーストを抑制するナノARコーティングが採用されており、使い勝手にも十分な配慮がなされています。
FE 16-35mm F2.8 GMの写り
FE 16-35mm F2.8 GMのMTF曲線は上図のようになっています。
- コントラスト
- レンズ中心からの距離
- 16mm(開放)
- 16mm(F8.0)
- 35mm(開放)
- 35mm(F8.0)
- 空間周波数
- 10本/mm
- 30本/mm
- R:放射方向/T:同心円方向
MTF曲線の読み方は以前に「MTF曲線を読めるようになろう!」で解説させて頂いております。
FE 16-35mm F2.8 GMとFE 12-24mm F4 Gとの実写比較ですが、作例が海外サイトのDPREVIEWでほぼ同じ被写体を対象にして掲載されていますので、参考(中央の「See our Sony FE 16-35mm F2.8 GM gallery」からご覧いただけます)にして頂ければと思います。
FE 16-35mm F2.8 GMやや線が太めで広角端では周辺が流れている部分があり、特別高画質という印象はありませんが、色収差は少なくFE 16-35mm F2.8 GMの方がFE 12-24mm F4 Gよりもややコントラストが高い写りとなっている印象です。またボケ味もスムーズで、風景だけでなく、広角ポートレートなどでも活用できそうなレンズです。
FE 16-35mm F2.8 GMの仕様
名称 | FE 16-35mm F2.8 GM |
型番 | SEL1635GM |
マウント | Eマウント |
対応撮像画面サイズ | 35mmフルサイズ |
焦点距離イメージ | 16-35 |
レンズ構成 | 13群16枚 |
画角 | 107°-63° |
開放絞り(F値) | 2.8 |
最小絞り(F値) | 22 |
絞り羽根(枚) | 11 |
絞り形状 | 円形絞り |
最短撮影距離 | 0.28m |
最大撮影倍率 | 0.19倍 |
フィルター径 | 82mm |
手ぶれ補正 | なし(機種によりボディ側で対応) |
外形寸法(最大径×全長) | 88.5×121.6mm |
質量 | 約680g |
■FE 12-24mm F4 Gの魅力
FE 12-24mm F4 Gの概要
FE 12-24mm F4 Gはソニーのフルサイズ対応Eマウントレンズで最広角のズームレンズです。発売は7月を予定。
FE 12-24mm F4 Gはその圧倒的な画角と566gの小型軽量を特徴とする広角ズームレンズですが、非球面レンズ4枚とナノARコーティングを採用しており、画質面においても十分に配慮されています。
同クラスレンズとの比較
レンズ名 | レンズ構成 | 最大径 | 全長 | 質量 |
FE 12-24mm F4 G | 13群17枚 | 87.0mm | 117.4mm | 約565g |
Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS | 10群12枚 | 78.0mm | 98.5mm | 約518g |
EF11-24mm F4L USM | 11群16枚 | 108.0mm | 132.0mm | 約1,180g |
12-24mm F4 DG HSM Art | 11群16枚 | 102.0mm | 131.5mm | 約1,150g |
FE 12-24mm F4 Gは同じくF4.0通しのフルサイズ対応ズームレンズであるVario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSSと比較すると、より大きく重くなっていますが、これは焦点距離もレンズ構成も大幅に異なるため致し方のない部分かも知れません。
対して一眼レフ用のキヤノンのEF11-24mm F4L USMやシグマの12-24mm F4 DG HSM | Artと比較すると、FE 12-24mm F4 Gは開放F値は同じ4.0でありながら、EEF11-24mm F4L USMや12-24mm F4 DG HSM Artの半分程度の重量となっており、その驚異的な小ささが窺い知れます。
勿論EF11-24mm F4L USMは小型軽量を売りにしているレンズではなく、また画質面でも非常に評価の高いレンズであるため、直接同じコンセプトの製品として比較することが出来ませんが、FE 12-24mm F4 Gがこのクラスとしては非常にコンパクトであることはお分かり頂けると思います。
