ニコンからミラーレスZマウントのフラッグシップ機、Z 9の開発が発表されました。2021年内の発売を目指しているとのこと。
ニコンの持てる最先端技術を結集させ、静止画・動画ともに過去最高の性能を発揮することを目指し幅広いジャンルで活躍するプロフェッショナルの高いニーズに応えるべく、鋭意開発を行っているとのこと。
新開発のフルサイズ積層型CMOSセンサーと新型画像処理エンジンを搭載するとのことで、特に開発費のかかるところに新技術を盛り込んできた様子です。
またこれまで一眼動画を最初に作った割には定着しなかったニコンの動画機能に関しても、8K動画に対応するとのことです。
CP+2021でもニコンのセミナーはかなり動画関連のアピールに力を入れていたことからも分かるように、Z 9で動画でもキヤノン、ソニー、パナソニックと張り合えるという新しいニコンのイメージを作っていくための一里塚としたい様子です。
ニコンによるとZ 9は、道具としての使い心地を極め、これまでの一眼レフカメラ、ミラーレスカメラを超える新しい映像体験を提供したいとのこと。
目次
- Z 9のデザインの良いところ、残念なところ
- 右側シャッターボタン周り
- ファインダー部分
- 左側ダイヤル部分
- 縦位置グリップ部分
- やっぱりいいわ、ニコン
そこで今回は、発表された(まだ開発段階ですが)フロントの画像を見たZ 9の印象をお話ししたいと思います。
■Z 9のデザインの良いところ、残念なところ
右側シャッターボタン周り
良いところ
シャッターボタン周りは一眼レフのフラッグシップ機を踏襲したデザインで、D6とボタンやダイヤルの配置は大きくは変わりませんが、その分従来のニコンユーザーにも馴染みやすいデザインになっていると思います。
Z 9シャッターボタン周り
D6シャッターボタン周り
また、
- 露出補正ボタン
- 感度設定ボタン
- 動画撮影ボタン
この3つの並びはD6と比較してZ 9はフラットな横並びに近くなっていますが、Z 9では動画撮影ボタンが大きくなっており、動画撮影をより重視していることがここからも伺えます。
また同時に、露出補正ボタンや感度設定ボタンと間違わないように、動画撮影ボタンは明確に高さを変えています。露出補正ボタンと感度設定ボタンも実は微妙に形状を変えてあるあたり繊細な気配りだと思います。
シャッターボタンはD6がやや斜めに配置されていたことから、それに合わせてフロントのダイヤルも斜めになっていました。
ニコンのフロントダイヤルはシャッターボタンの下側にあるため、「シャッターボタンに人差し指をおいたまま、中指でダイヤルを回せる」というメリットがあるわけですが、Z 9ではシャッターボタンを水平に近い形に配置しているため、フロントダイヤルもそれに合わせて水平に近い配置にしたようです。
このあたりのこだわりは実にニコンらしい特徴と言えるでしょう。
Z 7IIシャッターボタン周り
また上面の液晶パネルもZ 7 IIなどより大きくなっているように見えますし、ダイヤルもZ 7 IIよりも滑りにくく指あたりの柔らかいゴムとなっているようです。
クラスが違うので直接比較するのはどうかとも思いますが、Z 9やD6はシャッターボタンがカメラバック内や体に当たって勝手にシャッターが切れないように低めに作られているのに対し、Z 7 IIは押しやすさを重視して電源レバーよりも出っ張らせています。
Z 9シャッターボタン周り
このあたりはハイアマチュアやプロでも比較的落ち着いた環境で撮影する被写体を想定しているZ 7 IIと、スポーツフォトグラファーや報道カメラマンなど動き回る撮影環境を想定しているZ 9の違いが見て取れます。
残念なところ
残念なところは特にないのですが敢えて言うなら、予想の範疇というか、特別新しい工夫は感じられないように思います。D6から動画機能を重視したこととブラッシュアップなのでしょう。
