CIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)は定期的にデジタルカメラの生産・出荷台数を発表しています。というわけで今回は、昨年一年間2016年1〜12月のデータを元に、一眼レフやミラーレス、また国内外のカメラ出荷台数を見ていきましょう。
果たしてデジタルカメラの販売実績はどう変化しているのか?そして一眼レフとミラーレスはどちらが現在の主流なのか?
■生産出荷実績から見るカメラ業界の潮流
- 出荷台数:24,189,870台(前年比68.3%)
- 出荷金額:710,274,993円(前年比80.2%)
出荷台数は31.7%減と相変わらず年々大幅に落ち込んでおり、数年前は2016年頃には下げ止まるのではないかという予想もありましたが、実際には2017年現在でも出荷台数の減少は止まらず、カメラ業界が非常に厳しい状況であることが見て取れます。
出荷金額は前年と比較して19.8%減と出荷台数ほどは落ち込んでおらず、減少しているものの中心が低価格帯のコンパクトデジタルカメラであることが見て取れます。
- 国内出荷台数:3,520,377台(前年比71.9%)
- 海外出荷台数:20,669,493台(前年比67.8%)
また国内よりも海外での需要が落ち込んでおり、デジタルカメラ離れは日本国内だけの問題でなく、海外でも急速に広がっていることがわかります。
実はデジタルカメラの出荷台数は2010年をピークにして2011年以降毎年減少していますが、
- 2011年:95.1%(4.9%減少)
- 2012年:85.0%(15.0%減少)
- 2013年:64.0%(36.0%減少)
- 2014年:69.1%(30.9%減少)
- 2015年:81.5%(18.5%減少)
- 2016年:68.3%(31.7%減少)
となっており、デジタルカメラの出荷台数の減少は減速せず、毎年30%近い猛烈な勢いで進んでいることがわかります。
コンパクトデジタルカメラの市場動向
コンパクトデジタルカメラの市場動向は、
- 全体出荷台数:12,582,092台(前年比56.3%)
- 国内出荷台数:2,237,134台(前年比68.4%)
- 海外出荷台数:10,344,958台(前年比54.2%)
となっています。デジタルカメラの不振はコンパクトデジタルカメラでより顕著で、国内外で毎年半減近い猛烈な勢いで出荷台数を減少させており、厳しい現実が見て取れます。
レンズ交換式カメラの市場動向
レンズ交換式カメラ(一眼レフ・ミラーレス)全体の市場動向ですが、
- 全体出荷台数:11,607,778台(前年比88.9%)
- 国内出荷台数:1,283,243台(前年比78.8%)
- 海外出荷台数:10,324,535台(前年比90.4%)
- 欧州向け:3,136,101台(前年比89.7%)
- 米州向け:2,841,081台(前年比90.5%)
- アジア向け:4,128,011台(前年比91.1%)
- その他地域向け:219,342台(前年比86.1%)
となっており、レンズ交換式カメラもコンパクトデジタルカメラほどではないものの、世界中で出荷台数の減少が見られます。
また世界的に見てもあらゆる地域で出荷台数は減少しており、ヨーロッパ・アメリカ・アジアなど出荷台数を増やしている地域は無いという状況です。特に国内の需要は海外よりも落ち込みが激しく、2割以上減少しています。
■レンズ交換式カメラの主流は一眼レフなのかミラーレスなのか
一眼レフとノンレフレックス(ミラーレス)の市場動向
一眼レフとミラーレスカメラの内訳ですが、
- 一眼レフ:8,449,043台(前年比87.0%)
- 日本向け:806,422台(前年比82.4%)
- 欧州向け:2,422,041台(前年比87.8%)
- 米州向け:2,401,676台(前年比92.1%)
- アジア向け:2,694,088台(前年比83.9%)
- その他地域向け:124,816台(前年比79.9%)
- ミラーレス:3,158,735台(前年比94.4%)
- 日本向け:476,821台(前年比73.4%)
- 欧州向け:714,060台(前年比96.5%)
- 米州向け:439,405台(前年比82.3%)
- アジア向け:1,433,923台(前年比108.3%)
- その他地域向け:94,526台(前年比96.0%)
となっており、一眼レフ・ミラーレスともに減少傾向ではあるもの、唯一アジア(主に中国)のミラーレスだけが前年比で+8.3%の伸びを示しています。
レンズ交換式カメラの主流は今なお一眼レフ、しかし差は縮まりつつある?
レンズ交換式カメラの世界全体での出荷構成比は、
- 一眼レフが約72.8%
- ミラーレスが約27.2%
となっています。一眼レフとミラーレスの間には、
- 出荷台数ベースで約2.68倍の差
- 出荷金額ベースで約2.65倍の差
があります。
このデータから、国内・国外問わずレンズ交換式カメラの主流は現在でも一眼レフであり、ミラーレスとはまだかなりの差があることが窺い知れます。
しかし一眼レフは前年比87.0%、ミラーレスは前年比94.4%であるため、その差は少しずつ縮まっているとも言えるでしょう。
カメラ業界の本当の課題
将来的に一眼レフとミラーレスのどちらが主流になるかは不明ですが、一眼レフもミラーレスも出荷台数が減少していることを考えると、「一眼レフか?ミラーレスか?」よりも、ユーザーがデジタルカメラそのものから離れてしまっているということの方が大きな問題でしょう。
そうした現状を鑑みると、現在のカメラ業界に本当に求められているのは一眼レフでもミラーレスでもなく、「スマートフォンのさらに先をいく全く新しいカメラ」なのかも知れません。
カメラの主流がフィルムからデジタルへと移行した時のようなイノベーションをカメラ業界は再び起こせるのか?そこにカメラ業界の未来への鍵があるのでしょう。
■CIPA統計参加メーカーリスト
デジタルスチルカメラ統計 | カメラ用交換レンズ統計 | ||
NO | 会員名 | NO | 会員名 |
1 | オリンパス株式会社 | 1 | オリンパス株式会社 |
2 | カシオ計算機株式会社 | 2 | カールツァイス株式会社 |
3 | キヤノン株式会社 | 3 | キヤノン株式会社 |
4 | 株式会社ザクティ | 4 | 株式会社ケンコー・トキナー |
5 | 株式会社シグマ | 5 | 株式会社コシナ |
6 | ソニー株式会社 | 6 | 株式会社シグマ |
7 | 株式会社ニコン | 7 | ソニー株式会社 |
8 | パナソニック株式会社 | 8 | 株式会社タムロン |
9 | 富士フイルム株式会社 | 9 | 株式会社ニコン |
10 | 株式会社リコー | 10 | パナソニック株式会社 |
11 | 富士フイルム株式会社 | ||
12 | 株式会社リコー |
CIPAの生産出荷実績には国内の主要なカメラ&レンズメーカーが全て参加しています。
Reported by 正隆