FE 12-24mm F4 Gの写り
FE 12-24mm F4 GのMTF曲線は上図のようになっています。
- コントラスト
- レンズ中心からの距離
- 12mm
- 24mm
- 空間周波数
- 10本/mm
- 30本/mm
- 開放F値
- F8.0
- R:放射方向/T:同心円方向
MTF曲線の読み方は以前に「MTF曲線を読めるようになろう!」で解説させて頂いております。
FE 12-24mm F4 GとFE 16-35mm F2.8 GMの実写比較ですが、作例が海外サイトのDPREVIEWでほぼ同じ被写体を対象にして掲載されていますので、参考(中央の「See our Sony FE 12-24mm F4 G gallery」からご覧いただけます)にして頂ければと思います。
FE 12-24mm F4 Gの写りですが、さすがに広角端では最周辺部は派手に像が流れてしまっているものの、画角とレンズの大きさなどを考えれば仕方のないところでしょう。
FE 16-35mm F2.8 GMと比較してあっさりとした印象ですが、これはこれで悪くないように思います。
FE 12-24mm F4 Gの仕様
名称 | FE 12-24mm F4 G |
型番 | SEL1224G |
マウント | Eマウント |
対応撮像画面サイズ | 35mmフルサイズ |
焦点距離イメージ | 12-24 |
レンズ構成 | 13群17枚 |
画角 | 122°-84° |
開放絞り(F値) | 4.0 |
最小絞り(F値) | 22 |
絞り羽根(枚) | 7 |
絞り形状 | 円形絞り |
最短撮影距離 | 0.28m |
最大撮影倍率 | 0.14倍 |
フィルター径 | 装着不可 |
手ぶれ補正 | なし(機種によりボディ側で対応) |
外形寸法(最大径×全長) | 87×117.4mm |
質量 | 約565g |
■FE 16-35mm F2.8 GMとFE 12-24mm F4 G、どちらを選ぶべき?
悩ましいFE 16-35mm F2.8 GMとFE 12-24mm F4 G
FE 16-35mm F2.8 GMとFE 12-24mm F4 Gのどちらを買うべきかは非常に難しい問題です。FE 16-35mm F2.8 GMの方が圧倒的に高画質といったことではなく、また画角が異なるために、「お金があればFE 16-35mm F2.8 GMにしとけば間違いない」といった単純な結論は出せないように思います。
FE 16-35mm F2.8 GMの魅力
- 開放F2.8の明るさ(FE 12-24mm F4 GはF4.0)
- 11枚羽根絞りの贅沢な作り(FE 12-24mm F4 Gは7枚羽根絞り)
- レンズフィルターが使える(FE 12-24mm F4 Gは使えない)
- 超高度非球面XAレンズ2枚、非球面レンズ3枚を使った贅沢なレンズ構成(FE 12-24mm F4 Gは非球面レンズ4枚)
- レンズ前面には汚れを落としやすいフッ素コーティングを採用(FE 12-24mm F4 Gはフッ素コーティングなし)
FE 12-24mm F4 Gの魅力
- 12-24mmというフルサイズEマウントレンズで最も広い画角
- このクラスとして非常に軽量な565g(FE 16-35mm F2.8 GMは680g)
- 希望小売価格は税別22万円でFE 16-35mm F2.8 GMよりもリーズナブル(FE 16-35mm F2.8 GMは希望小売価格は税別29万5,000円)
比較してみたところ、やはりFE 12-24mm F4 Gの12-15mm域に魅力を感じるならFE 12-24mm F4 G、そうでなければ贅を尽くした作りとなっているFE 16-35mm F2.8 GMということになりそうですが、広角側の12mmと16mmでは画角は結構違いますから、やはり悩ましい問題です。
個人的には超広角は画角重視でFE 12-24mm F4 Gが欲しいと思いますが、12-15mm域を特別必要としない方であれば、希望小売価格の7万5千円の差を出してでも、より高品質な作りのFE 16-35mm F2.8 GMがオススメと言えるでしょう。
画像:SONY UK
Reported by 正隆