上面の画像が出てくればまた新しい発見があると思います。
ファインダー部分
良いところ
Z 9のファインダー部分(ペンタプリズムが入っているわけではないのでペンタ部と呼んで良いのかわかりませんが)に関しては、近年の一眼レフ時代のフラッグシップ機と比較すると、肩のラインに合わせて他のZシリーズ同様、直線基調になったようです。
Z 9のファインダーのファインダー部は正面から見るよりも斜めや横から見た方が綺麗に見えるのではないかと思います。
残念なところ
残念というより少し気になったのは、Z 9のファインダー部は特に強く出っ張っているわけではないのですが少し前に出ており、Zマウントの大きなマウント径を考えると、FマウントのD6のペンタ部の張り出し位置などと比較すると、マウント上部とファインダーとのスペースが小さくなっている点です。
今後PCニッコール(アオリレンズ)が発売された際、ライズ操作の時にファインダー部分の出っ張りと干渉しないか気になったのですが、そのあたりはニコンも考えて作っているでしょうしそもそもZマウントは口径が大きいので杞憂だろうと思います。
左側ダイヤル部分
良いところ
この位置のシンクロ接点や10ピンターミナルは他社よりも使いやすいので良いと思いますが、レンズと干渉しないようにするためか、斜め横にレンズから逃げるような向きに配置されています。
残念なところ
先ほどのシンクロ接点と10ピンターミナルの向きが少しデザイン的に気になるのと、いい加減フイルムクランクを想起させる左肩の高いダイヤルはやめても良いのではないかと思います。
Zシリーズで軍幹部が直線になったことで余計に目立ちますし、この形状である必要性を感じません。このスペースに単純に機能ボタンを配置した方が良いと思いますし、ダイヤルロックの形状も進化が見られないのは少し残念な部分です。
縦位置グリップ部分
良いところ
もうこれは一体型にしたことだけでも正しい判断をしたと言えるでしょう。
分離型カメラにバッテリーグリップを後付けしても、
- 剛性感
- 背面のボタンやダイヤルの配置
- 縦位置横位置の重量バランス
などの点で一体型と同じ操作感は得られません。そのため最初から一体型にすることがとても重要です。
一体型はドローンやジンバルに搭載するのには不利ですが、そういう用途で使うなら、それに適した作りのカメラ(例えばソニーのFX3のようなモデル)を別途作るべきです。
バッテリーグリップ分離型はスポーツや報道用のプロ機でやることではありませんし、そもそも「ミラーレスの価値=小型」という考えはあまりにも古いでしょう。
カメラの「軽い」は大体の場合メリットの方が多いのですが、「小さい」はデメリットになることもあるので、ユーザー層や被写体に応じて「適切なサイズに」作らなければなりません。
見た感じZ 9は十分なグリップと操作部のスペースを確保しつつ、D6のような一眼レフフラッグシップよりも小型化されているように見えます。
Z 9を一体型にしてきたのは、長年スポーツや報道の分野で活躍してきたニコンであれば当然の結論だったのだのでしょう。そして恐らくは同時期に発売されるであろうEOS-R1も同様に一体型を採用してくると思います。
残念なところ
Z 9に対して残念というのとは違いますが、縦グリップ一体型の大きなメリットの一つは背面の操作系レイアウトの自由度ですから、ぜひ背面の画像を見たかったところです。勿論上面もですが。
やっぱりいいわ、ニコン
私が最近静止画撮影で一番使っているのはEOS R5でニコン機の出番は多くはないのですが、Z 9を見るとフロント画像からだけでも「やっぱりニコンとキヤノンは抜きん出てプロの使い方を理解してくれているメーカーなんだな」と嬉しくなります。
懐かしいキムタクのCM風に言えば「やっぱりいいわ、ニコン」というわけです。
画像:DPREVIEW
Reported by 正隆